第13話 大和、脅威の実力!!


○観客席○


 葉沙はポップコーンをガツガツと頬張ったあと、ペットボトルに入っていたコーラをゴクゴクと一気飲みした。

 そして一息つくと、

葉沙「やっぱデュエル観戦には、これが一番よね」

 と言ってのけた。

 葉沙の行動に呆れながらも、零蘭が口を開く。

零蘭「次のデュエルは大和のデュエル言うのに、葉沙は呑気すぎアル」

 そう、次のデュエルは大和の一回戦。

 本来なら一回戦勝者に用意された部屋のテレビからも観戦可能なのだが、直接観たいという葉沙の要望により、わざわざ会場まで足を運んだのだった。

明日香「それにしても、葉沙姉よく食べるね。体重とか気にしないの?」

葉沙「そんなの気にしたことないわ。食べたいときに食べるってのが私の基本だから。それに私って太らない体質みたいだし」

零蘭「グッ! ワタシは今減量中だというのに!!」

 恨めしそうに葉沙を見る零蘭。

 シルビアとマリアはそんな会話など耳に入れる気はないらしい。

 どうやら大和の登場をジッと待っているみたいだ。

葉沙「遅いわね。早くデュエルしてくれないかしら」

 ポップコーンを食べ終えた葉沙が、暇そうに髪の毛を弄りはじめた。

マリア「葉沙・・・もう少し・・・我慢」

シルビア「マリアはんの言う通りどす。葉沙は落ち着きが足りませんえ」

葉沙「だってさ・・・」

 不満そうな態度をする葉沙。無理もない。

 葉沙にとって、大和は目標でありライバルと自負している。完敗して以来、ずっと大和を目標にこの大会を勝ち進んできたのだ。

 もうすぐ、もうすぐと考えるだけで、ジッとしていられないもの仕方がないこと。

明日香「葉沙姉、あれ」

 明日香が指差したほうを見る。

 そこには解説が中途半端で有名なジャッジ山田の姿が。

ジャッジ山田「お待たせしました。続いては千堂大和VS大暮学のデュエルだ!!」

 派手な演出とともに姿を現した大和。

 大暮も同時に登場したのだが、あまりスポットライトを浴びていないような気がする。

 まあそんなことは気にする必要はない。

 これから、大和のデュエルがはじまるのだから。


○デュエルフィールド○


 ダテメガネの位置を直しながら、ニヤニヤと笑う大暮。

 一方、そんな大暮を他所に、大和は会場をキョロキョロと見渡していた。

 が、なにかに気づいたのか、視線を一点に集中させはじめる。

 視線の先にいる人物・・・大和の瞳には一人の少女の姿が。

ジャッジ山田「それでは、両者デュエルディスクを構えて・・・」

 大和はジャッジ山田の合図で、初めて相手デュエリストのほうを向いた。

 だが、それ以上の反応はない。

 デュエルディスクを構え、

大和&大暮「デュエル!」

1ターン目

大暮「先手を取らせてもらう。ドロー・・・〈融合呪印生物−闇〉を攻撃表示で召喚」

融合呪印生物−闇岩石族☆☆☆
ATK 1200 / DEF 1600
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げる事で、闇属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。

大暮「カードを3枚伏せて、ターン終了」

2ターン目

大和「俺のターン、ドロー」

大暮「その瞬間、伏せカードをオープン。〈死のデッキ破壊ウイルス〉」

死のデッキ破壊ウイルス通常罠
自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げる。相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。

大暮「このカードの効果で手札、フィールドに存在する攻撃力1500以上のモンスターは全て墓地に送られる」

大和「ふっ!!」

大暮「なにを笑っている! さっさと手札を確認させろ」

 大和は顔色一つ変えず、自分の手札を公開した。

 その手札は、

スィール・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 2000
自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。

スィール・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 2000
自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。

神竜ラグナロクドラゴン族☆☆☆☆
ATK 1500 / DEF 1000
神の使いと言い伝えられている伝説の竜。その怒りに触れた時、世界は海に沈むと言われている。

ミラージュ・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆
ATK 1600 / DEF 600
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手はバトルフェイズに罠カードを発動する事が出来ない。

プチドラの卵ドラゴン族
ATK 0 / DEF 500
このカードが手札から墓地に送られた場合、デッキからカードを1枚ドローする。

強欲な壺通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

大暮「大当たりだな」

 全ての手札が確認され、その内の4枚が墓地に送られたというのに、それでも大和は微動だにしない。

 むしろ、表情に余裕が見える。これぐらいは大したことではないと。

大和「魔法カード発動、〈強欲な壺〉。デッキからカードを2枚ドローする」

大暮「バカめ! それでもし攻撃力1500以上のモンスターを引けば、お前は終わりだ」

 大暮の言う通りである。

 〈死のデッキ破壊ウイルス〉が発動している最中に、新たにドローしても、そのカードは効果の対象になる。

 モンスターカードをドローすれば、墓地に送られ、仮にそうでないとしても手札を確認されてしまう。

 これではカードをドローしても、こちらが不利になるだけなのだ。

大和「そんなことか・・・どうでもいいことだな」

大暮「なんだと!?」

大和「さあ、俺がドローしたカードだ。確認しろ」

龍の鏡通常魔法
自分フィールド上または墓地から、融合モンスターによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚として扱う)

反逆龍の瞳カウンター罠
自分フィールド上に「創の目の反逆龍」が表側表示で存在している場合、手札から発動することができる。魔法・罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。「創の目の反逆龍」がフィールドに存在するかぎり、相手はこのデュエル中、この効果で破壊された魔法・罠カード及び同名カードを発動することができない。

大和「手札から〈龍の鏡〉を発動! 自分の墓地に存在するドラゴン族の融合素材モンスターをゲームから除外。融合デッキから融合モンスターを特殊召喚する!!」

大暮「墓地のモンスターを融合して召喚だと!」

 双頭を持った白い鱗の龍が天空から舞い降りた。闇を照らす光のような存在感は見る者を圧倒する。

 孤高に吼えるその姿は、力を誇示する守護龍そのものである。

大和「〈ツイン・スィール・ドラゴン〉の特殊召喚に成功した場合、デッキからドラゴン族カード1枚を表にして手札に加えることができる。俺が選択するモンスターは・・・」

 畏怖を込めてその名を呼ぶ大暮。

大暮「〈創の目の反逆龍〉!!」

大和「〈死のデッキ破壊ウイルス〉はドローしたカードは有効だが、それ以外には効果をなさない。よって手札に加える効果も対象になることはない」

 デュエルディスクからデッキを取り出して確認を始める大和。

 そして1枚のカードを抜き取ると、

大和「焼き付けろ! すべてに反逆する存在を!!」

 大和が〈創の目の反逆龍〉を見せ付けた。

 冷汗をかきはじめた大暮。

大暮「だが、フィールド上に存在するモンスターは1体。レベル6以上のドラゴン族モンスターを2体生贄にしなければならない〈創の目の反逆龍〉を召喚できまい」

大和「〈ツイン・スィール・ドラゴン〉の効果をドラゴン族カードを手札に加えるためだけだと勘違いするな」

大暮「なにぃ!」

大和「〈ツイン・スィール・ドラゴン〉のもう一つの能力・・・それはこのカードを生贄にするとき、2体分の生贄とすることができる」

ツイン・スィール・ドラゴンドラゴン族☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2800 / DEF 2800
融合:スィール・ドラゴン+スィール・ドラゴン
このカードが特殊召喚に成功した場合、デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加え、デッキをシャッフルする。ドラゴン族モンスターを生け贄召喚する場合、このモンスター1体で2体分の生け贄とする事が出来る。

 2体分の生贄として扱うことができる〈ツイン・スィール・ドラゴン〉の特殊効果。その意味は単純明快である。

 レベル6以上のドラゴン族モンスターを2体、生贄に捧げなければならない〈創の目の反逆龍〉。

 そして〈ツイン・スィール・ドラゴン〉はその召喚条件をたった1体で満たしてしまっているのだ。

大和「貴様が恐れていた反逆を見せてやろう! 〈ツイン・スィール・ドラゴン〉を生贄に〈創の目の反逆龍〉を召喚する!!」

創の目の反逆龍ドラゴン族☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 3500 / DEF 3200
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在するレベル6以上のドラゴン族モンスター2体を生贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上で表側表示で存在する限り、手札を一枚捨てる。魔法・罠・このカードを除くモンスター効果の発動を無効にし、それを破壊する。また、エンドフェイズ時このカードのコントローラーの手札が0枚だった時、このカードを除外する。

大暮「くっ!」

 沈黙。

 会場全体が音のない世界に支配されたかのような静けさ。

 絶対の存在感を有する存在がフィールドに佇んでいる。

 黄金の四肢に、瞳を貫く二本の長刀、血を流し続けるボロボロの身体を支える四足の足と鋭利な爪。

 見るだけで相手の恐怖を掻き立てる獰猛な龍。

ジャッジ山田「ついにその姿を現した!! 千堂大和の切り札、〈創の目の反逆龍〉です!!」

 ジャッジ山田の一言で、会場は一気にヒートアップした。

大和「これで終わりだ! 〈創の目の反逆龍〉の攻撃! ゴットブレイクショット!!」

 巨大な口を開き、長刀に滴る血液を見せつけながら、体内から力を集束させていく〈創の目の反逆龍〉。

 大暮はその威圧感に瞬き一つせずに立ち尽くした。だが、すぐに正気を取り戻すと、伏せてあったカードに手を置く。

大暮「リバースカードをオープンするぜ! 〈破壊輪〉」

破壊輪通常罠
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。

大和「無駄だ。その程度では〈創の目の反逆龍〉の反逆は止まりはしない。〈創の目の反逆龍〉の効果発動! オールリフューザル!!」

 〈創の目の反逆龍〉がその鋭利な爪を構えた。

大暮「俺はこのときを待っていた!」

大和「どういう意味だ?」

 眉間にしわを寄せる大和。

 大暮は笑いを堪えるのに必死のようだ。

大暮「もう1枚のリバースカードオープン! 〈天罰〉」

天罰カウンター罠
手札を1枚捨てる。効果モンスターが発動した効果を無効にし、そのモンスターを破壊する。

大和「そのカードは!?」

 驚きを隠せない大和を前に、大暮は勝利を確信したように高らかに笑った。


○観客席○


 圧勝だと思っていた葉沙にとって、今の大和の反応は驚くべきものだった。

 なぜなのか分かっていないが、少なくとも劣勢には感じられない。

 しかし、隣に座っているシルビア達はそのカードを見るやいなや、

 事態を把握していない葉沙としては面白くない。

 零蘭のほっぺたをギュ〜と抓った。

零蘭「なにするアルか!」

葉沙「あんたが納得したような顔してるからよ!!」

零蘭「それは仕方ないアルよ」

 零蘭の意見に明日香やマリアも頷く。

葉沙「じゃあなんで大和は驚いた顔してんのよ。〈創の目の反逆龍〉の効果があれば罠なんてどうでもいいはずなのに」

明日香「それは大きな勘違いだよ」

マリア「問題・・・なのは・・・スペル・・・スピード」

葉沙「スペルスピード? なにそれ?」

 首を傾げる葉沙を信じられないといった感じで驚く零蘭。

零蘭「スペルスピードも知らないアルか!? それで今までよくデュエルできたアルナ」

 零蘭の態度にムッとする葉沙。

葉沙「どういう意味よ!」

シルビア「スペルスピードいうんはな、魔法、罠、モンスター効果の発動の速さのことを言うんよ」

葉沙「それで?」

マリア「カードには・・・それぞれ・・・効果を・・・解決する・・・スピードが・・・あるの」

 子供のように素直に驚く葉沙。

零蘭「魔法カードに対して罠カードをチェーンできるのは、魔法カードより罠カードのほうがスペルスピードが速いからアル」

葉沙「でも〈サイクロン〉とかチェーンできるじゃん」

シルビア「それは〈サイクロン〉が速攻魔法やからよ」

マリア「速攻魔法は・・・罠カードと・・・同じ・・・スペルスピード・・・」

 どうやら理解できたようだ。

 葉沙は満足げに頷くと、

葉沙「なるほどね・・・でもだからって〈創の目の反逆龍〉の効果で罠カードを無効できることに変わりないじゃない」

 葉沙が言うことは正しく聞こえる。

 〈創の目の反逆龍〉の効果ならば魔法カードだろうが罠カードだろうが、おかまいなしに効果を無効化する。

 言うならば、究極のカウンターモンスターなのだ。

 だがシルビアはそうでもないと言う。

 例外が存在するのだと。

シルビア「〈創の目の反逆龍〉は誘発即時効果モンスター・・・つまりスペルスピードは2になるんよ」

零蘭「そして〈天罰〉はカウンター罠」

マリア「カウンター罠の・・・スペルスピードは・・・3」

シルビア「つまり〈創の目の反逆龍〉の効果で無効化することができへんのよ」

葉沙「それじゃ〈創の目の反逆龍〉は・・・」

零蘭「〈天罰〉の効果で破壊されるアル」


○デュエルフィールド○


 一瞬でも驚くかと思われたが、まったく動揺していない大和。

 一方、大暮は勝利を確信しているようだ。笑みが止まらず、口を押さえている。

大暮「俺はずっと〈創の目の反逆龍〉を倒す方法を考えて考えて考え抜いた。そして見つけたんだ! このカードを」

大和「・・・・・・」

 沈黙したまま、ピクリとも動こうとはしない大和。

大暮「カウンター罠の〈天罰〉ならばモンスター効果が発動する前に〈創の目の反逆龍〉を破壊できる! これで終わりだ!!」

大和「よく気づいたな・・・」

 口元だけ笑いながら、大和が言う。

大暮「なんせ俺は天才だからな」

大和「だが、その程度のことを想定していないとでも考えていたのか?」

大暮「なっ! なんだと!」

大和「手札から罠カード発動! 〈反逆龍の瞳〉!!」

大暮「バカな! 手札から罠カードだと!?」

大和「〈反逆龍の瞳〉は自分フィールド上に〈創の目の反逆龍〉がいる場合、手札からでもその効果を発動することができる」

大暮「だが、無駄な行為だぜ! 〈創の目の反逆龍〉で自らのカードを無効化して破壊されるだけだってのに」

 確かにその通りである。

 〈創の目の反逆龍〉の効果は自分も対象としている。カードの効果を発動させた瞬間に自らの効果で無効化してしまう結果が待っているというわけだ。

 これでは全く意味がない。

大和「お前が言ったはずだ。 カウンター罠である〈天罰〉ならば〈創の目の反逆龍〉の効果は発動しないと」

大暮「まさか! そのカードは!?」

大和「そうだ! 〈反逆龍の瞳〉は〈天罰〉と同じカウンター罠」

 空間の裂け目から、黄金の瞳が現れた。

 宙に浮く瞳は、自身を回転させながら辺りを見回すと、何かを発見したらしい。

 その場所だけに視線を送り続ける。

 やがて瞳が輝きだした。〈天罰〉から振り下ろされた雷がその異様な圧迫感でかき消される。

 〈創の目の反逆龍〉は何事もなかったかのように口から大量の光を集束させ始めていた。

大和「貴様ごときに倒される俺ではない! その愚かな眼に反逆を焼き付けろ! ゴットブレイクショット!!」

大暮 LP 4000 → 500

 強大な一撃の前に、その場に座り込んでしまった大暮。

 もはや彼に戦意はないだろう。

 ジャッジ山田は大暮がデッキの上に手を当てたのを確認すると、

ジャッジ山田「大暮選手、デュエル続行不可能とみなし、大和選手の勝利が確定しました!!」

 盛り上がる会場。

 しかし、大和は会場の片隅にいた黒髪短髪の少女の姿が写っていた。

大和「あの女・・・琴木葉沙に似ている・・・」


○会場前・外○


 太陽は沈み始め、時刻は夕刻になろうとしていた。

 どっしりと構える大木に背中を預けている少女は、眠たそうにアクビをした。そして、会場から出てくる和服の女性の姿を確認すると、

??「おっそいぞ、銀髪」

 その先にいた人物。

 夕日を反射するプラチナブロンドの髪とおっとりとした雰囲気を併せ持つ少女。

 白鳳院・シルビア・ランフォードであった。

シルビア「ご到着は明日やと伺いましたんやけど」

??「いいだろ別に・・・んなことよりアイツは?」

シルビア「計画は順調に進んでますえ」

??「ちがうだろ? アイツだよ、あの未完成品のアイツ」

シルビア「それも問題ありませんえ」

??「死んでなくって悲しいぜ」

 よほど毛嫌いしているのか、吐き捨てるように言い放つ少女。

シルビア「姉妹の関係て聞いてますけど、そんなに嫌いなんどすか?」

 少女は鬼の形相でシルビアの胸倉を掴むと、自分が背にしていた大木に押し付けた。

??「ったりまえだろ。俺っちはあんなのと比べられるのが大っ嫌いなんだよ」

シルビア「そんなに敵対せんでもええんに」

??「おい銀髪。ジジイに可愛がられてるからって調子こいてんじゃねぇぞ! テメエの代わりなんかいくらでもいんだからな」

シルビア「肝に銘じときますわ」

??「そうかよ」

 なにかがシルビアの頬を叩いた。

 少女が殴ったわけでもなく、なにかが当たったわけでもない。

 赤く腫れた頬にハンカチ押さえるシルビア。

??「災難だな。じゃ、寝首かかれないように気をつけろよな」

 頬を押さえる少女を鼻で笑い飛ばすと、少女はその場から立ち去っていった。

 シルビアはジッとその背中を見つめていたが、やがて口を開いて。

シルビア「あんたも気ぃつけなあかんよ。そのうちきっと・・・ふふふ」

 不気味な笑みを浮かべるシルビア。

 その口から赤い雫が流れ落ちた。




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