第07話 登校拒否少女初登場!!


○教室○


 いつもと同じはずの教室は、静かな戦場と化していた。

 机にへばりつきながら自分の記憶力と格闘する者達、努力することをやめて全てを放棄する者達、なにかを書き込んだ紙を机に仕込む者達・・・

 そして黒板にはこう書かれていた。

 〈1時限目・現国2時限目・数学3時限目・英語注・カンニング厳禁!!〉

 そう・・・夏休み前に行われる学校行事その名も定例テストである。

 学生は学業が本分とはよく言ったものだ。

 日ごろ勉強していない者にとって、これが夏休みの運命の分かれ目となる。

 つまり、一教科でも赤点を取ろうものなら、関東大会どころではなくなってしまうのだ。

 そしてここに一人、珍しく頭を抱える人物がいた。

 白鳳院・シルビア・ランフォードである。

 彼女は勉強が死ぬほど嫌いな性格だ。

 塾に通うことはもちろん、勉強など一切しない。当然、テスト前になると慌てはするものの、

 前日まで決してペンを取ろうとしないのだ。

 一方、ゆとりがあるのは葉沙である。

 こちらもおどろきで、葉沙は苦手な教科どころか、前回の定例テストでは学年1位だった。

 もちろん葉沙も勉強は嫌いなのだが、コツみたいなものを掴んでいるらしく、

 3日ほど勉強するだけで脅威の成績を叩き出してしまう。

 ドアを開ける音がしたあと、零蘭が教室に入ってきた。

 葉沙は手を振るが、シルビアを自分以外にかかわるゆとりがないようだ。教科書から目をはなそうとしない。

零蘭「シルビアはどうしたアルか? なにか必死になてるアルが・・・」

葉沙「ああ、今日がテストだからでしょ。シルビアって勉強嫌いだから」

零蘭「そうなのアルか・・・ワタシは葉沙が頭かかえて、シルビアがゆとりしてる思てたネ」

葉沙「失礼なやつね、アンタも。これでも私は学年で1位なのよ」

 自信ありげに話す葉沙。

 それを疑うような瞳で見つめる零蘭。

 今までのことを考慮すれば、無理からぬことだろうが・・・

零蘭「葉沙が1位なのも驚きアルけど、シルビアが勉強が苦手だたのも驚きアル。シルビアはなんでもござれのような所あたアルし、要領がいいアル」

葉沙「私もそれは不思議に思ってたんだけど、詮索するほどのことでもないし」

零蘭「それもそうアルな。だけど、大丈夫アルかね。シルビアのあんな表情を見たのは、ワタシ初めてアルヨ」

葉沙「それについては大丈夫よ。あの様子じゃそろそろ限界っぽいし、来るでしょ」

零蘭「???」

 首を傾げる零蘭。

 しかし理由はすぐに判明した。

シルビア「・・・・・・葉沙、テストに出そうな場所教えてくれはりません?」

零蘭「なるほどアル」

 一人納得する零蘭を他所に、葉沙はため息まじりに一言。

葉沙「はいこれ」

 机の中から教科書を取り出すと、シルビアに手渡す。重要な場所に蛍光ペンで印があり、さらに星マークのある場所がある。

 星マークは葉沙の勘でテストに出題されそうな気がする場所なのだそうだ。あくまで勘なので百パーセントではないものの、七割以上の確立で的中する。

 ある意味恐ろしい才能である。

シルビア「ありがとな。葉沙のおかげで、うちは赤点取らんで済みそうどす」

 シルビアはすぐに自分の席に戻ると、葉沙の教科書と睨めっこを始めた。

 葉沙と零蘭は周りに迷惑なほど話に熱中している。

 そして悪夢のテストは開始された。

 ――かに見えたが、なにかと問題が起こるのがこの世界。

 テストが開始されそうになった瞬間、ドアを力なく開く少女がいた。

 ぼさぼさの黒髪に真紅の瞳、寝不足なのか目の下には隈ができている。

 これでは折角の美形の顔立ちも台無しである。

 それに夏だというのに、冬用の制服を着ており、とても暑そうに見える。

 葉沙とシルビアはその少女を見るなり、手を振るが、ほかのクラスメイトは冷たい視線を送る。

 その人物は零蘭のほうを見るなり、ため息を吐いた。

???「そこ・・・私の・・・」

 零蘭は首を傾げる。

???「私の・・・場所・・・」

葉沙「違う! あんたの席はこっちでしょうが!?」

 葉沙が自分の横の空席を叩きながら少女を手招きした。

シルビア「そういえば、席替えしたて教えてなかったどすからなぁ」

 シルビアも相づちしながら納得する。

???「そう・・・なんだ・・・」

 少女は葉沙を横切ってイスに座ると、カバンからシャープペンシルと消しゴムを取り出した。

 教師がテスト用紙を配り、何事もなかったかのように定例テストは開始された。


○カフェ○


 いきつけのカフェは賑わっていた。テストの日は午前中で帰宅できるのが理由だったが、それだけではないようだ。

 どうやらそれを理由にオフ会をしている者達がいるのだ。

 葉沙一行は反対方向の奥のテーブルに座ると、いつもの注文をして、のんびりし始めた。

 メンバーは葉沙、シルビア、零蘭、そして例の少女である。

葉沙「そいえばマリアって零蘭のこと知らなかったよね」

マリア「うん・・・知らない・・・」

 素直に頷くマリア。

零蘭「初めましてアル。ワタシ零蘭言うよ。よろしくアル」

マリア「その・・・よろしく・・・」

 簡単に自己紹介を済ませたあと、さっそく零蘭がマリアのことを聞き始めた。

零蘭「マリアはどうて学校に来てないアルカ? ワタシが留学してきてから一度も顔見たことなかたアルヨ」

 マリアは少し困った様子を見せたが、葉沙としシルビアが頷いたことで言うことを決めたようだ。ギュッと拳に力を入れたあと、

マリア「これ・・・見て・・・」

 制服の腕を捲くると、そこにあったのは多くの傷跡があった。叩かれた跡からタバコを押しつけられたときにできる特有のものまで数多くである。

 零蘭は手で口を押さえながら驚いた。

シルビア「マリアはんなぁ・・・実は」

 シルビアが事情を話そうとしたとき、葉沙が首を振って無言で口止めした。

 自分で話すまでダメだと、そう言っているように見えた。

 マリアは話を続けた。

マリア「私・・・虐待・・・受けてるの・・・学校でも・・・葉沙達以外は・・・みんな・・・敵・・・」

 そこまで言って下を向くマリア。我慢できなくなったようだ。涙を流し始めた。

 シルビアがマリアに寄り添う。葉沙は相変わらず無言のままだ。

零蘭「だいたい事情はわかたアルが、どうして」

 零蘭が問い詰めようとしたとき、カフェの外から叫び声が聞こえた。葉沙が驚いて席を立つ。

葉沙「この声って!!」

シルビア「間違いないどす」

 葉沙達は声の聞こえたほうに走り出した。その声の持ち主が勘違いでないのならば、

 葉沙のよく知る人物のはずだった。


○空き地○


 デュエル場の中心で座り込んで泣いていたのは明日香だった。

 目の前には高校生らしき長身の男が四人で立っている。そして床には破られたカードの残骸が・・・

葉沙「明日香、大丈夫?」

 明日香のそばに駆け寄る葉沙。

明日香「葉沙姉・・・ボクのデッキ、全部・・・」

 そう言って明日香は葉沙に抱きついた。床に落ちているカードを見ると、機械族モンスターのカードが何枚も破られていた。

葉沙「あんたたち、この子になにしたの?」

 すでにケンカごしの葉沙。無理もない。

 この状況も見るかぎり、明日香のカードを破った犯人は彼等以外に考えられない。デュエリストにとってカードとは魂同然。

 それを破られたということは、身を引き裂かれるようなものなのだ。

高校生A「コイツがあんまりウザいから、ちょっとお仕置きしてやったんだよ」

高校生B「ちょっとデュエルが強いからって調子に乗るから悪ぃんだぜ」

 笑い始める高校生達に葉沙は鼻で笑い飛ばす。

葉沙「つまりこの子にデュエルで負けたから、カードを破ったってこと? はっ! 高校生にもなってダサいことしちゃってさ。情けないって思わないの?」

高校生C「うっせえ! ケンカ売ってんのかよ!」

葉沙「そうよ! 売ってんのよ! バア〜カ!!!」

 拳を構える高校生達。しかし、葉沙はそんなことで退くような性格ではない。

 それを見て人を小バカにしたような態度を取り始める。

葉沙「あそっか。弱いものイジメしかできないからしょうがないか・・・だって、この子に負けるような弱小者だもんね」

高校生D「いいかげんにしとけよ! 中坊が!!」

 まさに一触即発の状況。高校生が葉沙に殴りかかろうとしたとき、それを止めたのは、

紅「はいストップ。ケンカはご法度よ」

葉沙「紅姉!?」

 驚く葉沙達を尻目に、勝手に話を進める紅。

紅「お互いデュエリストなんだから、デュエルで決着つけなさい。私がちゃんと見届けてあげるから」

 腕組みする紅に葉沙が頷こうとしたとき、その横を通ってデュエルディスクをセットしたマリアが男の前に立ちふさがった。

 マリアは自分の境遇もあってか、誰かが泣いているとそれを助けたくなる性分なのだ。葉沙もそれは同様なのだが、マリアはそれ以上に固執している。

 もちろん、紅もそのことをよく知っている。止める理由など存在しないのだ。

紅「決まりね」

 デュエルは静かに始まりを告げた。

マリア&高校生A「デュエル!」

1ターン目

高校生A「俺の先攻だ。ドロー」

 シルビアと零蘭がやっと現場に到着した。

零蘭「どしてデュエルが始まてるアルカ?」

葉沙「こいつらがケンカ売ってきたから!」

 怒りながら言う葉沙。

 葉沙に抱きつきながら泣きじゃくる明日香の姿を見てすぐに理解したようだ。

 葉沙同様に怒り始める零蘭。怒ることを知らないようなシルビアも目を細めて感情を露わにする。

高校生A「俺はカードを2枚伏せたあとで魔法カード〈手札抹殺〉を使うぜ」

手札抹殺通常魔法
お互いの手札を全て捨てた後、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分だけカードを引く。

高校生A「さあ、手札を捨ててカードをドローしな」

マリア手札5枚(手札) → 墓地

高校生A手札4枚(手札) → 墓地

高校生A「そんでもって伏せてたカードをオープンするぜ! 死者蘇生だ!」

死者蘇生通常魔法
自分または相手の墓地からモンスター1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

高校生A「俺が墓地から復活させるのは〈リボルバー・ドラゴン〉だ!!」

リボルバー・ドラゴン機械族☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2600 / DEF 2200
コインを3回投げる。その内2回以上が表だったら、相手のモンスター1体を破壊する。この効果は自分のターンに1度しか使えない。

高校生A「ついでにもう一つカードをオープン。〈魔法石の採掘〉を発動するぜ」

魔法石の採掘通常魔法
自分の手札を2枚捨てる事で、自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。

高校生A「この効果で手札を2枚捨てることで、墓地から魔法カードを1枚手札に加えるぜ」

高校生A手札2枚(手札) → 墓地

葉沙「まずいかもね。回収する魔法カードなんてあれくらいしかない」

シルビア「そうどすな」

零蘭「〈死者蘇生〉アルナ」

 高校生は予想通りの選択をした。墓地から〈死者蘇生〉を取り出すと、高らかにそれをかざす。

〈死者蘇生〉(墓地) → 手札

高校生A「墓地から〈死者蘇生〉を回収するぜ」

 マリアは無表情のままそれを聞き流した。強力なカードを回収した程度では動揺を見せない。

高校生A「そのまま〈死者蘇生〉を発動して今度は〈エメス・ザ・インフィニティ〉を特殊召喚だぜ」

エメス・ザ・インフィニティ機械族☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2000
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送る度に、このカードの攻撃力は700ポイントアップする。

葉沙「こりゃまた運が悪いね」

 さらっと言ってのける葉沙に零蘭がすかさずツッコミのような反応を見せた。

零蘭「そんな気楽してる場合じゃないアルヨ。1ターンで上級モンスターを2体も召喚されたアル! あれじゃ守り切れないアルヨ」

 零蘭が危機感を感じるもの当然である。相手は恐ろしいほどの展開力を見せているにもかかわらず、

 マリアはまだ自分のターンすらまわってきていないのだ。

高校生A「これが機械族ってもんだぜ! 攻撃力で相手をねじ伏せる。そんな小娘のザコモンスターなんかが入ってるのが機械族デッキだと思われると虫唾が走るぜ」

零蘭「なに言てるアルカ! 明日香に負けたくせに」

高校生A「なんだとぉ!」

紅「こらこら、ケンカしないの。デュエルで白黒つけるって言ったでしょ?」

 紅の一言で黙り込む二人。まだ泣きじゃくっている明日香にシルビアが囁く。

葉沙「大丈夫どすえ。マリアには守護者がついてはりますから。マリアの危機にかならず駆けつけるガーディアンが」

 自信ありげなシルビアの台詞に明日香は自然と泣き止んだ。

 そしてシルビアの言う通り、デュエルの展開はマリアの圧倒的な力を見せつける結果になった。

高校生A「まあいいさ。これでモンスターを守備表示で召喚したとしても次のターンに〈リボルバー・ドラゴン〉の効果で破壊できるし、もし失敗しても〈エメス・ザ・インフィニティ〉の効果に利用できる。どちらにしても俺の勝利は確定なんだよ」

 胸を張って言い張る高校生A。

高校生A「俺はターン終了だぜ」

2ターン目

マリア「私のターン・・・ドロー」

 マリアは地面に散らばっているカードを眺めながら、ゆっくり目を閉じた。

 野次を飛ばすギャラリーの高校生達など気にする様子もない。

 葉沙達は黙ってそれを見守っている。

 やがて目を見開くと、マリアの表情はまるで別人になったように力に満ちた。

 さきほどまでの気弱な印象はなくなり、力強さを感じさせる。

マリア「手札から〈地砕き〉を発動。あなたのモンスターで守備力の1番高いモンスターを破壊」

地砕き通常魔法
相手フィールド上の守備力が1番高い表側表示モンスター1体を破壊する。

高校生A「守備力の1番高いモンスター・・・〈リボルバー・ドラゴン〉か!」

リボルバー・ドラゴン(フィールド) → 墓地

高校生A「ちっ! 役に立たないやつめ」

 舌打ちにながら自分のモンスターをバカにする高校生Aにマリアの身体に力が入る。

マリア「さらに〈守護者の使命〉を発動! この効果でデッキからガーディアンと名のつくモンスター1体と装備魔法カード1枚を手札に移動」

守護者の使命通常魔法
デッキから「ガーディアン」という名のついたモンスター1体と装備魔法カード1枚を互いに確認して手札に加えることができる。

マリア「私は〈ガーディアン・エアトス〉と〈女神の聖剣−エアトス〉を選択」

ガーディアン・エアトス天使族☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2000
「女神の聖剣−エアトス」が自分のフィールド上に存在する時のみ、このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができる。また、自分の墓地にモンスターカードが存在しない場合、手札からこのカードを生贄なしで召喚する事ができる。このカードに装備された「女神の聖剣-エアトス」を墓地に送る事で、相手の墓地のカードを上からモンスター以外のカードが出るまでカードを除外する。このターンのエンドフェイズまで除外したモンスターカードの攻撃力の合計分数値分このカードの攻撃力がアップする。

女神の聖剣−エアトス装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

葉沙「あ〜あ、こりゃ決着がついたか」

 当然と言わんばかりの葉沙。シルビアもコクコクと頷く。あいかわらず驚きを隠せないのは零蘭である。

零蘭「なんてモンスターカードを所持してるアルか! 〈ガーディアン・エアトス〉と言えばレアリティがメチャクチャ高いカードアルヨ!」

 賭け事が好きな零蘭。当然、金儲けのことを頭が一杯なだけに、レアカードの価値などもよく知っているのだ。

葉沙「ああそのことか。それだったら答えは簡単よ」

シルビア「あのカードはな、マリアはんのお父様の形見なんどす。マリアはんの両親が離婚したときに譲り受けたそうなんどす」

葉沙「まっそれでマリアは母親に引き取られたて、再婚までしたんだけど・・・その父親が最低最悪なやつだったってわけよ」

シルビア「葉沙はな、そんなマリアはんを見て、その父親をボコボコにするいうて改造エアガン片手に家に乗り込んでいったことがあるんよ」

葉沙「昔の話でしょ。古い話持ち込まないでよ。今はまだマシなんだから」

零蘭「あれでマシ・・・アルカ。だたら昔は毎日が悲惨だたアルナ。シルビアも大変アル」

葉沙「なんですってぇ〜!!」

 安心したせいか、いつもの口喧嘩を始める葉沙と零蘭に苦笑いをするシルビア。

 マリアはその光景を見ていると、葉沙がガッツポーズをしてきた。それに頷き返すと、

マリア「手札から〈早すぎた埋葬〉を発動。墓地に眠る〈バックアップ・ガードナー〉を特殊召喚」

マリア LP 4000 → 3200

早すぎた埋葬装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1体選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。

バックアップ・ガードナー獣戦士族☆☆☆☆
ATK 500 / DEF 2200
このカードに装備された装備魔法カードを1ターンに一度だけ、別の正しい対象に移し替えることができる。

マリア「〈女神の聖剣−エアトス〉を〈バックアップ・ガードナー〉に装備」

バックアップ・ガードナー
攻撃力 500 → 800

マリア「これで墓地にモンスターがいないことを確認。エアトスの特殊効果を発動。自分の墓地にモンスターが存在しない場合、手札から〈ガーディアン・エアトス〉を生贄なしで召喚することが可能。手札から〈ガーディアン・エアトス〉を召喚!!」

 空から白く輝く羽が舞い落ちてきた。

 雲を引き裂くように眩い光が地面を照らし、そこから翼を広げた美しい女性がフィールドに舞い降りた。神々しいその姿に見る者すべてを圧倒させる。

 エアトスはマリアに寄り添うように肩を並べると、翼を使ってマリアを包み込む。

マリア「〈バックアップ・ガードナー〉の効果発動! 〈女神の聖剣−エアトス〉を〈ガーディアン・エアトス〉に装備。この瞬間、攻撃力を300ポイントアップ」

ガーディアン・エアトス
攻撃 2500 → 2800

バックアップ・ガードナー
攻撃力 800 → 500

マリア「〈魂の解放〉を発動! 墓地に眠るカードを五枚選択してゲームから除外。選択するのはあなたの墓地のカード」

魂の解放通常魔法
お互いの墓地から合計5枚までのカードを選択し、そのカードをゲームから除外する。

〈手札抹殺〉(墓地) → 除外

〈魔法石の採掘〉(墓地) → 除外

〈ハリケーン〉(墓地) → 除外

マリア「モンスターを道具のように扱い、この少女のカードを引き裂いたのは罪。その罪は償うことが必要。だから知ることをするのが最初。エアトスの特殊効果を発動! 聖剣の魂!!」

 エアトスは大地に刺さった剣を抜き取ると、天に掲げた。剣にモンスター達の魂が集束され、輝き始める。

〈リボルバー・ドラゴン〉(墓地) → 除外

〈サイバティック・ワイバーン〉(墓地) → 除外

〈人造人間−サイコ・ショッカー〉(墓地) → 除外

ガーディアン・エアトス
攻撃力 2500 → 10000

高校生A「なんなんだよ。なにが起こってる!?」

マリア「エアトスの特殊効果。自らの聖剣を糧に、相手の墓地に存在するモンスターをすべて除外し、その攻撃力の合計をエアトスの攻撃力に変換することができる能力」

 エアトスは静かに剣を構える。

マリア「モンスター達を大切にしない人に彼等は力を貸してくれない・・・それがあなたに敵対するモンスター達の意思」

高校生A「たかがカードにそんな感情みたいなもんあるかよ!」

マリア「これを見てまだわからないのなら証明することで決着」

 エアトスが剣を構える。

マリア「バトル!! エアトス・・・思いと正義の力で撃て! フォビデン・ゴスペル!!」

 エアトスを剣を振るう。剣を纏った光が〈エメス・ザ・インフィニティ〉を襲う。

 巨大な爆発が起こり、高校生達を飲み込んだ。

〈ガーディアン・エアトス〉ATK 10000 VS 〈エメス・ザ・インフィニティ〉ATK 2500
撃破!

高校生A LP 4000 → 0

デュエル終了!!
勝者――マリア!!

 決着のついた戦場は異様な空気を発していた。

 二度に亘る敗北感に高校生達もショックを隠しきれない様子であるが、

 そんなことなどお構いなしの人物が粛清(しゅくせい)の名乗りを上げる。

 今まで無口だったのが不思議なくらい喋っていない人物こと葉沙である。

 またどこから取り出したのか、両手にスタンガンを持っている。もちろんそれだけでは怒りの収まらない人物がもう二人いた。

 いつも以上にニコニコと笑顔を見せるシルビアと関節を鳴らし不気味に微笑む零蘭。

 前にも話した通り、シルビアは不良とケンカして勝てるほどの実力を持っている。

 零蘭も昔、カンフーの修行をしたことがあるらしく、それは今でも続けているらしい。

 その異様な空気を探知した紅は、私、これから仕事あるからと言ってそそくさと退散していき、いつもの表情に戻ったマリアも、

 ここは危ないから・・・一緒に・・・カフェに行こうと告げて、明日香を連れてその場をあとにした。

 臨戦態勢の葉沙の瞳が怪しく光る。

シルビア「さあ、これで思う存分暴れても大丈夫どすえ」

零蘭「覚悟はよろしアルか?」

葉沙「私の妹分を泣かしておいて、ただで済むと思わないでね。徹底的にボッコボコにしてやるんだから!!」

 町の小さな空き地で近所迷惑の断末魔が響き渡った。


○空き地(夕方)○


 日も暮れようとしている時間帯、やっとお目覚めのスィンは大きなアクビをしたあと、外を眺めようとした。

 そしてあの地獄絵図の光景を見たあとで一言・・・

スィン(これって夢かな・・・そうじゃなかったら、救急車を呼んだほうがいいかも)



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