第16話 VSラゴス(後編)、絶対なる存在の覚醒!!


○デュエルフィールド○


 葉沙を中心に強大な闇の力が渦巻いている。だがなぜか、葉沙はそれが当たり前のように感じていた。

 以前から知っている・・・いや、当然というか、当たり前と言うべきか・・・

 なんとなくだが、この力で何ができるのか、その使い方も無意識に理解できる。

ラゴス「ヤハリ聞イテイタ通リ。オ前ガ、世界ヲ恐怖二陥レル存在・・・危険ダ。オ前ハコノ世二災イシカ呼バナイ。愛シイ娘ノタメニ、今ココデ排除サネバ」

 ラゴスも葉沙の異変を感じ取り、全身に力を入れた。もちろん、今の彼にとっては激痛であっただろう。

 身構えるラゴスをぼんやりと見つめていた葉沙は、自分が恐ろしいほどに冷静でいることに気づく。

 負ける?

 可能性に賭ける理由とはなんだ?

 勝利は決まっていることだから、それ以外に言い様がないのに。

 敗北の二文字は存在しない。

 勝利しか存在しないはずなのに・・・どうして?。

 今となっては、どうして負けるなどという思考が生まれたのかすらわからない。

葉沙(暗闇が恐怖なんて・・・そんなの・・・いったい誰が決めたんだろ?・・・どうして今まで怖いなんて思ってたのが不思議なくらいだな)

 不思議な感覚に囚われながらも、すべてをありのままに受け止める葉沙。

 目の前で虫のように足掻いているようにしか見えないラゴスを哀れに感じた。

 彼は確かに必死に戦っているというのに・・・今の葉沙にはそれが滑稽としか思えない。

ラゴス「〈暗黒界の石龍 ドバ〉ノ効果ニヨリ〈暗黒界の軍神 シルバ〉ヲ墓地ヨリ特殊召喚」

暗黒界の軍神 シルバ悪魔族☆☆☆☆☆
ATK 2300 / DEF 1400
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手は手札2枚を選択し、好きな順番でデッキの一番下に戻す。

暗黒界の軍神 シルバ(墓地) → フィールド

ラゴス「ターン終了ダ」

9ターン目

葉沙LP 1400手札:2
なし
なし
暗黒界の石龍 ドバ〈表攻撃〉、暗黒界の武神 ゴルド〈表攻撃〉、暗黒界の軍神 シルバ〈表攻撃〉
暗黒界の大地 〈表側〉
ラゴスLP 3000手札:0

葉沙「私のターン、ドロー」

 もはや動かすことすらできない腕に装着されているデュエルディスクから強引にカードを引き抜く葉沙。

 痛みを感じていないのだろうか?

 無表情のまま、ドローしたカードを見つめる。

 そして始まった。

 絶対なる存在の由縁がどういうものなのかを・・・

葉沙「魔法カード〈貪欲な壺〉を発動。墓地に眠る5枚のモンスターカードをデッキに戻し、カードを2枚ドローする」

貪欲な壺通常魔法
自分の墓地からモンスターを5枚選択し、デッキに加えてシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

〈スィンセリティ・ガールLV5〉(墓地) → デッキ

〈サイレンス・ガールLV3〉(墓地) → デッキ

〈サイレンス・ガールLV5〉(墓地) → デッキ

〈サイレンス・ガールLV7〉(墓地) → デッキ

〈探査魔道士・イクスプロー〉(墓地) → デッキ

 再びデッキに手を置いたとき、心臓の鼓動が聞こえた。自分のものでなく、デッキのものでもない力強い音。

 葉沙はその意味を理解していた。引いたのだ。

 デッキ最強のカードを・・・・・・

葉沙「さらに魔法カード〈蘇生魔術〉を発動。墓地に眠る〈スィンセリティ・ガールLV3〉を攻撃表示で特殊召喚」

蘇生魔術通常魔法
1000ポイントのライフを支払う。自分の墓地からモンスター1体を特殊召喚する。

葉沙 LP 1400 → 400

スィンセリティ・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1200 / DEF 1200
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「スィンセリティ・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

〈スィンセリティ・ガールLV3〉(墓地) → フィールド

葉沙「魔法カード〈誠実な呼びかけ〉を発動して、デッキから〈プレズント・ガールLV3〉〈サイレンス・ガールLV3〉を特殊召喚する」

誠実な呼びかけ通常魔法
「スィンセリティ・ガール」と名の付いたカードがフィールド上にある時のみ発動可能。「プレズント・ガールLV3」を1体と「サイレンス・ガールLV3」を1体をデッキから選択して特殊召喚する。

サイレンス・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1400 / DEF 1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。相手フィールド上の表側表示魔法カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

プレズント・ガールLV3魔法使い族☆☆☆
ATK 1300 / DEF 1100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「プレズント・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

葉沙「これで3体の生贄は揃った! 見せてあげるわ・・・あなたが恐怖するその理由を! 神の存在を!!」

ラゴス「神ダト!?」

葉沙「3体のモンスターを生贄に!!」

 全てを覆い尽くしている闇の空間に亀裂が入った。

 そこから覗く何かが、無理やり空間を抉じ開けようとしている。雷雨のような轟音が響き渡り、周囲の空気が振動した。やがて空間も巨大な力に耐えられず、亀裂がどんどん大きくなっていく。

 人が一人通れるくらいの亀裂が出来上がり、そこから何かが地を踏んだ。

 大きさは2メートルくらいだろうか。猫背のせいで思ったより小柄に見える。人に近い顔立ちとは裏腹に闘争本能の塊のような表情で尖った牙をむき出しにしている。意外にも紅に染まる体はスリムで足も細い。しかし、腕だけに関してはそうではなかった。自分の胴体ほどの太さを持つ攻撃的な両腕、拳には金属が直接生えているようにこびりついており、殴るためだけの腕とも呼べた。さらに両肩にはバーニアのようなものがあり、その攻撃的なシルエットが畏怖に感じられる。

葉沙「〈暴の化神−シルヴァリオン〉を召喚!!」

暴の化神−シルヴァリオン幻神獣族☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ATK 4000 / DEF 4000
???

 二足歩行で立ち尽くすシルヴァリオン。

 目の前にいる葉沙をジッと見るつめていると、突然その場に跪いた。

 葉沙は満足そうにそれを見つめたあと、何かを指し示す。

葉沙「そこにいるのが、あなたの敵よ。シルヴァリオン」

 差し向けられた方を向くシルヴァリオン。

 その先にいたのは骨だけの顔を持つ男、ラゴス。

 敵対するべき存在を認識したシルヴァリオンは、自分が倒すべき相手に雄たけびを上げた。

 大地を揺るがすほどの咆哮に、さすがのラゴスも萎縮してしまっているようだ。

ラゴス「有リ得ナイ! コンナバカナコトガ!」

 シルヴァリオンの存在を知っているのか、驚きを隠せないラゴス。

葉沙「今さら知っても無駄なのよ。あなたはただ消えてゆくだけなんだから」

ラゴス「ヌゥ・・・」

葉沙「シルヴァリオン、可愛いスィン達を傷つけたその目障りなモンスターども・・・これ以上、私に見せつづけるつもりなの?」

 葉沙は心底目障りそうに言い放った。

 それに反応するようにシルヴァリオンが体勢を低くして身構える。1本1本指を折り曲げてゆき、拳を作る。金属の擦れる音が響き、背中のバーニアが大気を吸い込んでゆく。大地がその強大な力に耐え切れず、押しつぶされ、割れていく。

 紅き瞳が獲物を映す。

 一瞬だった。

 拳は〈暗黒界の石龍 ドバ〉の顔面を捉えた。黒岩石で覆われた巨体は絶対的な力に耐えられずに砕けていく。〈暗黒界の石龍 ドバ〉が神の力によって消滅したあと、大きな爆発音が遅れて響いた。

 シルヴァリオンが立っていた場所にはクレーターが出来上がっている。

 音速を超える神の一撃は刹那の刻を待たずして敵を打ち砕いてしまった。

 真の強者は場所を選ばず、時を選ばず、敵を選ばず、ただ全てを破壊する。

 その神撃を止めるものはいない。

 神は全能であって、初めて神と呼ばれるのだから・・・

〈暴の化神−シルヴァリオン〉ATK 4000 VS 〈暗黒界の石龍 ドバ〉ATK 3700
撃破!

ラゴス LP 3000 → 2700

 ラゴスが悲鳴を上げた。

 闇がラゴスの身体を食らい、肉を引き千切っていく。

 その姿を見ていた葉沙は、初めて自分がなにをしようとしていたのか気づいた。

 勝利することで起こる悲劇。

 その引き金を引こうとしている自分の存在に。

葉沙(私・・・なにやろうとしていたの?)

 咆哮するシルヴァリオン。

 葉沙は究極の選択を迫られた。

 この神の力を使えば、ラゴスに勝つことができるだろう。だが、その先に待っているのは、一人の人間の死。

 葉沙は恐怖している。

 自分が人を殺さなければならないのかと。

 たかがカードゲームだというのに。

 葉沙は攻撃を中断しようとした。その時である。闇の中から聞こえないはずのシルビアの声が聞こえてきた。幻聴とも考えたが、この状況ではどうでもよいことだ。

 シルビアの甘い声が耳元で囁きかけてくる。

シルビア(さあ、神の拳を使うて勝利を勝ち取ってしまうんどす)

葉沙「でも! それじゃラゴスは死んじゃうってことになるんでしょ?」

シルビア(そうどすな)

 人の死を気にする様子も見せず、シルビアはそう言う。

葉沙「だったらそんなこと・・・できるわけ」

 首を振って否定する葉沙。

シルビア(できへんのやったら、葉沙はここで死んでしまうんよ。その次はうちが殺されるかもしれへん。零蘭はん、マリアはん、明日香ちゃんも・・・)

葉沙「えっ!?」

 シルビアの一言に葉沙は自分の胸を押さえた。

 もし本当にそうなるのならば、絶対に止めなければならない。

シルビア(こんな常識の通じへん相手に勝てる人間なんていませんえ)

葉沙「じゃあ・・・じゃあどうすればいいのよ!?」

シルビア(葉沙がみんなを護るしかありません。神の力を使うて・・・大切な人達を救うんどす)

葉沙「救う・・・?」

シルビア(葉沙しかいませんえ。みんなを護ることができるんは)

葉沙「ま・・・も・・・る・・・?」

シルビア(そうどす。あんな苦しそうにしとる彼も解放してあげないかん。みんなを助けなあかん。すべてを葉沙の力で)

 目の前の存在をもう一度見つめた。

 人でなくなった存在、ラゴス。

 それを救うには・・・

 葉沙の決意が固まった。

 闇のゲームを終わらせる。

 そうすることでみんなを救うことができるのだ。

葉沙「そうだ。私がみんなを護らなきゃいけない。私しかできないんだから・・・だから!!」

 葉沙の意志を感じ取ったのか、シルヴァリオンがその巨大な拳を構えた。

 空間全体が震えだし、虹色に輝くオーラが拳の中心に集束されていく。

シルヴァリオン「ウオォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 そして放たれた。

 すべてを破壊する一撃が。

 暗黒界の魔物が、また1体こなごなにされて消滅していく。

〈暴の化神−シルヴァリオン〉ATK 4000 VS 〈暗黒界の武神 ゴルド〉ATK 3000
撃破!

ラゴス LP 2700 → 1700

〈暴の化神−シルヴァリオン〉ATK 4000 VS 〈暗黒界の軍神 シルバ〉ATK 3000
撃破!

ラゴス LP 1700 → 700

ラゴス「一体何回ノ攻撃ガ可能ダトイウノダ!!」

 膝を地面につけながら、必死に叫ぶラゴス。

葉沙「シルヴァリオンはね、フィールド上に存在するモンスターの数・・・プラス1回分の攻撃が可能なの」

ラゴス「バカナ・・・・・・!?」

葉沙「そう・・・シルヴァリオンは相手プレイヤーに対して確実に直接攻撃ができるモンスターなのよ」

 動けずにいるラゴスを舌なめずりするように眺めていたシルヴァリオンだったが、どうやらそれもあきてしまったようだ。

 そのたびにラゴスが声にならない悲鳴を上げる。だが、それでもシルヴァリオンは止まらない。拳はそのままラゴスに直撃し、〈暗黒界の大地〉ごと吹き飛ばす。

 ラゴスの肉体がどんどん闇に喰らわれていくのが見えた。

 葉沙はその光景に涙した。

 どうしようもなかったのだ。

 自分の力では、これが限界だった。

ラゴス「愛シノ娘・・・」

 闇に食われながらも、ポケットからペンダントを取り出し、必死にそれを握り締ようとするラゴス。

 しかし、その手すら闇に食われてしまった。もう片方の腕で掴もうとするが、それすら叶わず、ペンダントは地に落ちた。

 それでもラゴスは身体を這わせてペンダントに近づこうとする。

 あと・・・一歩・・・

 あと・・・半歩・・・

 そして飲み込まれた。

 跡形もなく。

 あるのは、ラゴスの持ち物であるペンダントだけ。

ラゴス LP 700 → 0

 葉沙は跡形もなくなったラゴスの近くに落ちてあるペンダントを拾い上げた。落ちたときに開いたのだろうか、中にある写真が見える。それはラゴスの娘であろう幼い女の子と綺麗な女性、そして優しそうに微笑む一人の男の姿。

 罪悪感に襲われた。

 心臓を圧迫され、息がうまく吸えない。得体の知れない重圧感が葉沙を締め上げてくる。

 耐えられなかった。

 罪を意識し、それをどうすることもできずに、ただ・・・

葉沙「うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」

 葉沙はそのまま深い意識の底に沈んでいった。


○救護室○


 葉沙が再び目を覚ましたのはベットの上だった。いつもなら起きてから1時間は寝ぼけたままの葉沙だが、

 今回は違っていた。自分の手が血まみれでないことを確認したあと、ゆっくりとケガをしているはずの足に触れてみる。

葉沙(あれ? 痛くない・・・)

 おそるおそる見てみると、包帯はおろかケガ自体がないことに気づいた。

 よくよく考えると、折れているはずの腕も普通に動かしているし、ほかに痛みを感じる場所もない。

葉沙(私、ケガしたはずなのに・・・夢だったってこと?)

 そうだ、あんなことが現実であるはずがない。

 あれは夢だったのだ。

 自分にそう言い聞かせる葉沙。

 だとすれば大会は一体どうなったのか?

 とても気になる。

 一人考え込む葉沙。

シルビア「葉沙・・・!!」

 白いカーテンからシルビアが現れた。

 シルビアは葉沙の姿を見るやいなや、片手に持っていた飲み物を放り出して葉沙に抱きついた。

葉沙「ちょっと、シルビア! いきなり抱きつかないでったら」

零蘭「それは仕方ないことアル。葉沙はデュエルフィールドで倒れていたアルからナ」

 シルビアの後ろから零蘭、マリア、明日香が続いて入ってきた。どうやら葉沙が目を覚ましたことに安堵しているようだ。

 幼い明日香はすでに涙目になっている。

葉沙「なに泣いてんのよ。別に大したことじゃ・・・」

明日香「そんなことないもん。デュエルフィールドが雨雲みたいなのでなんにも見えなくなっちゃってね。やっと見えるようになったと思ったら、今度は葉沙姉が倒れてたんだよ。ボク本当に心配したんだからね」

マリア「会場・・・すごく・・・静かになった」

葉沙「うっ!」

 こう口々に言われると、さすがの葉沙も気まずい。

零蘭「でもデュエルは勝てるから安心するヨロシ」

 零蘭の一言で、葉沙は再び罪悪感に襲われた。あのデュエルが現実だということに気づいてしまったのだ。

 幸い誰にも見られてはいないが、そんなことはどうでもよいことにしか思えない。

 突然の吐気に口を押さえる葉沙。

シルビア「葉沙? どないしたん?」

 周りが心配そうに寄り添ってくる。葉沙は喉まで這い上がってきたものを無理やり押し戻すと、

葉沙「だいじょぶだって。ちょっと気持ち悪くなっただけだし・・・それよりさ」

零蘭「なにアルか?」

葉沙「あのさ・・・ラゴスって・・・」

 途中で言葉を濁らせる葉沙。

シルビア「その人でしたら、葉沙と同じで倒れてはったんを係員さんが運んでいきましたえ」

葉沙「ホントなの!?」

 葉沙はベットから飛び上がらん勢いでシルビアに顔を寄せた。

シルビア「そんなんでうちが葉沙にうそ言うわけありません。それに勝敗がわかったんも、ラゴスはんのデュエルディスクのライフポイントが0になってるんを確認したからどすえ。それがどうかしはったん?」

葉沙「ううん。なんでもない・・・なんでもないから」

 葉沙は小さい声でそう呟いた。


○救護室前(廊下)○


 ラゴスのことで嘘をついたシルビアに驚いていた零蘭はマリアに腕を引かれるようにして救護室から出てきた所だ。

 突然の出来事に意味も分からないまま声を荒げる零蘭。

零蘭「何アルカ!?」

 よほど苛立つのか、周囲の目などおかまいなしである。

 一方、マリアはいつも通りの冷静ぶりであった。

 零蘭の気をなだめるように優しい口調で話しかけるマリア。

マリア「零蘭・・・本当のこと・・・話しそう・・・だったから」

零蘭「どういう意味アル?」

 零蘭は両手を腰に当て、低い声で尋ねた。

マリア「理由はわからない・・・だけど・・・葉沙は・・・あの中で何かが起こったこと・・・知っている・・・」

 どうやらシルビアが葉沙に話したことは真実ではないようだ。

 マリアはそれが重大なことだと考えている。そうでなければ慎重に行動するわけがない。

 零蘭を静止するような行動は・・・

 しかし零蘭はそうではないようだ。

零蘭「だから葉沙はあんなことを口にしたアルヨ。理由を聞かないといけないアル」

マリア「今・・・本当のことを話しても・・・葉沙は傷つくだけ」

零蘭「私達は友達アル! 一人で背負い込むより、話を聞いてみんなで相談に乗るべきヨ!!」

 零蘭は不安でいる友を黙って見ていることなどできないのであろう。

 理由はなんであれ、自分を頼ってほしいと・・・そう思っているのだ。

 だからこそマリアの意見に反対している。

マリア「急ぐべきじゃない・・・葉沙に・・・気持ちの整理の・・・時間を・・・」

零蘭「どうしてアルカ!?」

マリア「葉沙は・・・いつも強気・・・だけど・・・今回は違う」

零蘭「それは・・・」

 俯く零蘭。

マリア「葉沙なら・・・きっと自分で乗り越えられる・・・それだけの・・・力をもってる」

零蘭「シルビアもそう考えてると思てるのカ?」

マリア「それは当然・・・だって・・・私達は・・・葉沙の・・・親友だもの」

 マリアの一言で零蘭は押し黙った。

 正しいと感じたからである。

 零蘭は深く考えることをやめ、葉沙を信じることにした。

 なぜなら葉沙は自分の親友なのだから。



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