第3話 転校生はチャイナ娘!!


○教室○


 クラスメイトたちの視線を釘付けにしている少女を見つめながら、大きなアクビをしてみせた少女が一人。

 実は今日、中国からの留学生がやってきたのである。細い眉に大きな瞳、場違いなチャイナ服を着ているせいか、

 スタイル抜群に見える。黒髪をお団子頭は日本人の固定概念と完全に一致し、日本語もペラペラなので、

 クラスメイトたちは必要以上の興味を示していた。

 ただ一人を除いては・・・・・・

シルビア「葉沙、留学生さんのこと、気にならんの?」

 もちそんそれは自分のことだけを考え、他人のことなどおかまいなし。他人=空気という基本概念を持つ少女こと葉沙である。

葉沙「ん・・・全然。それよりも最近カード買ったら〈非常食〉が手に入ってさ。いいコンボ思いついたから試そうかなって思ってるんだけど、どのカードを抜こうか悩んじゃって」

シルビア「葉沙はデュエル一筋どすなぁ」

葉沙「当ったり前よ。二代目デュエルキングになるのは、この私なんだから」

零蘭「ならこのワタシ・・・零蘭とデュエルするヨロシ」

 突然の乱入に驚く葉沙。振り向くとそこにいたのは転校生の少女であった。

葉沙「いきなり話しかけるのはやめれ! 心臓に悪い」

 葉沙の一言に苦笑いする零蘭。しかし、葉沙がデュエルの申し出を断るはずはなく、咳払いしたあとで、

葉沙「まあデュエルの挑戦は受けて立つから安心して。でも、私・・・強いわよ」

 自信ありげに胸を張る葉沙。だが零蘭も負けてはいない。余裕の笑みを浮かべながら、

零蘭「ワタシも母国では強かたヨ。日本のデュエリストがどれほどレベル高いのか興味あたアル」

 これほど短い会話から成立してしまったデュエル。これにより放課後まで葉沙の思考はデッキにそそがれることになってしまった。

 授業中にブツブツと独り言を言い続けて教師に叱られ、昼放課にはクラスの男子生徒をパシリにしてまでカードと睨めっこ

 午後の音楽の授業では『カントリーロード』を歌わなければいけないにもかかわらず『デュエルモンスターズ幕末伝』のOPテーマを歌っていたりと、好き勝手に振舞いながら放課後を迎えてしまった。

 これで単位を取れなくても文句は言えないだろう。


○校舎裏の空き地○


 周りはギャラリーで賑っている。取り囲まれるような形でギャラリーの中心にいる人物はもちろん葉沙。

 シルビアは校門で待っていた明日香と合流して、今は葉沙の隣で応援団のモノマネをしていたり、いなかったり。

 一方、零蘭は大胆な行動に出ていた。こともあろうに自分のデュエルで賭博を主催しているのだ。

 ギャラリーにどちらが勝つか予想させて掛け金を払わせる。その手際の良さといったら、ただの中学生にはとても見えない。

 その光景を眺めていた葉沙がとうとう痺れを切らし、

葉沙「まだ?」

零蘭「ちょうど終わたヨ」

 準備も終了したらしく、零蘭は高らかに手を上げて宣言する。

零蘭「それじゃこれから賭けデュエルの開催するアル。勝ったほうに賭けてる人はお金を貰えるシステムアルヨ。配当金はプラカードに書かれている通りだから、よろしくネ」

 零蘭の後ろに立てかけられたプラカードの配当金は零蘭が1.2倍、葉沙が1.8倍である。

 どうやら零蘭は自分の強さによほどの自信があるらしい。配当金の倍率を見れば一目瞭然である。

 だが、今日の葉沙はそれを見ても怒る気配がない。いつもならば、見下されていることに腹を立てて、イチャモンをつけるのだが・・・・・・まさか弱気?

葉沙「シルビア、ちゃんと私に賭けた?」

シルビア「賭けましたどすえ。ちゃんと20口ほど」

明日香「ボクも葉沙姉に賭けたよ」

葉沙「よしよし。これで荒稼ぎができるわ。今月のお小遣い使い切っちゃったから苦しかったんだよね。まあ相手がバカでよかったわ。あっはっはっは!!」

 弱気どころかメッチャ強気である。さすがは葉沙。自信だけは誰にも負けない少女だ。

零蘭「いくアルよ?」

葉沙「かかってきなさい。私の強さを教えてあげる」

葉沙&零蘭「デュエル!」

1ターン目

零蘭「零蘭ワタシが先攻をいただくネ。ドロー・・・ワタシは魔法カード〈策士の妙案〉を発動アル」

策士の妙案通常魔法
相手の手札をすべて見て、魔法または罠を2枚まで選び相手フィールド上にセットする。

零蘭「早く手札を公開するアルヨ」

葉沙「うぐぐ・・・激しくムカつく・・・ムカついてしょうがない!!」

 相手の態度に腹を立てる葉沙。シルビアがなだめようとしたものの、すでに耳には届いていないようだ。

 これでは・・・の術中にはまったも同然である。

スィンセリティ・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1200 / DEF 1200
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「スィンセリティ・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

誠実な呼びかけ通常魔法
「スィンセリティ・ガール」と名の付いたカードがフィールド上にある時のみ発動可能。「プレズント・ガールLV3」を1体と「サイレンス・ガールLV3」1体を選択してデッキから特殊召喚する。

死者蘇生通常魔法
自分または相手の墓地からモンスターを1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

魂の解放通常魔法
お互いの墓地から合計5枚までのカードを選択し、そのカードをゲームから除外する。

ライトニング・ボルテックス通常魔法
手札を1枚捨てる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

零蘭「〈誠実な呼びかけ〉と〈死者蘇生〉を選択するアル」

 葉沙は嫌な顔をしながら、渋々カードを伏せた。

葉沙(伏せさせるってことは〈大嵐〉とかの破壊カードが手札にあることになるんだろうけど・・・違う気がする)

 葉沙は零蘭の行動に違和感を覚えた。 通常、魔法カードを伏せさせても自分のターンになれば使用することができる。

 手札を減らすことを目的とするならば、破壊カードを使っての破壊よりも直接捨てさせたほうが楽なのである。

零蘭「〈グリズリーマザー〉を攻撃表示で召喚して、リバースカードを2枚セット。ターン終了アル」

グリズリーマザー獣戦士族☆☆☆☆
ATK 1400 / DEF 1000
このカードが戦闘で墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下の水属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。

2ターン目

葉沙「私のターン、ドローよ」

葉沙(相手のモンスターは1体、〈スィンセリティ・ガールLV3〉と〈誠実な呼びかけ〉のコンボを使えば、決着をつけられる)

葉沙「私は〈スィンセリティ・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚! さらにリバースカードオープン、〈誠実な呼びかけ〉!!」

零蘭「そのモンスターの召喚にチェーンをかけるネ。こちらもリバースカードをオープン! 〈心鎮壷〉アル」

心鎮壷永続罠
フィールド上にセットされた魔法・罠カードを2枚選択して発動する。このカードがフィールド上に存在する限り、選択された魔法・罠カードは発動できない。

葉沙「なっ!」

零蘭「これで伏せられてるカードは使用不能になたアルネ」

 思わず舌打ちする葉沙。後ろで見守っているシルビアと明日香も驚きを隠せないようだ。

明日香「これじゃただのブラフと同じだよ。葉沙姉の手札もバレバレだし」

シルビア「それだけやありません。伏せれるカードの枚数が減少したことで葉沙の立てれる戦術が減ることになります。葉沙は魔法・罠カードに頼る傾向があるんどす。あと1回でも同じコンボを成立されると大変なことになりますえ」

葉沙(それに〈スィンセリティ・ガールLV3〉の攻撃力じゃ〈グリズリーマザー〉を倒すことができない。〈ライトニング・ボルテックス〉を使えば破壊できるけど、零蘭もそれを知ってるはず。対策を立てていないはずないけど、今しかけないと流れが零蘭のものになっちゃうし・・・・・・クッソー)

葉沙「私は手札から魔法カード〈ライトニング・ボルテックス〉を発動! 手札を1枚捨てて相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する」

手札1枚(手札) → 墓地

グリズリーマザー(フィールド) → 墓地

明日香「これで〈グリズリーマザー〉の効果は発動されない。さすが葉沙姉」

葉沙「これで攻撃できるわ。〈スィンセリティ・ガールLV3〉でプレイヤーにダイレクトアタックよ! スィンセリティ・フィーリング!!」

零蘭 LP 4000 → 2800

零蘭「アイヤ! まさかワタシが先にダメージを受けるなんて驚きアル!」

 わざとらしいリアクションをする・・・に思わず葉沙が、

葉沙「あんたのターンよ。さっさとしなさい!!」

零蘭「分かてるアルヨ。そう急かさないでほしいネ」

3ターン目

葉沙LP 4000手札:1枚
リバースカード・2枚(忠実な呼びかけと死者蘇生)
スィンセリティ・ガールLV3〈攻撃表示〉
なし
心鎮壷〈表側〉、伏せ2枚
零蘭LP 2800手札:2枚

零蘭「ワタシのターンアル。カードを1枚伏せて魔法カード発動アルヨ!」

天空からの宝札通常魔法
自分フィールド上モンスターをすべて除外する。互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローする。

零蘭「手札が6枚になるまでドローするヨロシ」

 葉沙は5枚、零蘭は5枚、デッキからカードを引く。

零蘭「リバースオープン。〈テラ・フォーミング〉ネ。このカードはデッキからフィールドカード1枚を手札に加えることができるアル。このカードの効果で選択するのは〈伝説の都 アトランティス〉アルヨ」

テラ・フォーミング通常魔法
自分のデッキからフィールド魔法カードを1枚手札に加える。

伝説の都−アトランティスフィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。手札とフィールド上の水属性モンスターはレベルが1つ少なくなる。フィールド上の水属性モンスターは攻撃力と守備力が200ポイントアップする。

零蘭「まだ終わらないアルヨ。墓地から〈グリズリーマザー〉を除外して〈水の精霊アクエリア〉を特殊召喚するネ」

水の精霊アクエリア水族☆☆☆
ATK 1600 / DEF 1200
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の水属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。相手スタンバイフェイズ毎に相手の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する事ができる。そのモンスターはこのターン表示形式を変更できない。

葉沙「たかだか攻撃力1600のモンスターを召喚した程度で、この私を倒すって言いたいの?」

零蘭「まだ準備してるだけネ。ワタシ、デュエルの時だけは優しくないアルから注意が必要ネ」

明日香「って今頃言っても遅いんじゃないのかな?」

 さりげない明日香のツッコミに反応したのは葉沙だった。どうやら不機嫌らしく、目線が厳しくなっている。

葉沙「黙って見てなさい!!」

明日香「葉沙姉が怒った!! シルビア姉、助けてよ〜」

 明日香はシルビアの制服を掴みながら後ろに隠れた。

 らしくない葉沙の表情にシルビアも不安のようだ。

シルビア「よしよし、もう大丈夫どすえ。葉沙もまだ追い込まれたわけやないんどすから、明日香ちゃんにあたるんはいけません」

葉沙「・・・・・・分かってるわよ。そんなことくらい」

 葉沙は苛立っていた。逆転勝利が大好きな葉沙なのだが、相手に見下されることを極端に嫌う。

 ペースを乱されっぱなしの状態に我慢が限界を通り越したのだ。

零蘭「子供にやつあたりなんてみっともないアル。やはり日本のデュエリストのレベルは低いアルナ」

葉沙「もういっぺん言ってみなさい。ボコボコにしてや――」

シルビア「いいかげんにしなさい!! 冷静さを欠いたままで勝てるほどデュエルは甘くありませんえ」

 ケンカのような勢いの葉沙の声を掻き消すほどの大声でシルビアが葉沙を怒鳴った。

 辺りが静まり返り、葉沙も口を開けたまま言葉も出ない様子である。

シルビア「葉沙はいつでも余裕を見せて勝ちにいっておくれやす。うちはそういう葉沙が好きなんどすから」

 シルビアの一言で止まっていた葉沙がうつむきながら震えだした。

 泣いているようにも見えるのだが、だんだん震えが大きくなっていく。そう、彼女が簡単に泣くはずがない。

葉沙「アッハハハハハ! こりゃ参ったね。まさかシルビアに怒られるなんて想像もしてなかった。でも・・・・・・助かったかな。ごめんね、明日香」

 苦笑いする葉沙。どうやら調子を取り戻したようだ。一方、・・・零蘭は面白くなさそうに顔をしかめている。

零蘭「今頃冷静になっても遅いアルネ。ワタシは魔法カード〈伝説の都 アトランティス〉を発動するアル。さらに〈水の精霊アクエリア〉を生贄に捧げて〈海竜−ダイダロス〉を攻撃表示で召喚するアルヨ」

海竜−ダイダロス海竜族☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2600 / DEF 1500
自分フィールド上に存在する「海」を墓地に送る事で、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。

葉沙「ちょっと待ってよ。〈海竜―ダイダロス〉は生贄が2体必要なモンスターでしょ? 召喚できるはずないじゃない!?」

零蘭「ちゃんとフィールド魔法の勉強もしておいたほうがいいアルヨ。〈伝説の都 アトランティス〉の効果は水属性モンスターのレベルを一つ下げる効果がアルネ。つまり、〈海竜―ダイダロス〉は生贄1体で召喚することができるアル」

シルビア「でも〈海竜―ダイダロス〉の弱点は相手の手札にまで効果の対象でないこと。わざわざ〈天よりの宝札〉を使ってまで引いた意味がないどすえ」

零蘭「確かに普通ならそう考えるアルナ。しかし、この先があるとしたらどうするアルカ?」

明日香「この先って・・・・・・まさか!」

零蘭「そのまさかアル。海竜は深海の力を得て海竜神に進化するアルヨ。〈海竜―ダイダロス〉を生贄に〈海竜神−ネオダイダロス〉を特殊召喚するアル」

海竜神−ネオダイダロス海竜族☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2900 / DEF 1600
このカードは通常召喚することが出来ない。自分フィールド上に存在する「海竜−ダイダロス」1体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。自分フィールド上に存在する「海」を墓地に送る事で、このカードを除くお互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地に送る。

 〈海竜神―ネオダイダロス〉は空に向かって高々と咆える。耳を押さえたくなるほどの音量のそれは、

 まさしく海竜神の名に相応しいものだった。皆が息を殺したように静かになる一方、それを敵に回している葉沙は、

葉沙(〈海竜神―ネオダイダロス〉ってはじめて見るカードだからテキストが分からん。なんとなく想像はつくんだけど、どちらにしても私に倒されることに変わりないし、せいぜい悪あがきするといいわ・・・・・・アッハッハッハッ!!)

 ペースを取り戻しているせいか、いつも通りの強気である。その自信はどこから湧いてくるのか?

零蘭「海竜神をを怒らせると怖いアルヨ。各地の海で大津波を起こし、大地に住むものたちをすべて飲み込む・・・・・・逆らうが最後、あるのは無だけアル。フィールドから〈伝説の都 アトランティス〉を墓地に送ることで効果発動! 〈海竜神―ネオダイダロス〉以外のフィールドにあるすべてのカード、そして手札を破壊するアル」

葉沙「はい〜〜〜〜〜〜〜!?」

葉沙の場のカード(フィールド) → 墓地

葉沙の手札(手札) → 墓地

零蘭の場のカード(フィールド) → 墓地

零蘭の手札(手札) → 墓地

 目を白黒させながら驚いている葉沙に対して勝利確定といった自信満々の零蘭。

 フィールドには葉沙を守るカードは1枚もない。

 そして相手フィールドには攻撃力2900の〈海竜神―ネオダイダロス〉。

零蘭「がら空きのフィールドというのはいいものアルナ。安心して戦えるネ・・・・・・〈海竜神―ネオダイダロス〉でプレイヤーに直接攻撃アル!!」

葉沙 LP 4000 → 1100

 デュエルディスクに表示された自分の残り少ないライフポイントを見つめながら、葉沙の思考は勝利への可能性を否定することで精一杯だった。

葉沙(このライフポイントじゃ、次のターン耐えられない・・・モンスターカードをドローできれば耐えることはできるけど、時間稼ぎにしかならない。この不利すぎる状況を打開できるカードをドローできる可能性なんて・・・・・・違う! 私は引ける! 私のデッキは私の分身! 引けないはずがないわ!!)

 深呼吸をしたあと、そっとデッキに手を添える。一枚のカードの可能性を信じて・・・・・・

4ターン目

葉沙「私のターン・・・ドロー!!」

 息の飲む周囲の野次馬。シルビアと明日香も同様だ。

葉沙「私は手札から魔法カード〈強欲な壺〉を発動!! カードを2枚ドローするわ」

強欲な壺通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 さらにドローしたカードを見つめながら、葉沙は当然といった様子で笑った。零蘭は少し動揺した様子で、

零蘭「なにを引いたのか知らないアルけど、この〈海竜神―ネオダイダロス〉を倒せるカードを引けるわけないネ」

葉沙「だったら後悔させてやるわ! この私にケンカを売ったことをね。私は〈サイレンス・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚!」

サイレンス・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1400 / DEF 1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。相手フィールド上の表側表示魔法カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

葉沙「さらに魔法カード〈レベルアップ!〉を発動よ!!」

レベルアップ!通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

葉沙「この効果で手札から〈サイレンス・ガールLV5〉を特殊召喚するわ!!」

サイレンス・ガールLV5魔法使い族☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

葉沙「〈サイレンス・ガールLV5〉の特殊効果を発動! ディスティニー・ディクレアス!!」

明日香「なになに? あのすっごい美人なモンスターの効果って一体なに?」

 目を輝かせながら〈サイレンス・ガールLV5〉を見つめる明日香。シルビアは笑みを浮かべながら返事をする。

シルビア「あのモンスターの効果は、墓地にある魔法カード1枚を手札に加えるか、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する効果を選択して発動することができるんどす。葉沙がどちらを選択するかは一目瞭然やけど」

葉沙「私は墓地に眠るこのカードを手札に加えるわ」

沈黙の幻影通常魔法
「サイレンス・ガール」と名の付いたモンスターカード1体を選択して発動する。このターン、選択したモンスター1体は相手プレイヤーに直接攻撃することができる。

零蘭「そのカードは・・・まさか!?」

 うろたえる零蘭。だが、葉沙の勢いは止まらない。

葉沙「魔法カード〈沈黙の幻影〉を発動! この効果で〈サイレンス・ガールLV5〉を選択してダイレクトアタックするわ。さっき、あんたの言ったセリフをそっくり返してやるわ。ああ、フィールド上に木偶の坊だけしかいなくて助かった。これで安心して攻撃できるネ」

 零蘭のモノマネをしてみせる葉沙。本人である零蘭としては不愉快極まりない光景だ。

零蘭「アイヤ!! ひどいアルヨ」

葉沙「問答無用! 〈サイレンス・ガールLV5〉のダイレクトアタック! いっけ〜サイレントマジック!!」

零蘭 LP 2800 → 300

零蘭「けどワタシのライフはまだ残てるアル。次のターンで再び逆転アルナ」

 確かにその通りである。〈海竜神―ネオダイダロス〉の攻撃力は2900、一方〈サイレンス・ガールLV5〉の攻撃力は2500。

 手札も伏せカードもない葉沙に次のターンを耐えるだけの力はない。

零蘭「次のターンでワタシの勝利はほぼ確定ネ。なかなか強かたけど、やぱりワタシの実力のほうが上だたアル」

 その一言にシルビアや明日香の顔色が曇る。だが、葉沙は悠然とした態度で仁王立ちしていた。

 そこに不安や恐怖などの感情はなく、勝ったあとの爽快感すら感じられる。それを不快に思った零蘭は、

零蘭「なにアルか、その顔は? まるで自分がデュエルに勝たような表情アルネ」

葉沙「あっ・・・わかった? やっぱ私って強いからさ」

零蘭「この状況でよく言えるアルナ」

葉沙「だったら試してみる? きっと後悔すると思うけど」

零蘭「やれるものなら、やてみろアルヨ」

葉沙「んじゃ、お言葉に甘えて・・・・・・ターン終了」

シルビア&明日香&零蘭「は?」

 葉沙の口から出たその言葉は周囲の人間を驚かせるのに十分だった。

 あれほどの勝利宣言をしておきながら、次のセリフがターン終了なのである。

零蘭「バカにするのも、いいかげんにするヨロシ」

葉沙「だったら自分のライフポイントを、そのクリクリした瞳でガンつけてみたら?」

零蘭「ライフポイントはまだ300・・・・・・0?」

零蘭 LP 300 → 0

デュエル終了!!
勝者――葉沙!!

零蘭「どうしてワタシのライフポイントが0アルか!?」

葉沙「モンスターの特殊効果よ・・・私の墓地にいる〈魂食らいの女幽霊〉のね」

魂食らいの女幽霊アンデット族☆☆☆
ATK 300 / DEF 300
このカードが墓地に存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に相手ライフに300ポイントのダメージを与える。

零蘭「そんなバカなアル!!」

葉沙「はい、私の勝ち・・・私にケンカ売ったことを100年後悔してなさい」

 こうして葉沙は見事、お小遣いアップ計画を成功させたのである。

 零蘭はと言うと葉沙とのデュエル敗戦以来、毎日のようにデュエルを申し込むようになった。

 さすがの葉沙もこればかりは参ったらしい。零蘭から逃げる毎日が続くようになる。その光景を見ているシルビアが、

シルビア「うらやましいどすなぁ。葉沙とあんなに仲よう振舞えて・・・」

 と嘆きの一言を漏らした。



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