第20話 嵐の激戦区!!


○デュエルフィールド○


5ターン目

葉沙LP 6600手札:6枚
無し
無し
ラスト・スィール・ドラゴン〈表攻撃〉
3枚
大和LP 3800手札:2

 会場中のほとんどの人間は、このデュエルは均衡しているという錯覚に陥っていた。

 しかし、実際は違う。

 流れは完全に大和のものであり、葉沙が負けずにいられるのはライフポイントを回復し続けた結果である。〈ラスト・スィール・ドラゴン〉の攻撃力で押されてしまえば、ライフポイントなどすぐに無くなってしまうだろう。

 そしてフィールドに伏せられた3枚のカード。おそらくカウンター罠であろうリバースカードの存在は葉沙に圧迫感を与えてくる。大和はカウンター罠で相手の動きを封じることが得意であり、それを突破して〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を破壊するのは容易ではない。葉沙は危機的状況にプレッシャーを感じながら、デッキからカードをドローしようとした。

 その瞬間!!

 突然、大きな鼓動を感じた。

 葉沙はこの感覚を前にも体験したことがある。

 それは次元すらも破壊しつくすほどの強大な力を所持してしまった狂気たる存在を知ってしまった時。

葉沙(まさか・・・でも、そんなことって)

 葉沙には裏面のカード名を当てるなんて技能は持ち合わせていない。もとより、ルールを逸脱するようなこともしない。

 葉沙は反則という言葉が大嫌いで、正々堂々と勝負して勝つことに意味があるとつねに考えているからだ。

 葉沙は浮かんだカードを頭の中で振り払う。

葉沙「私のターン・・・ドロー」

 力なくカードを引いたあと、おそるおそる確認する。

 そこにいたのは・・・・・・

暴の化神―シルヴァリオン幻獣神族10
ATK 4000 / DEF 4000
???

 葉沙は動かなかった。

 いや、動けなかったのだ。

 まさかと思っていたカードが目の前に現れた。そして手札には〈シルヴァリオン〉を呼ぶために必要なカードが揃っている。今だに記されているテキストは読めないが、その強大な能力を葉沙は無意識に理解していた。〈シルヴァリオン〉の能力を使えば、〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を倒すことなど赤子を捻り潰すと同義である。

 しかし・・・・・・

葉沙(確かに大和には勝ちたい。だけど・・・もしあの時と同じことになったら)

 葉沙は〈シルヴァリオン〉を使うことに恐怖した。

 理由は明確だ。

 ラゴスという一人の存在を死に到らしめた畏怖べきカード。

 そしてそれを命じたのは琴木葉沙自身。

 もし召喚してしまえば、あの出来事が再来してしまうのではないか?

 結果として大和が死んでしまうことになるのでは?

 そこまでして勝利を求めるのか?

 なにもぜずに敗北を認めるのか?

 葉沙は迷わなかった。

葉沙「私が待っているのは、あんたじゃない! 私が・・・私が待っているのは・・・スィンなの!!」


○同・観客席○


 会場の片隅の席に一人の少女が座っていた。黒のTシャツにジーンズというあまり目立たない格好だった。が、目深に被った帽子とサングラスが怪しさを感じさせている。

 携帯電話の着信音が突然鳴り出した。

 周りの観客に睨まれた少女は、申し訳なさそうに頭を下げると、通路のほうへと歩き出す。

 画面に出ている名前を確認して、着信ボタンを押した。

??(おいコラッ! 銀髪!! お前まだ時間かかってんのかよ!)

 そう・・・・・・

 彼女の正体は白鳳院・シルビア・ランフォードであった。

 つい先ほど、ケーキを買いに行くと言っていたばかりだが、どうしてここにいるのかは不明だ。

シルビア「ほんま申し訳ありません。思うた以上に人気があるみたいで、やっと真ん中ぐらいまで進んだところなんどす」

??(列なんか無視して買ってこいよ! どうせそいつら、クズなんだしさ)

シルビア「そういうわけにもいきません。それくらいのルールは守らなあかんどすから」

??(チッ! そういう時だけ律儀になりやがって・・・もうケーキはいい)

シルビア「そうどすか・・・せやけど、折角やし、うちはこのまま買うてから帰りますえ」

??(勝手にしてろ。デュエルが終わる前までに帰って来れるといいな!!)

 突然、電話を切られた。

 どうやら、ご立腹らしい。

 シルビアは半分呆れながらも、携帯電話をポケットの中にねじ込んだ。

 彼女のためにケーキを買いに行く気などさらさらない。ただ一緒に居たくないから、理由をつけて外に出てきたのだ。

 再び観客席に戻ろうとしたシルビアだったが、急に足を止めた。

 身に着けていた指輪が以前の時と同様に輝きだしたのだ。

 シルビアは指輪を見つめながら、心を躍らせた。彼女の目的通りの結果がこの場所で今まさに示されているのだ。

シルビア(やっぱり、うちの葉沙は最高どすなぁ・・・もっと、もっと輝いておくれやす。それが葉沙の力の証明になりますから)

 シルビアは内から湧き出る喜びを押さえつけながら、会場へと向かった。


○デュエルフィールド○


 鼓動がさらに高鳴っていくのを感じる。

 葉沙は手札を再確認したあと、この状況をどうにかすることができるカードを1枚だけ発見できた。

 大和を倒すのではなく、スィンを呼ぶためのカードを。

葉沙(お願い!!)

 純粋に願った。

 今までの短い人生の中で、ここまで何かを願ったことはない。

 そして彼女はまだ気づいていない。

 強い想いは時に奇跡を起こすことができることを。

 頭の中にカードの絵柄が次々と浮かんでくる。その中を掻い潜り、奥へと進む。

 そして見つけ出した。

 葉沙が求め続けたものを。

葉沙「魔法カード〈リロード〉発動! 手札を6枚をデッキに戻してシャッフル」

リロード速攻魔法
自分の手札をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。

葉沙「ドロー」

 確かな手応えがある。

 きっといる。

 小さな友人である存在が。

葉沙「・・・スィン」

スィン(葉沙・・・)

 何日振りだろうか。

 葉沙の前に再びその姿を現したスィン。

 スィンは俯いたまま、葉沙の方を向こうとはしない。

 曖昧ながら、葉沙はその理由を承知していた。

 ゆえに責め立てるようなこともする気はない。

 いつもの通りに接すればいいだけなのだ。

葉沙「寝坊のしすぎよ」

スィン(ごめんなさい、葉沙)

葉沙「どうして謝るのよ」

スィン(葉沙が呼んでいることを知っていたのに、私は・・・)

 無視した。

 そう言いたかったのだろう。

 しかし、それを言ってはいけないと・・・もしかしたら、それを理由に拒絶されてしまったらと怯えたのだ。

葉沙「・・・・・・」

スィン(怖かったんです。葉沙が)

葉沙「私が怖い?」

 自分がスィンにとって恐ろしい存在になっていたなんて考えもしなかったのだろう。

 訳も分からず、眉間にしわを寄せる葉沙。

スィン(あの闇のデュエルのとき、葉沙が別人に見えました。〈シルヴァリオン〉に命令しているときの葉沙は・・・とても怖かった・・・怖かったんです)

 スィンは続けて言った。

スィン(さっきも同じような感じがしました)

 本人は意識していないのだろうが、スィンにとっては重要なことらしい。身体を小刻みに震わせている。

 葉沙はそんなスィンに向かって(正式にはスィンが描かれているカードにだが)優しく小突いた。

 キョトンとした表情のスィン。

葉沙「あんた・・・バカ?」

スィン(えっ?)

葉沙「私は私よ。誰がなんと言おうとね」

スィン(葉沙)

葉沙「それに怖いんなら、はっきり言いなさいよね。私は人の気持ちなんか、伝えてくれないとわかんないんだから。それとも私が信用できない?」

スィン(そんなことありません)

 必死に首を振るスィン。

葉沙「だったら二度とあんなマネしないこと? いい?」

スィン(葉沙は私を許してくれるんですか・・・あんなに・・・私は)

葉沙「あんたねぇ、ちゃんと人の話を聞いときなさい。私は怒ったなんて一言も発してないわよ」

スィン(葉沙・・・)

葉沙「そんなことより今は反撃! 大和に散々なこと言われたんだからね。遅れた分、きっちり活躍しなさいよ」

スィン(はい、葉沙)

 調子を取り戻した葉沙。

 大和もそれに感づいたようだ。口元だけで笑みを浮かべたあと、視線を鋭いものにする。

大和「どうやら吹っ切れたようだな」

葉沙「おかげさまでね。ついでにすっごい待たせて悪かったわ。それじゃ、ここからが私の本領発揮よ!!」

大和「来い! 琴木葉沙!!」

 大和の表情がさらに険しいものになった。

 琴木葉沙というデュエリストの才能を見抜いた大和。彼は今まさに成長を続ける好敵手に恐怖を感じているのだろうか?それとも喜んでいるのだろうか?

 そんなことなど全く気づかずに、葉沙は勢いに乗って動き出した。

葉沙「私は〈スィンセリティ・ガールLV3〉を攻撃表示で召喚!! 頼むわよ、スィン」

スィン(はい、葉沙!)

スィンセリティ・ガールLV3魔法使い族3
ATK 1200 / DEF 1200
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「スィンセリティ・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

葉沙「そして魔法カード〈誠実な呼びかけ〉を発動! デッキで私とスィンを待ってる〈プレズント・ガールLV3〉と〈サイレンス・ガールLV3〉を特殊召喚するわ」

誠実な呼びかけ通常魔法
「スィンセリティ・ガール」と名の付いたカードがフィールド上に存在する時のみ発動可能。デッキから「プレズント・ガールLV3」と「サイレンス・ガールLV3」を1体ずつ選択しフィールド上に特殊召喚する。

プレズント・ガールLV3魔法使い族3
ATK 1300 / DEF 1100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「プレズント・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

サイレンス・ガールLV3魔法使い族3
ATK 1400 / DEF 1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。相手フィールド上の表側表示魔法カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

葉沙「特殊召喚の成功により〈スィンセリティ・ガールLV3〉の効果を発動させるわ! レベルアップよ、スィン」

 葉沙に向かって頷くスィン。

葉沙「〈スィンセリティ・ガールLV5〉を特殊召喚!!」

スィンセリティ・ガールLV5魔法使い族5
ATK 2300 / DEF 2300
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「スィンセリティ・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。フィールド上に存在するカード1枚をゲームから除外する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

 成長を遂げたスィンが姿を現した。

 大和は関心しながらも、再び眼前に現れたモンスターに敵意を向ける。

大和「なるほどな。〈スィンセリティ・ガールLV5〉の効果で〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を除外する魂胆だろうが・・・」

 大和の言葉を遮りながら、葉沙は問いただした。

葉沙「本気の私が、まさかこんだけで止まるとでも思ってるわけ?」

大和「そうだな。お前ほどのデュエリストがこの程度で止まる気などないはずだ」

葉沙「その通り! 〈スィンセリティ・ガールLV5〉の特殊召喚成功により、〈プレズント・ガールLV3〉と〈サイレンス・ガールLV3〉の効果発動! レベルアップよ」

 レベルアップした二人の姉がスィンの隣に姿を見せた。

葉沙「〈プレズント・ガールLV5〉、そして〈サイレンス・ガールLV5〉を特殊召喚!!」

プレズント・ガールLV5魔法使い族5
ATK 2400 / DEF 2200
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「プレズント・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。 指定した相手モンスターと同じレベル・種族、半分の攻撃力・守備力を持つ「コピートークン」を1体特殊召喚する。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

サイレンス・ガールLV5魔法使い族5
ATK 2500 / DEF 2100
このカードがフィールド上に表側表示で存在し、このカードを除くモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを墓地に送る事で「サイレンス・ガールLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

大和「さらにレベルを上げるだと! 琴木葉沙・・・まさか!!」

 ここまでの動きでようやく大和が葉沙の意図に気づいた。

 条件召喚が特殊召喚というレベルモンスターの脅威。自分達の召喚条件を満たすことで他のモンスターの召喚条件をクリアするという、三人のレベルガールが織り成す高速召喚術に。

葉沙「そのまさかよ、二人のガールの特殊召喚の成功により〈スィンセリティ・ガールLV5〉の特殊効果発動! 最上級の魔術師を呼ばせてもらうわ!!」

 葉沙は一瞬にして流れを自分のものにしてしまった。こうなってしまっては、もう誰もこの勢いを止めることなどできはしない。

葉沙「〈スィンセリティ・ガールLV7〉を特殊召喚!!」

スィンセリティ・ガールLV7魔法使い族7
ATK 2600 / DEF 2600
このカードは通常召喚できない。「スィンセリティ・ガール LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。フィールド上に存在するカード1枚をゲームから除外する。そのカードがモンスターだった場合、除外したモンスターの元々の攻撃力の数値をダメージとして相手プレイヤーに与える。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

葉沙「まだまだ止まらないわよ! 〈スィンセリティ・ガールLV7〉の特殊召喚成功により、〈プレズント・ガールLV5〉〈サイレンス・ガールLV5〉も最上級魔道士になるんだから」

大和「特殊召喚のループ! それがガールマジシャンの真の強さというわけか」

葉沙「今さら気づいても遅いわよ!〈プレズント・ガールLV7〉そして〈サイレンス・ガールLV7〉を特殊召喚!!」

プレズント・ガールLV7魔法使い族7
ATK 2700 / DEF 2500
このカードは通常召喚できない。「プレズント・ガールLV5」の効果でのみ特殊召喚できる。相手フィールド上の表側表示モンスターを1体指定する。指定した相手モンスターと同じレベル・属性・種族・攻撃力・守備力・効果を持つ「コピートークン」を1体特殊召喚することができる。この効果は1ターンに一度メインフェイズにしか使用できない。

サイレンス・ガールLV7魔法使い族7
ATK 2800 / DEF 2400
このカードは通常召喚できない。「サイレンス・ガールLV5」の効果でのみ特殊召喚できる。手札を1枚捨てることで、自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。
●フィールド上の魔法または罠カード2枚まで破壊する事ができる。

ジャッジ山田「おお〜と! これは凄い! 凄すぎます!! 一瞬にして上級レベルモンスターを3体もフィールドに呼び込んでしまったぞ!!」

 フィールドに現れた3人の上級魔道士達は巨大な三つ首龍に向かって杖を構えた。デュエルの流れは完全に葉沙の味方である。このままの勢いでいけば、このターン中にも決着がつくかもしれないだろう。

 しかし、大和は臆することはなかった。むしろ笑みを浮かべ、喜びすら感じているようだ。

大和「俺の読みは正しかったようだな」

葉沙「間違いだったんなんじゃないの? 自分を負かすデュエリストを見つけてきた上、さらに焚き付けちゃって」

大和「そうでもない。俺がさらに強くなるためには強豪が必要だからな」

葉沙「踏み台ってわけ・・・言ってくれるじゃない」

 少しの沈黙。

 これが戦闘の合図。

 大和が宣戦布告する。

大和「侮辱と感じたならば」

葉沙「デュエルで証明してみせろ・・・でしょ?」

大和「そうだ!!」

葉沙「私の性格知ってるでしょ? 見下されるのが大嫌いってね!!」

 身構える葉沙と大和。

葉沙「仕掛けるわよ! 手札を1枚捨てて〈サイレンス・ガールLV7〉の特殊効果を発動! そこの2枚のリバースカードを破壊させてもらうわよ。ディスティニー・ディクレアス・ハイ!!」

 最初に動いたのは葉沙の〈サイレンス・ガールLV7〉。まずは危険なリバースカードを破壊しようという魂胆のようだ。

 当然、大和もそれに対抗する。

大和「リバースカード〈トラップバースト〉発動!! 手札を1枚を捨てて〈サイレンス・ガールLV7〉の効果を無効化し、攻撃力の1番高い〈サイレンス・ガールLV7〉を破壊する」

トラップバーストカウンター罠
手札を1枚捨てる。相手がコントロールする「フィールド上の魔法・罠カードを破壊する」効果を持つモンスターカードの発動と効果を無効にする。その後、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える事ができる。

サイレンス・ガールLV7(フィールド) → 墓地

葉沙 LP 6600 → 3700

 あっけなく破壊されてしまった〈サイレンス・ガールLV7〉だったが、それを無駄にするほど、葉沙も甘くはない。すぐに次の手に移る。

葉沙「まだよ!〈プレズント・ガールLV7〉の効果で〈ラスト・スィール・ドラゴン〉のコピートークンを特殊召喚させてもらうわ! ハイリバティ・クリエイション!!」

大和「そうはさせない! カウンター罠〈天罰〉!! 今度は〈プレズント・ガールLV7〉を破壊させてもらう!!」

天罰カウンター罠
手札を1枚捨てる。効果モンスターが発動した効果を無効にし、そのモンスターを破壊する。

プレズント・ガールLV7(フィールド) → 墓地

葉沙「さすが大和ね・・・だけど、それでも下がらない!〈スィンセリティ・ガールLV7〉の効果発動! スィン、お願いね」

スィン(はい。葉沙と一緒に戦うために)

葉沙「ディメンジョン・ディバイデッド・ハイ!!」

 次々とカウンターされているにもかかわらず、葉沙の猛攻は止まることを知らない。ここまでされれば、どんなデュエリストでも多少は気おされてしまうものだが、葉沙は全く動じていない。

 大和の額に一滴の汗が浮かんだ。

大和「恐ろしいデュエリストだな・・・だが、こちらも退くわけにはいかない! リバースカード〈次元封鎖〉発動! ゲーム除外するカードの効果を無効化する罠カードだ」

次元封鎖カウンター罠
相手がコントロールする「ゲーム除外する」効果を持つカードの発動と効果を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。

大和「〈次元封鎖〉の効果により、カードを1枚ドローさせてもらう」

 デッキからカードを引き抜く大和。

 そして言い放った。

大和「これで終わりだな。次のターンに〈ラスト・スィール・ドラゴン〉が〈スィンセリティ・ガールLV7〉を倒せば、勝負は決したも同じだ」

 確かに大和はガール達の猛攻を凌ぎきった。いくら〈スィンセリティ・ガールLV7〉が強力なモンスターといえども、〈ラスト・スィール・ドラゴン〉の攻撃力を上回ることは容易ではない。

 そして手札にモンスターやフィールドを破壊するカードがないことも、うすうすだが気づいていた。もし持っていたとするならば、モンスターの効果を発動させる前に使用していたはずである。手札のカードだけでカウンターを使わせきることができれば、3体のモンスターの能力で勝利することが可能だったはずだからだ。

 それがないということは、これ以上打つ手がないことの証明でもある。

 息を吐きながら一瞬だけ肩の力を抜いてしまった大和。

 反逆の大和が初めて見せた小さな油断。

葉沙「珍しいじゃない。油断するなんて」

 自信ありげに言い放つ葉沙。

大和「どういう意味だ?」

葉沙「私はまだターン終了どころか、バトルフェイズも行ってないんだけど?」

大和「無意味だな。〈スィンセリティ・ガールLV7〉の攻撃力では〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を脅かすことなどできない」

葉沙「誰も戦うなんて言ってないでしょ」

ジャッジ山田「意味深な発言をした琴木葉沙! まだ秘策があるとでも言うのか!?」

 この状況を打開する手段があるとでもいうのか?

 期待と疑問に入り混じる会場の観客やジャッジ山田。

 大和は考えこみながら、葉沙を見る。

 仮に秘策があったとしても、負けるわけにはいかない。

 葉沙に向かって大和が咆える!!

大和「この状況を超えることができるのならば、やってみせろ! 琴木葉沙!!」

 大和の威嚇を掻い潜りながら、葉沙は手札から魔法カードを発動させた。

葉沙「やってやろうじゃない! 魔法カード〈レベルダウン!?〉発動!」

レベルダウン!?速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を選択して発動する。選択したカードを元々の持ち主のデッキに戻し、持ち主の墓地からそのカードより「LV」の低い同名モンスター1体を召喚条件を無視して持ち主のフィールド上に特殊召喚する。

大和「レベル・・・ダウン!?」

葉沙「〈レベルダウン!?〉・・・効果は名前そのまま。フィールドに存在するレベルモンスター1体のレベルを下げる魔法カードよ。まっ対象は誰かくらいわかると思うけどね」

大和「くっ!」

 大和は戦慄した。

 強力ゆえ1ターンに一度しか使えない〈スィンセリティ・ガール〉のゲーム除外能力。だが、レベルを下げることで再び使用可能にしてしまうという大胆不敵なコンボ。

 それをこの土壇場でやってのけた葉沙の才能に。

葉沙「〈レベルダウン!?〉の効果で〈スィンセリティ・ガールLV7〉はレベルダウンするわ」

スィンセリティ・ガールLV7(フィールド) → デッキ

スィンセリティ・ガールLV5(墓地) → フィールド

葉沙「リバースカードはないし、これでもまだカウンターできるかしら?」

大和「そのためだけにだと・・・」

葉沙「そうよ! 決まってるじゃない!!」

 自信満々に答える葉沙。

 大和も半分呆れながら苦笑いする。

大和「耐え抜いたつもりだったのだがな・・・相変わらずの無謀振りだ」

葉沙「当然でしょ! それが私だってあんたも言ったわ!」

大和「そうだったな」

葉沙「スィン!!」

スィン(いきます!!)

葉沙&スィン「ディメンジョン・ディバイデッド!!」

 次元の穴が〈ラスト・スィール・ドラゴン〉の巨体を引きずり込んでゆく。地面にへばりついて耐えようとする〈ラスト・スィール・ドラゴン〉だったが、それは無理だった。徐々に大きくなっていく次元の穴は〈ラスト・スィール・ドラゴン〉の倍以上の大きさまでになっている。

 最後の抵抗も虚しく〈ラスト・スィール・ドラゴン〉は次元の穴に吸い込まれてしまった。

葉沙「これでフィールドがガラ空き。〈スィンセリティ・ガールLV5〉の攻撃よ!!」

大和 LP 3800 → 1500

大和「ッ!!」

葉沙「リバースカードを1枚セット。私はこれでターン終了するわ」

6ターン目

大和「ドロー!!」

 ドローしたカードを見て頷く大和。

葉沙「嫌な感じね、それ」

大和「その勘は間違っていないぞ、琴木葉沙」

葉沙「外れて欲しいわよ・・・今日だけは」

大和「ならば今日という日を後悔するといい。魔法カード〈命削りの宝札〉を発動! 手札が五枚になるまでデッキからカードをドローする」

命削りの宝札通常魔法
自分の手札が5枚になるようにデッキからカードをドローする。このカードが発動した5ターン後、すべての手札を墓地に捨てる。

葉沙「前にも似たような状況になったことがあったっけ?」

 今度は葉沙が苦笑いしながら、大和に問い尋ねた。

大和「確かにあった。そしてこのあとに続く未来も同じだ! 〈命削りの宝札〉の発動にチェーンさせ、魔法カード〈異次元からの埋葬〉を発動させる。この効果でゲームから除外されている3体の〈スィール・ドラゴン〉を墓地に戻させてもらう」

異次元からの埋葬速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、そのカードを墓地に戻す。

スィール・ドラゴン(除外) → 墓地

葉沙(もう一度〈ラスト・スィール・ドラゴン〉を召喚する気・・・ううん、きっと違う)

大和「チェーンさせたことにより〈命削りの宝札〉の効果は手札が0枚の状態で発動される。俺はデッキからカードを5枚ドローする」

葉沙「ここまで簡単に手札補充しちゃうなんて・・・さすがね」

大和「これもシルビアのおかげで動けたと言っても過言ではない」

葉沙「シルビアの・・・?」

大和「そうだ。準決勝では手痛い目に遭わされてな・・・それを教訓にした」

 大和にしては珍しい一言だった。葉沙は意地悪そうに笑うと、

葉沙「さしずめ〈創の目の反逆龍〉をゲームから除外されたって所でしょ?」

 と言ってのけた。

 しかし、大和も当てられたことで動揺するようなデュエリストではない。

大和「よくわかったな」

葉沙「シルビアの考えそうなことくらいわかるわよ。私はシルビアの親友なんだから」

大和「そうだったな・・・しかし、それを知った所で止めることはできない」

 確かにその通りだ。

 葉沙にはシルビアのようなデュエルはできない。元々の性格が違う上に、基本戦術に大きな違いがあるからだ。

葉沙「つっ!」

 思わず舌打ちする葉沙。

大和「さらに魔法カード〈龍の鏡〉発動!」

龍の鏡通常魔法
自分フィールド上または墓地から、融合モンスターによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚として扱う)

葉沙「2枚目の〈龍の鏡〉!?」

大和「墓地に眠る2体の〈スィール・ドラゴン〉をゲームから除外し〈ツイン・スィール・ドラゴン〉を特殊召喚する!!」

ツイン・スィール・ドラゴンドラゴン族8
ATK 2800 / DEF 2800
このカードが特殊召喚に成功した場合、デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加え、デッキをシャッフルする。ドラゴン族モンスターを生け贄召喚する場合、このモンスター1体で2体分の生け贄とする事が出来る。*融合モンスター「スィール・ドラゴン」+「スィール・ドラゴン」

大和「〈ツイン・スィール・ドラゴン〉効果発動! デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加えることができる」

葉沙「加えるカード・・・当然アレよね」

スィン(それ意外に考えられません)

 同じ答えが導き出された。大和もそれを隠すつもりなどないようだ。堂々とデッキから1枚のカードを取り出す大和。

大和「〈創の目の反逆龍〉を手札に加える」

 デッキから引き抜かれた〈創の目の反逆龍〉。

 葉沙の表情が厳しいものになる。

葉沙「そのカードには私も痛い目に遭わされたっけ」

大和「当然だ。俺に切札を使わせて無事だった者などいない」

葉沙「言ってくれるじゃない。でも、こちらも効果発動よ。〈ツイン・スィール・ドラゴン〉の特殊召喚成功により、スィンをレベルアップさせてもらうわ」

大和「構わないが、それに意味はない」

 大和の一言にムッとする葉沙。

 スィンは葉沙にとって友であり切札である。ケチをつけるような真似は許せないのだ。たとえそれが大和であったとしても。

葉沙「何言ってるのよ。私のスィンにケチつけるっての?」

大和「それはすまなかった。だが事実だ」

葉沙「大体、まだ生贄が揃ってないじゃない? それじゃ〈創の目の反逆龍〉を呼べないわよ」

大和「〈ツイン・スィール・ドラゴン〉は2体分の生け贄とすることができる。その意味は分かるな?」

葉沙「召喚条件はクリアされてるってわけね・・・」

 苦虫を噛み潰したような顔をする葉沙。

スィン(葉沙・・・来ます!!)

葉沙「わかってるわよ!!」

 葉沙はスィンに返事しながら、以前に感じた圧迫感が襲い掛かってくることを恐怖し、同時に喜んだ。今までデュエルしてきた中でもっとも強力なモンスター。全てを否定し、己のみを肯定し続ける傷だらけのドラゴン。

 葉沙もその力に一度は捻じ伏せられた。

 ゆえに借りを返さなければならない。

 デュエリストとして。

大和「こちらも切札を見せつける!〈創の目の反逆龍〉よ、すべてに反逆し、立ちふさがる敵を粉砕しろ!!」

創の目の反逆龍ドラゴン族10
ATK 3500 / DEF 3200
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在するレベル6以上のドラゴン族モンスター2体を生贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上で表側表示で存在する限り、手札を一枚捨てる。魔法・罠・このカードを除くモンスター効果の発動を無効にし、それを破壊する。また、エンドフェイズ時このカードのコントローラーの手札が0枚だった時、このカードを除外する。

 再び葉沙とスィンに立ちふさがった〈創の目の反逆龍〉。しかし、以前と同じプレッシャーを感じなかった。むしろ微笑んでいる気さえする。

葉沙(そっか・・・約束したのは大和だけじゃない。〈創の目の反逆龍〉とも約束したんだった)

 自分の思考に思わず笑みを浮かべる葉沙。

 だが、恥じる気などない。スィンにも意志があるように〈創の目の反逆龍〉にも人格と呼べるものがあってもおかしくないのだから。

 葉沙は〈創の目の反逆龍〉に向かって話しかけた。

葉沙「あんたも待たせて悪かったわね。この前の決着をつけてあげるから、覚悟しなさい!」

 自分も待っていたと言わんばかりに鉤爪を地面に食い込ませる〈創の目の反逆龍〉。大和もその意志に気づき、頼もしい相棒に向かって頷いた。

葉沙「ここからが本番ね」

大和「ここからが本番だ」

 二人のデュエリストは笑った。互いを強敵と認め、さらなる激戦を求めて・・・



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