第5話 大会参加は強引に!


○屋上○


 夏の太陽の日差しはサンサンと地面を焼き、熱を吸収したコンクリートは上へ上へと熱を放出している。

 今はちょうど昼放課。葉沙たちは蒸し風呂状態の教室より、実は屋外のほうが風が吹いていて案外涼しいかもしれないなのではないか?

 という疑念を抱き、ならば実際に外にいけばわかると言った葉沙の意見から、わざわざ屋上まで足を運んだのだが・・・

葉沙「あっつ〜〜〜〜」

 案の定、灼熱地獄に音を上げていた。

零蘭「だからワタシは言たアルヨ。どう考えたて外のほうが暑いアルと」

 額の汗をミニタオルで拭う零蘭。確かにその通りなのだが、そう言われると反発するのが当たり前というのが葉沙である。

葉沙「うっさいわね! あんただって、私の意見に賛同したから一緒に来たんでしょ。だったら文句言うな!」

零蘭「なに言うカ! 猛反対したネ」

 真夏の暑さに冷静さを欠いたのか、口喧嘩を始めてしまう始末。一方、それを楽しそうに眺めているのはシルビア。

 彼女もこの直射日光を浴びているにもかかわらず、平然と弁当のオカズを口に運んでいる。

シルビア「二人とも速う食べへんと時間なくなりますえ」

葉沙「だって暑いんだもん。食欲なんて空の彼方に失せちゃうわよ」

零蘭「それだけは賛成アル。せめて日陰のあるところで食事するべきだたネ」

 互いの意見に納得した様子で頷く葉沙と零蘭。

 その光景を見たシルビアは口元を押さえながらコロコロと笑う。

葉沙「なんで笑ってんのよ、シルビア」

零蘭「そうアル」

 今日は妙に意見の合う葉沙と零蘭。

シルビア「この話はもう終わりにしましょ」

 分が悪いと感じたとき、シルビアはすぐに話を切り替えようとする。

 葉沙はいつも切り替えさせまいとするのだが、シルビアのほうが一本上手のようで、毎回失敗に終わっている。

 どうやら今回もそのようである。

シルビア「今度の大会やけど、今回から当日参加者の受付をなしにするんやって。葉沙は今年の公式大会で一回も優勝しとらんやろ。どないするん?」

 1年に一度だけ行われるデュエルモンスターズ世界大会。

 それに参加できるのは各国2名までとなっている。その代表を選出するのが、デュエルモンスターズ日本代表決定戦なのだが、

 その代表決定戦に出場するための大会が、いま話されている関東大会のことである。去年まで当選ではあったものの、

 当日参加も受け付けていた。葉沙もそれを頼りにしていたのだが、今回はそれがない。

 つまり、この大会に参加できなければ、世界どころか、日本代表のチャンスすらないことになってしまい、

 その第一歩の大会の参加権すら得られない現状況は危機的状況なのである。

葉沙「・・・・・・」

 沈黙する葉沙。その理由は当然・・・

葉沙「どうしよ!?」

零蘭「なにも考えてなかたアルか!」

 パニックに陥り、頭を抱えて喚く葉沙。いつもならばシルビアがここで手を打ってくれるのだが、今回はそうはいかない。

 大会の参加権はあくまで個人に送られるものであり、公式大会で勝利したという証明でもある。そればかりはどうしようもない。

 暑さも忘れて状況打開を画策する葉沙。

 だがここで、もう一つ思い浮かんだことがあった。

葉沙(なんで零蘭は落ちついてんの? あんたも大会に出るって言ってたのに・・・)

 疑問は口に出さなければ気が済まない。葉沙は思い切って、

葉沙「だいたい、あんたはどうなのよ? 日本に来て大会なんて出たことないんでしょ」

零蘭「それだたら心配いらないアルヨ。デュエルモンスターズは世界のカードゲームアル。日本の公式大会以外の大会で優勝しておけば問題ないらしいアルヨ。この前、電話で確認したアル」

 結果的にピンチなのが自分一人になってしまった。余計なことを聞いてしまったと嘆くが、

 今はそんな時ではない。

葉沙「誰か助けて〜〜〜〜〜〜!?」

 近所迷惑なほどの大声で叫ぶ葉沙にシルビアが、

シルビア「もしかしたら、なんとかなるかもしれへんけど?」

葉沙「その言葉を待ってました! それで? どうすればいいわけ?」

 いつもシルビアに助けられているせいもあり、期待の視線を送る葉沙。

シルビア「隣町で最後の大会が行われるて、知ってはる?」

葉沙「それは知ってるけど、それって明日でしょ? どう考えたって受付終了してるじゃない」

シルビア「でもなぁ、もう大会参加資格があるんやけど、大会にエントリーしとる人がおりますんえ」

葉沙「なんですって!?」

零蘭「日本のデュエリストにも骨のあるやつがいるみたいアルナ」

シルビア「その人のところにいって、明日の大会の参加権を譲ってもらえば、チャンスだけはできますえ。でも、簡単に譲ってくれるとは思えませんけど」

葉沙「弱気なこと言わないで! そんなことより放課後空いてる? 空いてたら校門前に集合」

零蘭「また強引に連れていくくせに、自己判断でいいみたいなこと言うなアル」

シルビア「葉沙は一度言うたら曲げないどすからなぁ。しょうがありませんえ」

 諦めた様子の二人に満足しながら、葉沙は次の難題に直面している自分に気がついた。

葉沙(財布の中身・・・やばかったような・・・電車代・・・いくらだろ)


○駅前○


 葉沙一行は電車に乗り、隣町まで足を運んだ。隣町とはいえ滅多に来る場所ではないため、周りの景色が珍しく感じられる。

 もちろん、授業が終わってからすぐ来たため、制服姿のままだ。

 それが珍しいのか、妙に目立っている。

葉沙「なんかすっごい視線を感じるんだけど」

シルビア「無理もあらしません。一応近所の学生いうわけやないし」

零蘭「この時間に制服姿で遠出してる学生なんてイメージ悪すぎアル」

 二人の一撃にがっくりとうなだれる葉沙。しかし、本来の目的を忘れているわけではない。気を取りなおすと、

葉沙「よし、すぐに例の人のところにいくわよ! どうせ家の場所まで調べてるんでしょ?」

シルビア「それやったら問題ありませんえ。実はここで待ち合わせの約束取りつけてありますから」

 一体いつ連絡を取ったのか?そのことで思わず絶句する零蘭。話をしたのが、今日の昼過ぎ。

 そのあと午後の授業を受け、家にも帰らずそのままこの場に来たというのに・・・・・・

 考え込む零蘭をよそに、素直に喜ぶ葉沙。この少女の辞書には謎という言葉はないのだろうか?

シルビア「待ち合わせは6時やから、そろそろ来るころや思いますえ」

 噂かどうか定かでないが、噂をすればなんとやらである。シルビアがとあることに気がついて手を振る。

 それに気がついたのか、一人の青年が近づいてきた。

 短くも長くもない黒髪にキリッとした眉。瞳の色も黒色なのだが、雰囲気のせいか青みがかっているような気がする。

 わりと華奢そうに見える身体は着やせするタイプらしく、この拳の磨り減りを見ただけで、日頃鍛えていることが容易に想像できた。

シルビア「お久しぶりどすなぁ」

大和「十一ヶ月ぶりといったところか・・・白鳳院・シルビア・ランフォード」

葉沙「って知り合いだったの!?」

シルビア「そうどすけど、それがどうしたん?」

葉沙「それならそうと早く言ってくれればよかったのに・・・おかげで媚び媚びモードのイメトレまでしちゃったわよ」

零蘭「なにアルカ? そのほにゃららモードいうのは?」

葉沙「気にしなくていいの。それより話があるのよ」

大和「なんだ?」

葉沙「明日の大会・・・あんたの参加資格を譲ってほしいの」

 まるで答えはわかっています、と言わんばかりの葉沙。

 仮にも初対面の人に対するお願いの仕方ではない。いくら友達の知り合いでも、もう少し礼儀を弁えるべきである。

 大和は特に口を開くこともなく、背負っていたカバンの中からデュエルディスクを取り出すと、それを装着した。

大和「ならば実力を示して見せろ。信念すら感じられないようならば、参加資格を譲る必要などない」

 大和の対応に笑い出す葉沙。

 いちいち細々とした戦略や、回りくどいことが大嫌いな葉沙にとってこの申し出は喜ばしいことなのである。

葉沙「私・・・そういうの好きだよ。わかりやすくて最高!」

 葉沙もデュエルディスクをセットした。その行動に大和も一瞬だけ微笑んだが、すぐに厳しい表情に変わる。

 それは宣戦布告の合図。

葉沙&大和「デュエル!」

1ターン目

大和「先攻させてもらう。ドロー」

 駅前ということもあって、すぐにギャラリーが集まり始める。

大和「俺は〈神竜ラグナロク〉を召喚し、それを生贄に捧げることで〈スィール・ドラゴン〉を特殊召喚する」

神竜ラグナロクドラゴン族☆☆☆☆
ATK 1500 / DEF 1000
神の使いと言い伝えられている伝説の竜。その怒りに触れた時、世界は海に沈むと言われている。

スィール・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 2000
自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。

葉沙(1ターン目に攻撃力2300のモンスターを出すなんて・・・コイツ強い)

大和「カードを1枚伏せてターン終了だ」

2ターン目

葉沙「私のターン、ドロー」

葉沙(今の私に〈スィール・ドラゴン〉を倒せるカードはない・・・耐えるしかない)

葉沙「私は〈ホーリー・エルフ〉を守備表示で召喚、リバースカードを1枚セットしてターン終了よ」

ホーリー・エルフ魔法使い族☆☆☆☆
ATK 800 / DEF 2000
かよわいエルフだが、聖なる力で身を守りとても守備が高い。

3ターン目

葉沙LP 4000手札:4
1枚
ホーリー・エルフ〈表守備〉
スィール・ドラゴン〈表攻撃〉
1枚
大和LP 4000手札:3

大和「俺のターン、ドロー・・・魔法カード〈スタンピング・クラッシュ〉を発動! その伏せカードを破壊させてもらう」

スタンピング・クラッシュ通常魔法
自分フィールド上に表側表示のドラゴン族モンスターが存在する時のみ発動する事ができる。フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊し、そのコントローラーに500ポイントダメージを与える。

葉沙「ならこっちもリバースカードオープン。〈サイクロン〉よ」

サイクロン速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

 チェーン発動されたサイクロンが大和のフィールドを襲う。

 序盤からの激しい攻防戦にもつれ込みそうな戦況にギャラリーも盛り上がる。

 それを見ているシルビアと零蘭も真剣な表情になっている。

零蘭「〈サイクロン〉のチェーンはよかたアルナ。相手の〈スタンピング・クラッシュ〉を不発にしただけじゃなく、リバースカードも破壊できたアル」

シルビア「せやけど、これで葉沙のフィールドは〈ホーリー・エルフ〉だけどす。〈スィール・ドラゴン〉の攻撃力は2300、攻撃に耐えられません」

零蘭「そうアルナ。さらにモンスターを召喚されたら、不利になてしまうアル」

 後ろで真剣に悩んでいる二人を他所に現状況に置かれている立場の葉沙は、興奮を抑えるので必死だった。

葉沙(これで私の場はフリーってことか・・・いいタイミングで〈スタンピング・クラッシュ〉を使われちゃったなぁ・・・でも、こんなドキドキするデュエルは久々かも)

大和「技量は認めてよう。だが、その程度の力に意味はない!」

葉沙「口だけなら誰でも言えるわよ」

大和「そう考えるか。ならば俺も実力でそれを示す! 俺は〈切り込み隊長〉を攻撃表示で召喚!!」

切り込み隊長戦士族☆☆☆
ATK 1200 / DEF 400
このカードが表側表示で存在する限り、相手は他の表側表示の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する事ができる。

大和「〈切り込み隊長〉の特殊効果を発動させ、〈レアメタル・ドラゴン〉を特殊召喚する」

レアメタル・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆
ATK 2400 / DEF 1200
このカードは通常召喚できない。

葉沙「レベル4で攻撃力2400ですって!!」

 強力モンスターの登場で驚きを隠せない葉沙。

シルビア「下級モンスターの中でナンバー2の攻撃力を誇るドラゴン。さすがどすな」

大和「〈切り込み隊長〉を生贄に捧げ、2体目の〈スィール・ドラゴン〉を特殊召喚する」

零蘭「やばいアル! このままだと敗北するアルヨ」

 零蘭の言う通りである。大和のフィールドには攻撃力2300の〈スィール・ドラゴン〉が2体に攻撃力2400の〈レアメタル・ドラゴン〉。

 一方、葉沙のフィールドには守備力2000の〈ホーリー・エルフ〉だけ。

 リバースカードもないこの状況はどう考えたって負けである。

大和「悪いがこれで終わりだ。〈スィール・ドラゴン〉、その壁モンスターを破壊しろ! スィールショット!!」

〈スィール・ドラゴン〉ATK 2300 VS 〈ホーリー・エルフ〉DEF 2000
撃破!

 〈ホーリー・エルフ〉が破壊され、フィールドがガラ空きになった。

 ここからはプレイヤーへの直接攻撃が葉沙を襲う。

大和「ドラゴンたちよ。敵をなぎ払え!」

 2体のドラゴンのブレスが葉沙を包み込み、爆発した。轟音が辺りに響く。

 立ち込める煙はすぐになくなり、そこから葉沙が現れた。

大和「どんな小細工をした?」

葉沙「手札からでも効果は発動できるモンスターっていったらアレしかないでしょ?」

クリボー悪魔族
ATK 300 / DEF 200
手札からこのカードを捨てる。自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。この効果は相手のバトルフェイズ中のみ使用する事ができる。

葉沙「危なかったわ。サンキュ、〈クリボー〉」

葉沙 LP 4000 → 1200

 葉沙は〈クリボー〉のカードにキスをして感謝した。大和はその光景を見つめながら、

大和「俺はこのままターン終了だ」

4ターン目

葉沙「相手の手札は0枚、そしてリバースカードもない・・・なのに攻めれない気がするのは、どうして?」

 葉沙はこのとき、心臓が押しつぶされそうになっていることに気がついた。掴まれているわけでもないのに、そう感じてしまう。

葉沙(この感じ・・・初めてデュエルしたときと同じだ。緊張と興奮が入り混じったような感覚)

 手がかすかに震えている。相手のプレッシャーを無意識に感じている。

 だが、本人は気がついていないようだ。それを待ち望んでいるかのように笑みを浮かべ、デッキからカードを引く。

葉沙「私のターン、ドロー!」

葉沙(さっすが私のデッキ。私のことちゃんとわかってるわ)

葉沙「私は〈プレズント・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚!」

プレズント・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1300 / DEF 1100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「プレズント・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

葉沙「さらに魔法カード〈レベルアップ!〉を発動! 〈プレズント・ガールLV3〉は〈プレズント・ガールLV5〉にレベルアップするわ」

レベルアップ!通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

プレズント・ガールLV5魔法使い族☆☆☆☆☆
ATK 2400 / DEF 2200
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「プレズント・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。 指定した相手モンスターと同じレベル・種族、半分の攻撃力・守備力を持つ「コピートークン」を1体特殊召喚する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

大和「なかなかの攻撃力を持っているようだが、それだけではこの戦力差はどうにもならない」

葉沙「落ちつきなさいって。確かに〈プレズント・ガールLV5〉の攻撃力じゃ〈レアメタル・ドラゴン〉と相討ちしちゃうけど、デュエルモンスターズって、モンスターの攻撃力だけじゃないでしょ?」

 このセリフでギャラリーはさらに盛り上がった。シルビアと零蘭の表情も明るくなる。

葉沙「魔法カード〈団結の力〉を発動! この効果で〈プレズント・ガールLV5〉の攻撃力は800ポイントアップするわ」

団結の力装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。

〈プレズント・ガールLV5〉
攻撃 2400 → 3200

大和「攻撃力3200!!」

葉沙「これで攻撃すればどうしようもないでしょ? 〈プレズント・ガールLV5〉、〈レアメタル・ドラゴン〉を破壊して!」

〈プレズント・ガールLV5〉ATK 3200 VS 〈レアメタル・ドラゴン〉ATK 2400
撃破!

大和 LP 4000 → 3200

大和「なるほどな・・・シルビアが言っていただけのことはあるようだ」

葉沙「だったら降参したら? あんたの手札は0枚、フィールドに私のモンスターを倒せる手段はないし、次のターンでその可能性のあるカードを引く確立なんて低いわよ」

大和「ならば俺はそれに反逆する。サレンダーをすることなどない」

葉沙「なら見せてよね・・・あんたの反逆ってやつ。でも私はその上をいっちゃうわ。これでも悪あがきは得意なんだから」

5ターン目

葉沙LP 1700手札:2枚
リバースカード2枚〈1枚は表側表示の団結の力〉
プレズント・ガールLV5〈表攻撃〉
フィールド・スィール・ドラゴン×2〈表攻撃〉
なし
大和LP 3200手札:0枚

 静まり返った場の空気が緊張に包まれる。

 息苦しささえ感じさせる場の中心で相手と対峙している葉沙と大和。

 葉沙は大和のドローを見守ることしかできない。引けるはずがないと、そう信じて・・・・・・

大和「俺のターン、ドロー・・・俺は手札から魔法カード〈命削りの宝札〉を発動! デッキから5枚カードをドローする」

命削りの宝札通常魔法
自分の手札が5枚になるようにデッキからカードをドローする。このカードが発動した5ターン後、すべての手札を墓地に捨てる。

 大和はさらにカードをドローする。そしてそれは葉沙の望まない方向へ進み始める。

大和「お前は言ったな。俺の反逆を見せてみろと・・・ならばその瞳に焼きつけろ! 神にすら反逆する龍の力を!!」

創の目の反逆龍ドラゴン族☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 3500 / DEF 3200
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在するレベル6以上のドラゴン族モンスター2体を生贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上で表側表示で存在する限り、手札を一枚捨てる。魔法・罠・このカードを除くモンスター効果の発動を無効にし、それを破壊する。また、エンドフェイズ時このカードのコントローラーの手札が0枚だった時、このカードを除外する。

 咆哮はなかった。ただ静かに現れた傷だらけ1体の龍は唸ることもせずに、そこに存在している。

 眩しいほどに輝く黄金の四肢、その両眼には装飾された長刀が刺されており、アゴと首の間から貫通していた。

 〈創の目の反逆龍〉は見えないはずの瞳を葉沙に向けている。

 葉沙はその存在感に恐怖した。

葉沙(これが・・・大和の反逆・・・切り札なの?)

大和「名は〈インジャリーアイズ・リズィストドラゴン〉。上級ドラゴン族モンスター2体を生贄して特殊召喚する。俺の行動を示すドラゴンだ!!」

 皆が驚くその中で唯一、落ちついた様子のシルビア。

 まるで大和のデュエルを知り尽くしたような態度である。勘の強い零蘭が疑問に思わないはずはなく、

零蘭「予想通りと言いたげアルナ。もしかして以前デュエルしたことアルか?」

シルビア「話してなかったどすか? 大和はんは去年の関東大会の準優勝者なんよ」

零蘭「そうなのか!? ついでに優勝者は誰だたアル?」

シルビア「あんまり恥かしゅうて言えへんのやけど、優勝したんは、うちなんどすえ」

 爆弾発言に驚く零蘭。

零蘭「だたら、なんとかなるかもしれないアルナ」

シルビア「でもなぁ、実は大和はん、決勝戦の直前に家族の人が倒れた言うて棄権したんよ。せやから、うちは大和はんとデュエルしてませんし、それに二年前のときはうちが負けたんよ」

零蘭「どれくらいの差だたアルか?」

シルビア「・・・・・・ほかの人に言うたらあかんよ?」

零蘭「わかたアル。ワタシこれでも口は硬いアルヨ」

シルビア「漢字間違っとるし、ちょっと不安やけど、まあ特別に教えてあげます」

 零蘭の耳元でゴニョゴニュと呟くシルビア。それを聞いた零蘭はビックリして大声を張り上げた。

零蘭「ライフにダメー・・・むぐぐ」

シルビア「大声出したらいけませんえ。それに内緒言いましたやろ?」

 零蘭の口を押さえつけてながら、怖い笑顔を見せるシルビア。

 その笑顔が怖かったのか、零蘭は必死になりながら上下に大きく頷く。

 ようやく解放されて呼吸を整えたあと、

零蘭「もしそれが本当だとしたら、葉沙に勝ち目はないアル」

 好敵手を前にして喜ぶ葉沙の後ろで、零蘭は絶望していた。

 葉沙の対戦相手、天堂大和・・・日本でもっともデュエルキングに近い男と噂され、

 反逆の大和の異名を持つデュエリストである。



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