準決勝が終了して三日が経過した。普通ならば、次の日には決勝戦を行われるはずなのだが、葉沙の入院の件もあり、二日遅れての決勝戦となったのだ。
専用の控え室では、決戦の時を待つ葉沙。その気合は内面だけでなく、見た目にも如実に現れていた。
いつものようなTシャツとジーンズだけというラフな格好とは違う。”突撃”と刺繍された赤のTシャツと黒のハーフパンツ。シャツの上に防弾チョッキのような分厚いジャケットを羽織り、肘から手首にかけてジャケットと同色のサポータを通している。
両手は無骨そうなグローブを装着され、髪は飾り気のないゴムではなく、赤のリボンを使って丁寧に結い上げられていた。
もちろん、それだけではない。今日の葉沙は普段からは想像もできないものまで身につけている。アクセサリーだ。指輪が通されたプラチナ製のネックレスを腕のサポータに巻きつけ、中指に通されている指輪をつけている。片耳だけに付けられているライオンの顔を模ったピアスが葉沙の新たな決意を表すかのように力強く輝いていた。
アナウンス「琴木葉沙様、まもなく会場入場へのお時間になります。メインゲートまでお越しくださいませ」
アナウンスの声に反応するかのようにデュエルディスクをセットする葉沙。ゆっくりと立ち上がると、頬をパンと叩く。
葉沙「行くわよ・・・スィン」
返ってくるはずの返事を聞けないまま、葉沙は孤独にも戦場へと赴く。
ジャッジ山田「今年もまた数多くのデュエリスト達が涙を飲み、倒れていきました。なぜならば、勝者は一人で十分だからだ! そして数々の試練を乗り越えたデュエリストは残り二人。見事勝ち残り、勝利という名の栄光を手にするのは、どちらのデュエリストなのか! 今ここに二人のデュエリストが戦いの場へと入場する!!」
過剰とも思える演出が、戦いの舞台を彩り、観客を盛り上げてゆく。
両サイドから同時にカラフルな煙幕と爆発音が鳴り響いた。煙幕が薄くなっていくにつれて二人のデュエリストが姿を現す。
一人は琴木葉沙。
一人は千堂大和。
二人はゆっくり歩き出し、デュエルフィールドまで進んでいく。
その表情は険しく、そして気迫に満ち溢れている。
中央まで到達すると、二人は互いを睨みあった。
大和「その服装は戦う意志を示したものか?」
葉沙「あらかじめ言っておくけど、これは喧嘩用の勝負服だから、残念だけど男を落とすってわけじゃないのよ」
大和「構わない」
葉沙「それはそれでムカつくけど・・・まあいいわ」
デュエルディスクが起動した。
葉沙「あの時の言葉・・・忘れたなんて言わせないわよ」
大和「関東大会決勝で雌雄を決しよう。それを望んでいると確かに言った」
葉沙「ならやることは一つよ!」
大和「この時を楽しみにしていた。琴木葉沙・・・お前の全力を見せてみろ!」
始まろうとしていた。
決勝戦という名の激戦のデュエルが・・・
観客席
マリアと明日香の二人は、今日この場に来たことを別の意味で後悔していた。原因はすぐ隣の席を陣取っている零蘭である。
零蘭はスリットの深いチャイナ服を着ていた。それだけならば、多少人目につくだろうが問題はなかった。問題は手に取っているものだ。凶器という物に敏感なこの日本で、こともあろうか二メートル以上はあるであろう青龍刀(レプリカ)に「葉沙必勝!!」と刺繍された旗を巻きつけて豪快に振り回しているのだ。
当然ながら入場口では係員に呼び止められ、半ば強引に会場入りしたあと、今度は警備員に捕獲されそうになった。おかげでマリアはデュエルが始まる前にかなりの体力を消費してしまい、イスから立ち上がれないほど疲れきってしまっている。マリアには辛い現実にしかなりえないのだが、これだけでは終わらない。
マリアの大人しくしてほしいという儚い願いは虚しく、波乱という現象は分という時間すら必要としなかった。やっと休めると思いきや、今度は隣で千堂大和を応援しているチアリーダー率いる応援団と、いがみ合いを始めたのだ。この辺は子供である明日香には面白いイベントなのだろう。
明日香「ボコボコにしちゃえ〜〜♪」
などと火に油を注ぐ発言を連発している。もうツッコむ気力も残っていないマリアは、せめて自分だけは他人に見られますようにと心から願ったのだが・・・
騒ぎ声が聞こえなくなった。
終止符が打たれたのだろうか。
様子を窺う前に零蘭が鼻息を荒くして戻ってきた。
零蘭「何とか、向こう側へ追いやたヨ!」
自信満々で胸を張る零蘭。
マリア「でもさっき・・・警備員の・・・人が・・・」
零蘭「あんな貧弱な体格で、このワタシを止めようなんて、百万年経っても無理ネ」
頭を抱えて困り果てるマリア。
一方、明日香は目を輝かせながら、零蘭に尊敬の眼差しを送っている。
明日香「すごいすごい♪ さっすが零蘭姉」
マリア「褒めちゃ・・・ダメ・・・あと・・・マネも・・・ダメ」
明日香「ボクにあんなのマネできるわけないよ。まだ小学生だし」
零蘭「マリアは常識に囚われすぎアル。もと積極的にいかないとダメアルヨ。ワハハ!!」
明日香「ワッハッハ!!」
胸を張って高笑いする二人を他所に、マリアはどうしてここにシルビアが居ないのだろうかと、不満を募らせた。
豪華なソファーや観戦用に用意された大型のプラズマテレビ、天井で眩い輝きを放つシャンデリアとホテルの個室以上の広さがあるこの場所は、大会スポンサーやVIP専用の特別観客席である。
そこにいたのは二人の少女。
一人は備え付け冷蔵庫から取り出した果物やシャンパンが並べられているテーブルに噛り付いている。
もう一人はジッと立っているだけ。ソファーは空いているが、座る気はないようだ。
口いっぱいに食べ物を頬張りながら、少女は下品にも口を開く。
???「おい、予定じゃお前があそこにいるはずじゃなかったっけか・・・シルビア?」
シルビア「食べながらお話するんは、ご法度どすえ」
心底嫌そうな顔をするシルビア。
しかし、少女にそんなことは関係ないようだ。むしろ、わざとそうしているようにも見える。
???「んなもん俺っちには関係ねぇ」
シャンパンをラッパ飲みして口の中のものを無理矢理に胃に流し込む少女。
???「あと、さりげなく要点をずらそうとするな」
シルビア「仕様書にそんなん書いた覚えがありませんなぁ」
扇子を口元に当てて少女から視線をそらすシルビア。
???「まっシラを切るんなら、それでもいいけどさ・・・支障さえなければな」
シルビア「それに関しては問題ありませんえ。大和はんはお強いどすから、今の葉沙が勝利するんは難しいはずどす」
???「勝つために箍外しするって見込みたててんのか?」
シルビア「そうどす。葉沙は極度の負けず嫌いやし、大和はんをライバル視しとるから、ピンチになれば、きっとあん時の力を求めるはず」
???「目測通りだといいけどな・・・それにしても」
シルビア「どうされたんどす?」
???「これっぽっちの食い物じゃ、俺っちの胃袋は満足しねぇぞ」
テーブルを蹴り上げて、怒りを露わにする少女。呆れた様子のシルビアを他所に少女は熱弁を振るう。
???「頼む前に持ってくるのが、一流のプロってもんだろ・・・ったく、なにがVIP待遇だよ! そこらへんの三流ファミレスだって、コーヒーのお代わりくらい、言わなくたって持ってくるっての!!」
無茶苦茶な理屈を言い出した少女。
そんなことを予想して、タイミングよく料理を持ってくるサービスがどこにあるというのだろうか。大体、ファミレスは店全体がよく見えるからそういうことも可能なのだろうが、個室であるこの場所では監視カメラでも用いないと、そこまでのサービスは不可能だろう。それに勝手に追加料理を持ってこられても、食べたい物がちゃんと運ばれてこないのでは?
などと、シルビアは頭で考えながらも、その思考が意味を成さないものだという結論にいたるまで時間はかからなかった。
この少女には常識という言葉は存在していない。わがままに育てられたというよりは、頑固という言葉が合っているのだが、厄介なことに変わりない。
考えを改めないことなど、すでに承知のシルビアは面倒だと考えながらも、少女をなだめるために話を切り出した。
正直に言ってしまえば、単に一緒に居たくないだけであるが・・・
シルビア「ほな、うちがケーキでも買うてきますから、部屋ん中で大人しゅうしといてくださいね」
どうやら機嫌が戻ったようだ。
少女は目を輝かせながら、よだれを腕で拭う。
???「おう! さっさと買ってこいよ。アイツのデュエルが見たいんならさ」
不敵な笑みを浮かべる少女。
シルビアは気にする様子もなく、黙ったまま、そそくさと外へ出て行った。
葉沙&大和「デュエル!」
1ターン目
葉沙 LP 4000 手札:5 なし なし なし なし 大和 LP 4000 手札:5 葉沙「先攻は私ね。ドロー・・・」
葉沙は自分の手札を確認しながら、溜息を吐く。
葉沙(やっぱり来てくれない・・・でも、それでもデュエルしないと!!)
葉沙「〈ハイ・プリーステス〉を守備表示で召喚」
ハイ・プリーステス 光 魔法使い族 4 ATK 1100 / DEF 800 聞いたことのない呪文を唱え、あらぶる心をしずめてくれる。 葉沙「ターンエンド」
2ターン目
大和「俺のターン、ドロー・・・」
大和のドローする勢いがいつもと違う。
その気迫に気おされてしまう葉沙。
大和「どういうつもりか知らないが、そんな弱気で俺を倒そうなどと、よもや考えているわけじゃないだろうな」
葉沙「っ!」
大和の一言に思わず動揺する葉沙。
大和「俺は〈ヒナリュウの卵〉を攻撃表示で召喚」
ヒナリュウの卵 光 ドラゴン族 1 ATK 0 / DEF 500 このカードがモンスターの生贄として墓地に送られた場合、ターン終了時にデッキからカードを1枚ドローする。 大和「さらに〈ヒナリュウの卵〉を生贄に〈スィール・ドラゴン〉を特殊召喚する!」
スィール・ドラゴン 光 ドラゴン族 6 ATK 2300 / DEF 2000 自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。 大和「壁など無意味だということを教えてやる! いけ! スィール・ショット!!」
〈スィール・ドラゴン〉ATK 2300 VS 〈ハイ・プリーステス〉DEF 800
撃破!葉沙「うわっ!?」
派手な爆発が起こる。
咄嗟に腕で顔をかばう葉沙。
大和はその表情に苛立ちを表しながら、言葉を吐き捨てる。
大和「なぜ全力でデュエルしようとしない?」
葉沙「べっつに・・・私にだって考えくらいあるのよ。それともなに? 私は考えなしのバカだって言いたいわけ?」
顔を背けながら言葉だけで反論する葉沙。
言えるわけがない。
デュエルの精霊であるスィンと話ができないからなどという・・・常人にはわかりえない言い訳は。
大和「浅はかな知恵を搾り出した所で、実力以上の力は出せはしない」
葉沙「浅はかですって!」
大和の侮蔑に反応してしまう葉沙。
しかし、大和はそれすら冷ややかな瞳で見つめている。
大和「ターン終了時に〈ヒナリュウの卵〉の効果によりカードを1枚ドローする」
3ターン目
葉沙 LP 4000 手札:5 なし なし スィール・ドラゴン〈表攻撃〉 なし 大和 LP 4000 手札:5 葉沙「私のターン、ドロー!!」
弱気の自分を奮い立たせるため、大声でドロー宣言をする葉沙。
葉沙(大和が1枚もリバースカードをセットしないなんて・・・本気で戦うつもりがないってことなの?)
大和のフィールドを見つめながら、葉沙は沈黙した。
葉沙「勝手に全力じゃないって判断して・・・ふざけんじゃないわよ! 戦闘で破壊された〈ハイ・プリーステス〉をゲームから除外して」
ハイ・プリーステス(墓地) → 除外
葉沙「〈覚醒のハイ・プリーステス〉を特殊召喚するわ!!」
現れたのは十字架の杖を持つ魔道士。
出で立ちは教会のシスターのような服装で、質素な印象を抱かせる。
葉沙「カウンター罠をセットしなかったこと、後悔させてあげる! 〈覚醒のハイ・プリーステス〉の攻撃! シャイン・シューター!!」
〈覚醒のハイ・プリーステス〉が杖を構えた。杖の周りに6つの魔力弾ができる。そのまま杖を〈スィール・ドラゴン〉に向かって振りかざす。魔力弾は振りかざされた方向に一直線で飛んでいく。
魔力弾に貫かれた〈スィール・ドラゴン〉は咆哮とともに倒れる。
〈覚醒のハイ・プリーステス〉ATK 2500 VS 〈スィール・ドラゴン〉ATK 2300
撃破!大和 LP 4000 → 3800
葉沙「〈覚醒のハイ・プリーステス〉の効果発動! このカードが戦闘で破壊したモンスターの攻撃力の数値だけ、ライフポイントを回復することができるわ」
覚醒のハイ・プリーステス 光 魔法使い族 7 ATK 2500 / DEF 2400 「ハイ・プリーステス」
自分の墓地に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードが戦闘でモンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分の数値だけライフポイントを回復する。葉沙「〈スィール・ドラゴン〉の攻撃力は2300。よって私のライフポイントを2300回復させるわよ」
大和 LP 4000 → 6300
葉沙「カードを3枚セットしてターン終了よ」
4ターン目
大和「腹立たしいな」
葉沙「自分の甘さに?」
〈スール・ドラゴン〉を撃破したことで若干のゆとりを得た葉沙が挑発的に聞き返した。
仕方のないことである。
リバースカードもセットせずにターンを終了して無事に済むほどデュエルはあまいものではない。
しかし、大和の苛立ちはそういうものではなかった。
大和「この程度のデュエリストに期待をしていたことにだ」
葉沙「なっ!」
大和「カードを伏せない程度のことで見下した、見下されたなどと・・・くだらない!!」
葉沙「反逆の大和がカードをセットしないなんて、誰が見たって・・・」
葉沙の声を遮りながら、大和が叫ぶ。
大和「ならば見せてやる! お前がどれだけの壁に遮られているかということを! 魔法カード〈ドラゴン族の意地〉を発動!」
ドラゴン族の意地 通常魔法 自分の手札にある任意のドラゴン族モンスターを墓地に送る。墓地に送った枚数分のカードをドローする。 大和「俺はすべての手札を墓地に送り」
葉沙「すべてって・・・まさか!?」
大和は手札を葉沙に向ける。
スィール・ドラゴン 光 ドラゴン族 6 ATK 2300 / DEF 2000 自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。
スィール・ドラゴン 光 ドラゴン族 6 ATK 2300 / DEF 2000 自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げることで特殊召喚することができる。
神竜 ラグナロク 光 ドラゴン族 4 ATK 1500 / DEF 1000 神の使いと言い伝えられている伝説の竜。その怒りに触れた時、世界は海に沈むと言われている。
レアメタル・ドラゴン 闇 ドラゴン族 4 ATK 2400 / DEF 1200 このカードは通常召喚できない。
ミラージュ・ドラゴン 光 ドラゴン族 4 ATK 1600 / DEF 600 このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手はバトルフェイズに罠カードを発動する事が出来ない。 その中にはカウンター罠はおろか、魔法カードすら存在していなかった。
大和「そうだ。俺の手札に伏せるべきカードはなかった。お前は攻撃する唯一のターンを不意にした! ドロー!!」
豪快にデッキからカードをドローする大和。
強い光を帯びた黒瞳が戦慄を呼ぶ。
大和「さらに〈覚醒のハイ・プリーステス〉に倒された〈スィール・ドラゴン〉と〈ドラゴン族の意地〉の効果で墓地に送った2枚の〈スィール・ドラゴン〉をゲームから除外し、〈龍の鏡〉を発動! 融合デッキから〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を特殊召喚させてもらう!!」
スィール・ドラゴン×3(墓地) → 除外
龍の鏡 通常魔法 自分フィールド上または墓地から、融合モンスターによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚として扱う) 葉沙「〈ラスト・スィール・ドラゴン〉!?」
ラスト・スィール・ドラゴン 光 ドラゴン族 10 ATK 4200 / DEF 4000 「スィール・ドラゴン」+「スィール・ドラゴン」+「スィール・ドラゴン」
このカードが攻撃を行った場合、ダメージステップ終了時にフィールド上のカード1枚を破壊する。シルビア戦から再びその巨躯を現した〈ラスト・スィール・ドラゴン〉。
その姿に驚きを隠せない葉沙。
それもそのはず。
葉沙はその存在を知らなかったからだ。テレビ放送はされていたが、そのときの葉沙にはデュエルを見る力すらなかった。
その後もデッキを調節だけですべての時間を費やしてしまっている。〈創の目の反逆龍〉を倒すことだけに集中していたのである。
大和「シルビアとのデュエルを見ていなかったようだな。相手を研究することもせず、何が考えがあると言う! 見下しているのは貴様だ! 琴木葉沙!!」
大和の気合に押される葉沙。
ビリビリとした脅威の覇気を感じながら、葉沙は再確認した。
大和には戦力温存などという小賢しい手段は意味がないことを・・・
つねに全力でなければならないということを・・・
大和「このまま仕掛ける! 覚悟しろ!」
〈ラスト・スィール・ドラゴン〉が地鳴りを上げて突撃していく。
大和「ソニック・スィール・ファング!!」
〈ラスト・スィール・ドラゴン〉ATK 4200 VS 〈覚醒のハイ・プリーステス〉ATK 2500
撃破!葉沙「うわあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
激しい突風が葉沙を襲う。
葉沙 LP 6300 → 4600
大和「〈ラスト・スィール・ドラゴン〉の効果発動! 〈ラスト・スィール・ドラゴン〉が戦闘を行った場合、フィールド上のカード1枚を破壊する!!」
葉沙「なんですって!?」
大和「カードを何枚伏せたところで結果は変わらない! ブレイク・ファング!!」
葉沙「そんなことはさせないわ! リバースカードオープン! 〈ゴブリンのやりくり上手〉!!」
ゴブリンのやりくり上手 通常罠 自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚をデッキからドローし、手札からカードを1枚選択してデッキの一番下に戻す。 大和「ドローソースを発動させた程度では!」
葉沙「まだよ。さらにリバースカードオープン〈ゴブリンのやりくり上手〉!」
大和「2枚の〈ゴブリンのやりくり上手〉だと!!」
葉沙「最後の仕上げはこれよ。〈非常食〉!」
非常食 速攻魔法 このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。 葉沙「〈非常食〉のコストは先にオープンした2枚の〈ゴブリンのやりくり上手〉。まずこれでライフを2000ポイント回復させてもらうわ」
ゴブリンのやりくり上手×2(場) → 墓地
葉沙 LP 4600 → 6600
葉沙「さらに2枚の〈ゴブリンのやりくり上手〉の効果が発動されるわ。〈非常食〉の効果で墓地に送ったけど、効果を無効化したわけじゃないから、通常通りに効果が成立するのよ」
大和「〈ゴブリンのやりくり上手〉の効果を有効活用というわけか・・・・・・」
葉沙「その通りよ。〈ゴブリンのやりくり上手〉の効果は・・・。だから〈非常食〉で先に送られた〈ゴブリンのやりくり上手〉もカウントされるってわけ」
デッキからドローしながら、葉沙は言う。
葉沙「まずカードを3枚ドローして、手札からカードを1枚デッキに戻す」
カードを戻した後、さらにデッキからカードをドローする葉沙。
葉沙「そしてもう一度」
再びデッキにカードを戻す葉沙。
これで手札は6枚となった。
かなりのアドバンテージを得ることに成功した葉沙。
ジャッジ山田の地味な実況にも熱が入る。
ジャッジ山田「見事なドローコンボだ! 今回の琴木葉沙はいつもとは違う戦略的なデュエルを披露してきている! 天堂大和がこれをどう捌いていくのか! 見ごたえのあるデュエルはまだまだ続きそうです!!」
観客は沸きあがっている中、葉沙は目を凝らして手札を確認していた。
葉沙(これだけドローしてるっていうのに、まだ引けない・・・本当に私のこと見捨てたの・・・スィン?)
大和「俺は魔法カード<強欲な壺>を発動! デッキからカードを2枚ドローしたあと」
強欲な壺 通常魔法 自分のデッキからカードを2枚ドローする。 大和「カードを3枚セットしてターン終了する」
葉沙は大量の手札の中にスィンがいないことに絶望を感じた。
今は6枚の手札よりも、たった一人のスィンを望んでいる。
つねにそばにいて、ともに戦ってくれて、いつも笑顔を見せてくれる大切なスィン。
葉沙にとって、もっとも信頼できる存在。
しかし、今日は隣に居てくれない。
眼前に立ちふさがるのは宿敵である大和。
一人では遠すぎて・・・・・・
一人では高すぎて・・・・・・
少女は孤独のまま、過酷な試練と対峙する。