第14話 VSラゴス(前編)、お怒り少女は強いのだ!!


○選手専用控え室○


 葉沙はジッとデッキを睨みつけながら考え込んでいた。

 あと1時間後には準決勝1回戦目が開始される。

 クリア戦は危機的状況に陥ったものの、以降は特に苦戦することもなく順調に勝ち上がっていた。

 次はいよいよラゴスとのデュエル。

 零蘭からは注意しろとだけ告げられていた。デッキの構造や戦略については一切教えてもらっていない。

 葉沙はそれを望んでいなかったし、零蘭もそれを理解していたからこそ忠告だけに留めておいたのだ。

スィン(葉沙?)

葉沙「大丈夫よ。ただちょっと気になってたことがあるだけ」

スィン(零蘭さんのことですか?)

葉沙「少し違う。確かに零蘭のことなんだけど」

 首を傾げるスィン。

葉沙「私が知るかぎり、零蘭のデッキの破壊力は半端じゃないわ。現に零蘭は中国でも指折りのデュエリストって聞いてるし。でもその零蘭を倒せる実力があるってことは、ラゴスも相当のデュエリストってことでしょ」

スィン(そうなりますね)

 スィンは素直に頷いた。

葉沙「そんなデュエリストが無名なのが気になってさ」

 葉沙はおおざっぱそうな性格をしているが、意外にも誰も気にしないような些細な疑惑を発見したりする。

 それは勘と呼ぶべき不確かなもの。

 だが、葉沙の勘は異常なほどにいろんなことに敏感で、よく当たる。

 その勘が疑問に思わせるのだから、きっとなにかあるに違いない。

 自分を信じることが当たり前の葉沙にとって、これは考えるべきことなのだ。

 スィンは特に考えることなく、単純な可能性を口に出した。

スィン(別の国なら有名とかあるじゃないですか。日本だとあまり知られていないだけとかあるかもしれません)

葉沙「だったら、そっちで出場すればいいでしょ。わざわざ日本まで来る必要ないじゃない」

スィン(言われてみればそうかも知れないです)

葉沙「零蘭みたいに事情があるならまだしも、大の大人がそんな面倒なことするとは思えないわ」

 眉間にしわを寄せながら考え込む葉沙。

スィン(私、予選会場でどす黒いものを感じたと言いましたよね)

葉沙「ちゃんと憶えてるわよ。多分それが引っかかってると思うの。もやもやってした何かが・・・」

 コンコンとドアを叩く音が聞こえた。

 葉沙は集中力を欠かれたことに苛立ちを感じたが、深呼吸して気持ちを落ち着けると、ドアを開けた。

 そこに立っていたのは、

シルビア「葉沙、ちょっとええ?」

 白鳳院・シルビア・ランフォードだった。

葉沙「別にだいじょぶだけど、シルビアはいいの? 私の次・・・大和とデュエルでしょ。ちゃんと準備しとかないと」

シルビア「うちのことより葉沙が心配やったんよ。それにどうしても渡したいものがあるんどす」

葉沙「渡したいもの?」

 首を傾げる葉沙。

 いつも葉沙の世話を焼くシルビア。葉沙もそれが当たり前ように感じているのだが、まさかこんな時にまでとは考えていなかった。

 葉沙とシルビアは昔からの友達である。もちろん葉沙が勝負事に関して一切手出し無用と口癖ように言うことを知っている。

 それでも渡したいものがあると告げるのには特別な理由があるはずなのだ。

シルビア「できるだけ誰にも見せとうないから、部屋に入ってから渡したいんよ」

 そう言って強引に部屋に足を踏み入れるシルビア。

 いつもと様子が違うシルビアに、葉沙はどう対処したらよいか、わからずにいた。

 シルビアは葉沙をイスに座らせると、封筒を取り出して机の上に置く。

葉沙「これってまさかラゴスの試合のビデオとかじゃないでしょうね?」

シルビア「違います」

葉沙「それじゃなんなの、これ?」

シルビア「封を切ってみたらわかりますえ」

 葉沙は手短な場所に置いてあったハサミを手に取ると、封筒の口を切った。

 出てきたのは、桜の木が彫られた豪華な木箱。開かないように紫の紐で結んである。

 葉沙は躊躇うことなく紐を解いて箱を開ける。

 あったのは1枚のカードだった。

 それは見たことのないカードだっただけに、葉沙はもう一度首を傾げた。

葉沙「カード?」

シルビア「そうどす。このカードは三幻皇の1枚・・・シルヴァリオン」

葉沙「シルヴァリオン? 私、そんなカード見たことも聞いたこともないわよ?」

シルビア「葉沙が知らへんのも無理ないどす。このカードはな、あのペガサスが神のカードを超えるカードを生み出そうとして作り出したカード〈邪神〉。そのとき試作品として制作されたカードなんどす」

 どうしてそんなカードをシルビアが所持しているのか?

 疑問に思うが、今はそんなことより気になることがある。

 どうしてそんな貴重なカードを自分に託すのか?

 その真意は一体・・・

 もちろん、直接そんなことを聞く性格ではない葉沙。とりあえず別のことを聞いて様子を窺うことにした。

葉沙「試作品って、このカードちゃんとデュエルで使えるの?」

シルビア「それについては問題ありませんえ」

葉沙「それにこのカードのテキスト・・・何語? さっぱり読めないんだけど」

シルビア「それはヒエラティックテキスト・・・デュエルキングの持つ神のカードと同じ古代文字なんどす」

葉沙「古代文字て言われても、読めなきゃ意味ないじゃない」

シルビア「大丈夫どす。葉沙なら、このカードの使い方がわかるはずどすから」

葉沙「そんなこと言われても・・・・・・」

シルビア「それをデッキ入れてデュエルすれば、必ず葉沙は勝てますえ」

 葉沙は困惑した。

 こんなシルビアを見るのは初めてだ。

 とても不気味な少女は一体誰?

 そんな心境の葉沙とは知らず、シルビアは耳元で囁く。

シルビア「みんな葉沙の真の実力を知らへん。今は絶好のチャンスなんどす。葉沙の強さを見せつけるチャンスなんどすえ」

 シルビアはそう言い残して部屋から出て行った。

 三幻皇のカードを見つめながら、新たな難題を背負込む葉沙だったが、時計の針は待ってくれない。

 ゆっくりと。

 ゆっくりと。

 ゆっくりと。

 葉沙にデュエルをしろと迫ってきた。


○観客席○


 準決勝とあって会場はいつも以上に混み合っていた。

 シルビア、零蘭、マリア、明日香の四人はいつもの通り、葉沙のデュエルが始まるその時を座りながら待っていた。

 今回ばかりは零蘭も落ちつきがない。

 爪を噛みながら、爆発しそうな感情を抑えている。

 それを見かねたシルビアが、

シルビア「零蘭はん、もう少し落ちついたらどうどす? そんなんやったらこの前の葉沙と同じやよ」

零蘭「それはわかてるけど、自分じゃ抑えられないアル」

マリア「落ちついて・・・零蘭」

明日香「葉沙姉なら大丈夫だよ。きっと零蘭姉の仇を討ってくれるから」

 周りに押し切られる形で、なんとか落ちつきを取り戻した零蘭。

 葉沙を思う友達に紛れる銀髪の少女は、口元だけを動かして笑った。


○デュエルフィールド○


 デュエルフィールド上空辺りに用意された解説席には、いつものようにジャッジ山田の姿があった。

ジャッジ山田「会場の皆様、大変長らくお待たせしました。それではこれより関東大会準決勝第一試合、琴木葉沙選手 VS ラゴス選手のデュエルを開始します!!」

 歓喜の声が上がる会場。

 この異様な盛り上がりに、ジャッジ山田もいつも以上にハイテンションだ。

ジャッジ山田「まずは赤コーナーからの登場です。今大会初参戦ながらも強豪達と激戦を繰り返し、勝利を勝ち取ってきたルーキーデュエリスト・琴木葉沙ぁぁぁ〜〜〜!!」

 派手な演出とともに地面から現れたのは、いつもの少女。

 腰に届きそうなほどのツインテールの髪と釣り目ぎみの瞳を持つ少女こと琴木葉沙である。

 だが、いつものゆとりはそこになく、険しい表情をしている。

ジャッジ山田「続きまして青コーナーからは、無言のまま不気味に立ち尽くす姿はまさに死神。魂を狩に来た闇のデュエリスト・ラゴス!!」

 反対側から白煙とともにラゴスが現れた。黒いローブで全身を覆い隠し、仁王立ちしている。

ジャッジ山田「それでは両者、デュエルディスクを構えて・・・デュエル開始!!」

葉沙&ラゴス「デュエル!」

1ターン目

葉沙「先攻は貰うわよ、ドロー!」

 葉沙はドローしたカードをそのままデュエルディスクにセットした。

葉沙「〈サイレンス・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚!」

サイレンス・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1400 / DEF 1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。相手フィールド上の表側表示魔法カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

葉沙「カードを1枚伏せてターン終了よ」

2ターン目

ラゴス「ドロー・・・マジックカード〈暗黒界の強襲〉発動。名称「暗黒界」ヲ持ツモンスター1体ヲ特殊召喚スル」

暗黒界の強襲通常魔法
自分の手札を1枚捨てる。このカードの効果で墓地に送られた「暗黒界」と名のつくモンスターは相手の効果で手札から墓地に捨てられたこととして扱うことができる。このターン、自分のモンスターは攻撃する事ができない。

ラゴス「〈暗黒界の強襲〉ノ効果デ召喚サレタモンスターハ、相手ノ効果デ手札カラ捨テラレタ事トシテ扱ウ」

葉沙「つまりどういうことなわけ?」

 葉沙は不機嫌そうに言う。

ラゴス「暗黒界ノ恐怖ヲ体感スルコトニナル」

暗黒界の武神 ゴルド悪魔族☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 1400
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手フィールド上に存在するカードを2枚まで選択して破壊する事ができる。

ラゴス「オ前ノフィールドニ存在スルカードハ2枚。ヨッテ全テ破壊スル」

 〈暗黒界の武神 ゴルド〉が葉沙のフィールドに襲い掛かろうとした。だが、葉沙もタダで破壊させるつもりはないようだ。

葉沙「その前にやることはやらせてもらうわ!!」

 葉沙はデュエルディスクからデッキを引き抜く。

葉沙「モンスターの特殊召喚により〈サイレンス・ガールLV3〉の効果発動! デッキから〈サイレンス・ガールLV5〉を特殊召喚する」

サイレンス・ガールLV5魔法使い族☆☆☆☆☆
ATK 2500 / DEF 2100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

ラゴス「ダガ、意味ハナイ」

〈サイレンス・ガールLV5〉(フィールド) → 墓地

リバースカード1枚(フィールド) → 墓地

葉沙「そんなことないわ!」

ラゴス「一体何ヲ」

葉沙「私が伏せていたカードは〈多重罠〉。このカードが相手の効果で破壊された場合、デッキから罠カードを1枚セットすることができるのよ」

多重罠通常罠
相手がコントロールするカードの効果によってセットされたこのカードが破壊され、墓地へ送られたとき、デッキから永続罠を選択して互いに確認し、自分フィールド上にセットする。

葉沙「デッキから〈リビングデッドの呼び声〉を選択してセットするわ」

リビングデッドの呼び声永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

ラゴス「〈暗黒界の強襲〉ヲ発動シタターン、プレイヤーハ攻撃デキナイ。ヨッテ、ターンヲ終了スル」

3ターン目

葉沙LP 4000手札:4枚
1枚
なし
暗黒界の武人 ゴルド〈表攻撃〉
なし
ラゴスLP 4000手札:4枚

葉沙「私のターン、ドロー。さっそく〈リビングデッドの呼び声〉を発動させるわ。蘇って〈サイレンス・ガールLV5〉」

〈サイレンス・ガールLV5〉(墓地) → フィールド

葉沙「魔法カード〈天使の施し〉を発動! デッキからカードを3枚ドローして、2枚を墓地に送る」

天使の施し通常魔法
デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。

手札2枚(手札) → 墓地

葉沙「さらに手札から魔法カード〈レベルアップ!〉を発動! これでサイレンス・ガールはさらなる成長を遂げるわ」

レベルアップ!通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

葉沙「〈サイレンス・ガールLV7〉をデッキから特殊召喚!!」

 眩い閃光の中に誰かが立っていた。

 蒼を基調にしたローブを身に纏い、アズライトブルーの宝石が埋め込まれた杖を両手で握っている。吸い込まれるようなほど澄んだ蒼の瞳は見る者全てを見透かしてくるような印象を与えた。

葉沙「〈サイレンス・ガールLV7〉の特殊効果発動! ディスティニー・ディクレアス・ハイ」

サイレンス・ガールLV7魔法使い族☆☆☆☆☆☆☆
ATK 2800 / DEF 2400
このカードは通常召喚できない。「サイレンス・ガールLV5」の効果でのみ特殊召喚できる。手札を1枚捨てることで、自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード2枚まで破壊する事ができる。

葉沙「私は手札を1枚捨てて、墓地にある魔法カード〈天使の施し〉を選択して、再び手札に加えるわ」

〈天使の施し〉(墓地) → 手札

ラゴス「人ガ足掻ク姿ハ・・・イツ見テモ快感ダ」

葉沙「なんですって?」

ラゴス「オ前ハ、アノ女ニ酷似シテイル。チャイニーズノ娘ニ」

葉沙「零蘭に・・・私が?」

ラゴス「アノ女ハ、弱カッタ。滑稽ナホドニ」

 葉沙は小刻みに震えだした。

 理由も単純明快だ。

 友をバカにされたことに腹を立てている。

 目の前にいる男に対して。

 葉沙は声を荒げて叫んだ。

葉沙「人が大人しく聞いてあげれば、調子に乗って! いいかげんにしときなさいよ! そのへらず口を叩ける余裕を無くしてあげるわ!! 〈サイレンス・ガールLV7〉で〈暗黒界の武神 ゴルド〉を攻撃! サイレンス・ブラストショット!!」

〈サイレンス・ガールLV7〉ATK 2800 VS 〈暗黒界の武神 ゴルド〉ATK 2300
撃破!

葉沙「〈暗黒界の武神 ゴルド〉撃破! あんたがバカにした分だけコテンパンにしてあげるわ!! 零蘭の代わりにね」

ラゴス LP 4000 → 3500

 先制して優位に立った葉沙。

 だが、ラゴスに動揺の色が見られない。

 葉沙にはそれが不気味に感じられた。

葉沙「カードを2枚セットしてターン終了よ」

4ターン目

ラゴス「ドロー・・・」

 ピクリとも動かないラゴスに業を煮やした葉沙が、

葉沙「早くしなさいよね。どうせ、あんたに逆転する術なんてないんだから」

 余裕の笑みを見せる葉沙。

 しかし、ラゴスはそれでも動こうとしない。

 数分ほど経過して、ようやくカードをデュエルディスクにセットした。

ラゴス「フフフ・・・コレガ暗黒界ノ恐怖ダ。必死ニ足掻キ、逃ゲ回ルガイイ」

ラゴス「フィールド魔法〈暗黒界の大地〉発動」

 辺りが黒い煙で蔽われていく。すぐにデュエルフィールド全体を隠し、観客から見えなくなってしまった。

 葉沙は今までの怒りを忘れて驚いた。

葉沙「なんなのよこれ!?」

ラゴス「〈暗黒界の大地〉ハ闇ダケノ世界。暗黒界ヲ名乗ル魔物達ガ生マレ育ッタ聖地・・・ソシテ闇ノデュエルガ始マル」

葉沙「闇のデュエル?」

ラゴス「ソウダ・・・自ラノ血ト肉ヲ賭ケタ神聖ナデュエルダ」

葉沙「なに寝言言ってんのよ。闇のデュエルなんてものが存在するはずがないでしょ・・・まあ私を動揺させようとか考えてたんでしょうねど、お生憎様ね」

ラゴス「フフフ・・・ソウダトイイガ・・・」

 葉沙から全く見えない場所から、ラゴスは初めて感情のようなものを表し始めた。

ラゴス「〈暗黒界の大地〉ノ効果発動サセ、〈暗黒界の軍神 シルバ〉ヲ生贄ナシデ召喚スル」

暗黒界の軍神 シルバ悪魔族☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 1400
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手は手札2枚を選択し、好きな順番でデッキの一番下に戻す。

ラゴス「コノママ済ムト考エテイルワケデハナイダロウ? 魔法カード〈暗黒界の雷〉ヲ発動! ソノリバーズカードヲ破壊サセテモラウ」

暗黒界の雷通常魔法
フィールド上に裏側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。その後、自分の手札を1枚選択して墓地に捨てる。

 上空に稲妻が走り、葉沙のフィールドに襲い掛かる。

 葉沙は腕で目を覆いながら、

葉沙「そんなことさせるわけないでしょ! あんたの選択したカードは〈魔力の壺〉! このカードが破壊された場合、モンスター1体の攻撃力を700アップすることができる。〈サイレンス・ガールLV7〉の攻撃力を700ポイントアップさせるわ」

魔力の壺通常罠
モンスター1体の攻撃力を、発動ターンのみ500ポイントアップする。このカードが相手のカードの効果で破壊された場合、モンスター1体の攻撃力を700ポイントアップする。

サイレンス・ガールLV7
攻撃力 2800 → 3500

ラゴス「未熟ナプレイングダ。〈暗黒界の雷〉ノ効果デ手札1枚ヲ墓地ニ捨テサセテモラウ」

手札1枚(手札) → 墓地

ラゴス「墓地ニ捨テタモンスター〈暗黒界の尖兵 ベージ〉ノ効果発動! コノカードヲ特殊召喚スル」

暗黒界の尖兵 ベージ悪魔族☆☆☆☆
ATK 1600 / DEF 1300
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

葉沙「随分とマメな戦術じゃない。姑息さが浮き出てるわよ」

ラゴス「言ワレル筋合イハナイ。〈暗黒界の軍神 シルバ〉デ〈サイレンス・ガールLV7〉ヲ攻撃!」

葉沙「正気なの!? 私の〈サイレンス・ガール〉の攻撃力のほうが上なのに!!」

 普通ならば葉沙の言う通りである。

 しかし、ラゴスもそれは承知しているはずだ。

 なにか手を打ってくるはずである。

葉沙(速攻魔法? それとも・・・)

ラゴス「〈暗黒界の大地〉ノ効果デ、名称〈暗黒界〉ヲ持ツモンスターノ攻撃力ハ700ポイントアップシテイル」

暗黒界の軍神 シルバ
攻撃力 2300 → 3000

葉沙「それでも! まだ!!」

 葉沙は叫んだ。

 〈サイレンス・ガールLV7〉の方が〈暗黒界の軍神 シルバ〉の攻撃力をまだ上回っている。

 そのまま戦闘を続行しても〈サイレンス・ガールLV7〉の勝利。

 ラゴスの空回りで終わりである。

 しかし、ラゴスもこれで終わるわけがない。

 ラゴスは素早く手札をデュエルディクスにセットした。

ラゴス「速攻魔法〈突進〉発動」

突進速攻魔法
表側表示モンスター1体の攻撃力を、ターン終了時まで700ポイントアップする。

葉沙「そんな!?」

 驚愕する葉沙。

 まさか二段構えでさらにモンスターの攻撃力を上げてくるなど、予想できるはずもない。

 そしてこれで〈暗黒界の軍神 シルバ〉の攻撃力が〈サイレンス・ガールLV7〉の攻撃力を上回ったことになる。

暗黒界の軍神 シルバ
攻撃力 3000 → 3700

 魔法の力を帯びた〈暗黒界の軍神 シルバ〉が腕に生えた鋭利な刃を使って〈サイレンス・ガールLV7〉を襲う。

葉沙「攻撃力が上回ったからって!」

 突然、〈サイレンス・ガールLV7〉の目の前に風の障壁が現れた。突風が吹き荒れて〈暗黒界の軍神 シルバ〉を弾き飛ばす。

護りの風速攻魔法
このカードを発動したターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘によっては破壊されない。(ダメージ計算は適用する)

〈暗黒界の軍神 シルバ〉ATK 3700 VS 〈サイレンス・ガールLV7〉ATK 3500
撃破!

葉沙 LP 4000 → 3800

葉沙「そう簡単にやらせるわけないでしょ!!」

 なんとか攻撃を凌いだ葉沙。

 腕に若干だが、痛みが走った。

 葉沙は腕に目をやったが、特にケガをしているわけでもない。

 それだけを確認すると、ラゴスのフィールドを見つめる。

 葉沙には今の状況を打開できるカードが存在している。それに引き換え、ラゴスの手札は0枚。

 つまり、このターンさえ乗り切ればラゴスを倒すことができるのだ。

ラゴス「ターン終了ダ」

 なにもすることなく、ラゴスはターン終了を宣言した。

 なにもできないのだから当然なのだが、それでも葉沙は引っかかるものを感じていた。

葉沙「周りの空気が重い・・・会場の声も聞こえない。まるで別世界にでもいるみたい」

 それは間違っていなかった。

 葉沙は自分が知らない間に引きずりこまれたのだ。

 暗黒の闇に・・・・・・

 闇のデュエルの死闘へと・・・・・・



戻る