第10話 マジシャン VS マジシャン(前編)!!


○関東大会会場前○


 朝日は眩しく、風は虫たちに活気を与え、広い空へと羽ばたかせる。小さな花壇には向日葵が咲いていた。

 そのすぐ横で一人の少女が汗だくになりながら、下敷きをパタパタと扇いでいる。

 いつも通り髪を二つに分けて、ゴムで結い上げ、白のTシャツに、下は紺のハーフパンツ姿。葉沙らしいシンプルな格好だ。

 だが、そのだらしなさといったらひどいものである。周りの人々など視界の外とでも言いたげに大股広げてダラ〜としているのだ。

 もはや羞恥心の欠片もない。

 そんな彼女だが、今大会の台風の目になりうる少女と噂されている無謀な癇癪少女。

 琴木葉沙だったりする。

葉沙「あっつ〜〜〜なんで日本の夏ってこんなに暑いわけ? こんなんだからエアコンがバカ売れして、大儲けする会社が増えるのよ! そんだけ儲けられるんなら売上の一割寄こしなさいっての!! まったく・・・・・・」

 またまたメチャクチャなことをさらっと言ってのける葉沙。

 その姿にスィンも呆れかえっている。

スィン(葉沙はだらしなさすぎです。夏は暑いに決まっていますし、涼しい風を出すエアコンが売れるのも当然なんです。だから企業の人々が頑張っているわけで、どうしてそこでお金を要求するのか、その意味がわかりません)

葉沙「単純に暑いからよ。あいつらのせいで地球温暖化が進んでるの。つまりここが今暑いのはそいつらのせいってわけ!」

スィン(でも葉沙も家に帰れば、すぐにエアコンのスイッチを押すじゃないですか)

葉沙「うっ!?」

 がっくりとうなだれる葉沙。スィンが正論を言っているのだから、仕方のないことなのだが、それでもこの暑さがどうにかなるわけではない。

 諦めて再び下敷きを扇ぎ始める葉沙。

 そこに現れたのは、日傘を差して歩いてくる少女が二人。

 一人はいつも通りのお団子頭の少女、零蘭。今日は迫力ある龍の刺繍が施された青のチャイナドレスで決めている。膝辺りまでスリットが入っていて、相変わらず周りの視線を奪っていた。

 一方質素な白のワンピースにつばの大きい白帽子、その大人しそうな雰囲気がよく合う服装のマリア。

マリア「葉沙・・・大丈夫?」

零蘭「きと暑さにやられたアルナ」

 上を向く気力もない葉沙は、腕だけ動かして返事を返した。

 不意に額に冷たい感触が襲う。

 勢いよく上を見上げる葉沙。

葉沙「やった! ジュースじゃん! これって零蘭のおごり?」

 喜ぶ葉沙を呆れながら見ていた零蘭が、

零蘭「それは二人のおごりアルヨ。どうせ葉沙は夏の暑さに参ているとマリアが言ていたアルからナ」

 いつも通りの態度の零蘭にホッとする葉沙。

葉沙(この前は、あんなに落ち込んでたもんだから心配しちゃったけど、だいじょぶそうね)

 関東大会予選で敗退して以来、ずっと落ち込んでいた零蘭。

マリア「それより・・・いいの?」

葉沙「何が?」

マリア「大会参加・・・デュエリストは・・・打ち合わせが・・・あるって・・・シルビアが」

葉沙「だからシルビアを待ってるのよ。でもシルビアってお寝坊さんだから」

零蘭「シルビアは特別な打ち合わせがアルから先に行くと、昨日言てたと思うアルが?」

 葉沙は額に指を押し付けながら、昨日の記憶をさかのぼり始めた・・・・・・

 確か・・・

シルビア(うちは前回のチャンピオンやから、ほかの出場者より早う会場にいかなあかんのよ。せやから明日はうちのこと、待ってなくても大丈夫やからね)

 ・・・心配そうなシルビアの姿を鮮明に思い出した葉沙。

葉沙「ああ〜〜〜〜〜〜!!」

 周囲が驚くほどの大声を上げる葉沙。

 零蘭はため息を吐き、マリアはクスクスと笑う。

葉沙「んじゃ、またあとでね」

 葉沙は二人に背中を向けると、慌てて会場のほうへ走り出した。


○デュエリスト控え室○


 控え室には関東大会出場を果たしたデュエリスト30名が、それぞれの思いを胸に開戦を待ち望んでいた。

 そんなこととはつゆ知らず、大きな音を立てて扉を開けてしまった葉沙。

 これでは予選大会の失敗をまったく活かせていない。

 やはり冷たい視線を送られ、思わず低く唸ってしまった葉沙。

 彼等は予選を勝ち抜いたデュエリストだ。予選会場以上に緊張もしている。

 気まずい雰囲気が控え室を包み込む。

大和「お前はデュエル以外での成長はしないのか?」

 大和が葉沙に話しかけた。

 いつもの制服姿なのだが、なにかが違う気がした。

葉沙「やっぱ関東大会まできたら、大和の雰囲気も変わるか・・・でも話しかけてくれてよかったよ。この空気は最悪すぎて気分悪くなっちゃいそうだし」

 葉沙は助かったとばかりに、大和のほうに歩き出す。

葉沙「だってさ・・・遅刻しそうになったら慌てるじゃない?」

大和「時間にゆとりを持って行動すれば問題ない」

葉沙「だから今回はそうしようとしたけど、ちょっとした誤算があって・・・」

 なぜか大和に頭が上がらない葉沙。

 その大和にまでダメだしされたことがショックだったのか、がっくりと肩を落とす。

 そこへ今度は銀髪の少年が近づいてきた。

クリア「こんにちは・・・で正解でしたか?」

 優しい笑みを浮かべるクリア。

 この前と同じ黒のジャケット姿なのだが、葉沙にはそれが似合っていないような気がした。

 その笑顔と合うと言えば、やはり白が似合うだろう。

 本人が気に入っているのならば、口出しするべきことではないかも知れないが・・・

葉沙「まあ間違ってないかもしんないけど、この場面じゃちょっとキツいかも」

 思わず苦笑いしてしまう葉沙。

 解放的な葉沙に比べ、大和は目を瞑り、腕組をしてしまう。

 どうやらクリアと話す気がないらしい。

クリア「きつい?? それはどういう意味ですか?」

 興味津々な表情のクリア。美形な顔立ちのせいか、とても絵になる光景だ。しかし、葉沙はこのとき、この少年とシルビアが瓜二つに見えた。

 しかし、シルビアに弟がいるという話は聞いたことがない。

葉沙「勘違いかな・・・でもこの琴木葉沙様が聞けずにはいられるかってのよ」

 葉沙はクリアにそのことを聞いてみようと、口を開きかけたその時、

シルビア「今度はちゃんと遅刻せえへんで来れたん? 零蘭はんとマリアはんにもよろしく言うたんやけど、気になってな」

 薄い赤が基調の着物姿のシルビアが歩み寄ってきた。着物には紫陽花が咲き乱れおり、とても優雅な雰囲気を醸し出している。

葉沙「ああそうですよ! 遅刻しかけましたよ! 昨日のこと忘れて会場前でシルビアのこと待ってましたよぉ〜〜だ!!」

 子供ような顔を膨らませて怒る葉沙の態度に、シルビアはコロコロと笑う。

 だが、明らかに強張った表情になる少年に大和は気づいていた。

 クリアである。

 先ほどまでの明るい笑みは消えうせ、復讐者のような狂気が瞳に映っている。

 大和がクリアに話しかけようと、腕を解くが、それでは間に合わなかった。

クリア「シルビア! お前!!」

 似合わないほどの大声に控え室のデュエリストもクリアのほうを向く。

 シルビアはクリアのほうをジッと見つめたまま微動だにしなかったが、すぐに瞳を輝かせて、

シルビア「クリアやない。元気にしてたん? お姉ちゃんが電話してもつながらへんから心配してたんよ。今日はお母様は来てはるん?」

 突然の再会に嬉しそうなシルビア。自分が爆弾発言したことなどまったく気にもしていない。

 周りも驚いている中、この爆弾発言で一番ビックリしたのは葉沙である。

葉沙「あんたたち姉弟だったの!?」

 素っ頓狂な声のあとに出た台詞はこれ。

 まあ分からないでもないのだが、そこまで驚くとちょっと失礼かもしれない。

シルビア「葉沙には言うてへんやったっけ? うちとクリアは双子の――」

クリア「お前と姉弟なんて冗談じゃないッ! この裏切り者が!!」

 シルビアを遮るように感情を露わにするクリア。

 さすがにこれはまずいと判断した大和がクリアを無理やり部屋から連れ出した。

 残された葉沙とシルビアは呆然とその光景を見ていることしかできなかった。


○デュエルフィールド○


 関東大会の開会式の真っ最中、デュエリストたちが大勢の観客やカメラを前に緊張している最中、

 葉沙はシルビアとクリアのことを考えていた。

葉沙(なんでクリアのやつ、あんなにシルビアに噛み付いたんだろ?)

 クリアの表情と態度を思い出しながら、シルビアの一言が頭を放れない。

シルビア(きっとクリアは、うちがお父様を選んだことを怒っとるんどす。あの子はお母さんっ子やったから)

 思考は堂々巡りを繰り返し、謎は謎を深めていく。

葉沙(なにがなんだかわかんないわよ、もうっ! そりゃ私は事情の一つも知らないけどさ、あれはないでしょ、あれは!! あんなこと言われたらシルビアだって悲しいに決まってるのに!!)

 会場の中央で凛とした姿のシルビアを見つめて顔を曇らせる葉沙。

 二人は血の繋がった姉弟である。

 理由はともあれ、敵対するなんてことはあってはならない。

葉沙(ああもうっ! 私はこんな小難しいこと考えるのが大嫌いだってのに・・・んっ・・・待てよ・・・そうか♪)

 名案が閃いたのか、ポンッと手を叩いて頷く葉沙。

葉沙(この私が人肌脱いでやれば、きっと仲直りくらい・・・元々姉弟なんだからやれないことはないはずよ)

 中央のメインスクリーンにトーナメント方式の対戦表が表示された。

 まずは葉沙。

 なんと幸運なのか不幸なのか、彼女は1番左端、第1試合に組み込まれていた。

 続いてシルビア。

 彼女は全大会優勝者ということもあって、最後の試合、1番右端に名前が表示されている。葉沙と対戦するには決勝戦しかありえない。

葉沙(う〜む・・・シルビアとは決勝前にデュエルしたかったんだけどなぁ〜)

 さらに大和。

 彼は中央の少し右辺りに名前が上がっていた。これで大和とも決勝戦でしかデュエルすることは叶わない。

 そして二人が順調に勝ち進めば、準決勝でシルビアと大和は去年の決着をつけることになる。

葉沙(うっそ〜!? なんでこんなことに・・・これじゃシルビアか大和のどっちかしかデュエルできないじゃない!!)

 すでに自分が決勝戦に勝ち進んでいることを想定している葉沙。

 いくらなんでも先走りすぎである。

 他のデュエリストたちと言えば、シルビアや大和と当たらなくて助かったと、ホッと胸を撫で下ろしていたり、1回戦からの強豪とのデュエルに頭を抱えたり・・・。

 が、強豪とのデュエルを望む葉沙としては、あまりよい結果ではないらしい。

葉沙(あとはあの野郎か・・・)

 葉沙とはちょうど反対側にいるローブ姿の男。

 ラゴス。

 彼の名前を発見したとき、葉沙は思わずため息を吐いた。

 なんとその名前は大和の隣・・・と言っても対戦するわけではないが・・・

 この対戦表を元に動けば、準決勝まで勝ち上がらなければならない。

 本来ならば、すぐにデュエルしてボコボコに打ちのめしたいのだが、これではどうしようもない。

 そして葉沙は自分の対戦相手を全く見ていなかった。

 葉沙の隣に表示されている名前。

 あのマリアを打ち負かし、イギリスでも有名なデュエリストであるクリア・ランフォード。

 そして葉沙と同じマジシャンデッキの使い手である。


○デュエルフィールド○


 葉沙は意気揚々とデュエルフィールドに立つと、デュエルディスクにセットされているデッキを取り出した。

 デッキのカードを確認して、なにかを念じたあと、再びセットしなおす。

 もう一つの入り口から対戦相手であるクリアの姿が現れた。

 当初のさわやかな笑顔は一切なく、狂気のような瞳だけがそこに存在している。

 葉沙は気を引き締めると、

ジャッジ山田「両選手が揃ったところで、それでは第一試合琴木葉沙VSクリア! デュエルスタート!!」

 デュエルは始まった。

葉沙&クリア「デュエル!」

1ターン目

クリア「先攻は僕がもらう。ドロー! 僕は〈熟練の黒魔術師〉を攻撃表示で召喚。さらにリバースカードを2枚セットしてターン終了だ」

熟練の黒魔術師魔法使い族☆☆☆☆
ATK 1900 / DEF 1700
自分または相手が魔法を発動する度に、このカードに魔力カウンター1個乗せる(最大3個まで)。魔力カウンターが3個乗っている状態でこのカードを生け贄に捧げる事で、自分の手札・デッキ・墓地から「ブラック・マジシャン」を1体特殊召喚する。

2ターン目

葉沙「私のターン、ドロー・・・」

 葉沙は深く考え込んだまま、しばらく動かないでいた。

 シルビアとクリアのことを考えているのだ。

葉沙(なんかすっごい目してる・・・そんなにシルビアのこと嫌いなのかな・・・でも・・・う〜ん、どしよ?)

クリア「なにをしているんですか? はやくモンスターを召喚してください」

 言葉自体はいつもと変わらない丁寧なものだが、声のトーンが微妙に違う。

 とても低く、それでいて感情の高ぶりを抑えようと必死になっている複雑な音。

葉沙「考えてるのよ・・・あんたをどうやって仕留めようかね」

 葉沙はハッと息を呑んで自らの失態を呪った。これでは仲直りさせるどころか、ただ挑発しているだけではないか。

葉沙(なにやってんのよ、私。これじゃ敵対するだけじゃない!!)

 口と考えていることが全く噛み合わない葉沙。しかし、今さら嘆いたところで意味はない。

葉沙「ねえ、もし私が勝ったらさ」

クリア「あなたが勝ったら・・・?」

 不思議そうな表情をするクリア。

葉沙「あんたがどうしてシルビアを嫌ってるのか教えなさい。さっきから気になってしょうがないのよ」

クリア「本人から直接聞き出せばいいんじゃないですか?」

 クリアの返答を予想していたかのように葉沙は次の台詞を返す。

葉沙「あんたから聞かないと意味ないのよ・・・それで? お答えは?」

クリア「僕を負かせたら・・・できるのでしたらご自由に」

 滑稽そうに笑うクリアに自信満々の笑みを返す葉沙。

葉沙「そっ♪ んじゃ飛ばすわよ!!」

 二人の視線が鋭くなり、周りの空気の温度が変わる。息の詰まるような空間の中で葉沙は勢いよくデュエルディスクにカードをセットしていく。

葉沙「私は〈サイレンス・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚」

サイレンス・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1400 / DEF 1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。相手フィールド上の表側表示魔法カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

葉沙「さらに手札の〈クリッター〉をコストに〈ドリアードの祈り〉を発動させるわ」

ドリアードの祈り儀式魔法
「精霊術師ドリアード」の降臨に必要。フィールドか手札から、レベル3以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。

葉沙「〈精霊術師ドリアード〉を攻撃表示で特殊召喚!!」

精霊術師ドリアード魔法使い族☆☆☆
ATK 1200 / DEF 1400
「ドリアードの祈り」により降臨。このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。

クリア「〈熟練の黒魔術師〉のエフェクト発動!」

葉沙「なっ!」

 素っ頓狂な声を上げる葉沙。

クリア「〈熟練の黒魔術師〉は魔法カードエフェクトが発動されたとき、自分に魔力カウンターを一つ置くことができる」

熟練の黒魔術師
魔力カウンター 0コ → 1コ

葉沙「でもこっちも〈サイレンス・ガールLV3〉のモンスター効果が発動する。〈サイレンス・ガールLV3〉はLV5へと進化するわ!!」

サイレンス・ガールLV5魔法使い族☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

葉沙(今の状況じゃ、墓地から魔法カードを回収しても意味ないか・・・)

葉沙「そして〈サイレンス・ガールLV5〉の効果発動! 右端にあるリバースカードを破壊させてもらうわよ」

クリア「なら僕もそのエフェクトに対してチェーンさせてもらう。君が指定したカードは魔法カード〈エネミーコントローラー〉。フィールド上に存在するモンスター1体の攻守変更ができるカードだ」

エネミーコントローラー速攻魔法
次の効果から一つ選択して発動する。
●相手フィールド上に存在する表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、発動ターンのエンドフェイズまで選択したカードのコントロールを得る。

サイレンスガール LV5
形式 表側攻撃 → 表側守備

葉沙「厄介なカード使ってるわね・・・」

クリア「それだけじゃない。魔法カードが発動されたことで〈熟練の黒魔術師〉のエフェクトが発動」

熟練の黒魔術師
魔力カウンター 1コ → 2コ

クリア「これで魔力カウンターは二つ目。あと一回、魔法カードが発動させれば、君は勝てなくなる」

 自信を見せるクリアに一瞬ムッとする葉沙。だが、少なくともそれがハッタリでないことは理解していた。

 〈熟練の黒魔術師〉の効果・・・あのデュエルキングが愛用している切り札モンスターを呼び出すことができる。

葉沙「私はカードを1枚セットしてターン終了よ」

3ターン目

葉沙LP 4000手札:1枚
1枚
サイレンス・ガールLV5〈表側守備表示〉、精霊術師ドリアード〈攻撃表示〉
熟練の黒魔術師〈攻撃表示〉(魔力カウンター・2個)
1枚
クリアLP 4000手札:3枚

クリア「僕のターン、ドロー・・・僕は魔法カード〈シールドクラッシュ〉発動 このエフェクトで守備表示モンスター1体を破壊する。破壊するモンスターは・・・」

葉沙「〈サイレンス・ガールLV5〉!!」

シールドクラッシュ通常魔法
フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

サイレンス・ガールLV5(フィールド) → 墓地

クリア「これで危険なモンスターはいなくなった。そして〈シールド・クラッシュ〉のエフェクト成立により〈熟練の黒魔術師〉の魔力カウンターが3つとなる」

熟練の黒魔術師
魔力カウンター 2コ → 3コ

葉沙「ヤバッ!!」

クリア「もう遅いさ。僕は〈熟練の黒魔術師〉のエフェクトを発動させる」

 〈熟練の黒魔術師〉がなにやら不思議な呪文を唱え始めた。やがて握っていた杖が紫色に光りだし、辺り一面が紫の光に染まる。

 次の瞬間、

クリア「デッキから〈ブラック・マジシャン〉を特殊召喚する」

ブラック・マジシャン魔法使い族☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2300
魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。

ジャッジ山田「〈ブラック・マジシャン〉・・・デュエルキングが愛用しているモンスター!! クリア選手のフィールドに強力モンスターの出現だ!!」

 杖を構える〈ブラック・マジシャン〉に圧迫感を感じる葉沙。

 さっきまで自分のフィールドには〈サイレンス・ガールLV5〉が存在していた。あのカードならば〈ブラック・マジシャン〉と互角の戦いが可能だと踏んでいた葉沙としては、かなりのアドバンテージを奪われたことになる。

 それを理解しているらしく、クリアは勝ち誇ったように叫ぶ。

クリア「〈ブラック・マジシャン〉で〈精霊術師ドリアード〉に攻撃! ブラックマジック!!」

 〈ブラック・マジシャン〉の杖が紫色の魔法弾が放たれようとした。

 が、その瞬間、

葉沙「誰がさせるかってのよ! リバースカードオープン! 〈風林火山〉」

風林火山通常罠
風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する時に発動する事ができる。次の効果から1つを選択して適用する。
●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
●相手フィールド上の魔法、罠カードを全て破壊する。
●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。●カードを2枚ドローする。

葉沙「これでその危険な〈ブラック・マジシャン〉を破壊するわ」

ブラック・マジシャン(フィールド) → 墓地

クリア「でも無駄さ! こちらもリバースカードをオープン! 〈リビングデットの呼び声〉」

リビングデッドの呼び声永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

クリア「これで〈ブラック・マジシャン〉は再びフィールドに舞い戻った! バトル再開だ!!」

〈ブラック・マジシャン〉ATK 2500 VS 〈精霊術師ドリアード〉ATK 1200
撃破!

精霊術師ドリアード(フィールド) → 墓地

葉沙 LP 4000 → 2700

葉沙「ドリアード・・・よくやったわ」

 葉沙は危機感を感じていた。

 姉弟の関係がどうだなど、もはや記憶の片隅に追いやられ、いまあるのは焦りだけである。

 彼は手加減などできるデュエリストではない。

 全力で相手をしなければ、こちらが瞬殺されてもおかしくないほどの実力を持つデュエリストであることを、葉沙はようやく理解した。

 そして葉沙はなれないことをやめて、デュエルに集中し始めた。

葉沙(ここからは全力でやってやる!!)

クリア「僕はカードを1枚伏せてターン終了だ」

 二人はただ睨みあった。

 一人は強者の存在に向かって・・・

 一人は憎しみのおもむくままに・・・



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