葉沙 LP 3700 手札:1枚 1枚 スィンセリティ・ガールLV7〈表攻撃〉 創の目の反逆龍〈表攻撃〉 無し 大和 LP 1500 手札:4枚 大和「このデュエルに勝利し、さらなる高みに上らせてもらう! いけ、反逆龍よ!! ゴットブレイクショット!!」
大和の意志に応えるかのごとく、巨大な閃光を葉沙達に向かって解き放つ〈創の目の反逆龍〉。
葉沙(これを受けたら・・・!!)
葉沙は直感した。
もしここでスィンを倒されれば、きっとデュエルの流れは大和のものになってしまうだろう。そうなれば、逆転はおろか反撃さえもできなくなってしまうと。
葉沙(デュエルの流れ・・・大和に引き戻させるわけにはいかない!!)
葉沙は保険に伏せておいたリバースカードを発動させた。
葉沙「リバースカードオープン! 〈攻撃の無力化〉! その攻撃を止めさせてもらうわよ」
攻撃の無力化 カウンター罠 相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。 大和「なるほど・・・考えたな」
笑みを浮かべる大和。
関心する大和とは別にジャッジ山田は頭を抱え込んでいる。
ジャッジ山田「おおっとこれはどういうことだ? 天堂大和、〈創の目の反逆龍〉の効果を発動させようとしません」
大和「〈攻撃の無力化〉はカウンター罠だ。そのスペルスピードは〈創の目の反逆龍〉を上回っている」
葉沙「だから〈創の目の反逆龍〉の効果は発動しないし、その攻撃も防ぐことができるってわけ♪」
気づいていないジャッジ山田に説明する二人。説明をされたあとに納得したジャッジ山田は感嘆の声を上げた。
ジャッジ山田「おお! そういうことですか! これは私、勉強不足でした。解説者として申し訳ないしだいです、はい」
深々と会場に頭を下げるジャッジ山田だったが、それを見ている者は会場にいなかった。
大和は何事もなかったかのように正面を向くと、
大和「ターン終了だ」
と静かに宣言した。
プラズマテレビには二人のデュエリストの姿が映っている。
それをソファーに寝そべりながらを気だるそうに見ている少女。
追加で持ってこさせた料理は無残に食べつくされ、部屋中に散乱している。
少女は大きなあくびをしながら、近くの空き瓶を蹴り飛ばした。
??「つまんねぇつまんねぇつまんねぇ!」
一人で部屋に閉じ込められていたせいか、とても不機嫌に唸る少女。
??「箍外ししやがったと思ったら、すぐにやめて、今度は能無し攻撃のオンパレード。いくらなんでもバカすぎるだろ、コイツ!!」
テレビの画面に向かって訴えながら、少女は叫び続ける。
??「それに銀髪の野郎! 全然帰ってきやがらねぇし、ジジイもこんなクソつまらねぇデュエルを見ろとか言いやがって、どいつもこいつも鬱陶しい。帰ってき・・・」
少女は突然、独り言を止めた。
入り口のドアの方を向くと、ニヤっと口元だけを動かして笑い始める。
??「入ってこいよ。今なら護衛の銀髪もいやがらねぇぜ。折角のチャンスだろ?」
と、ドアに向かって話しかけた。
次の瞬間、ドアが音も無くゆっくり開いてゆく。
少女はその先に見えた者に向かって、
??「退屈だったんだ。せいぜい楽しませろよな」
挑発的にそう告げた。
7ターン目
葉沙(〈攻撃の無力化〉でなんとか凌いだけど、同じ手は通用しないはず・・・このドローで引けなきゃ・・・終わる!!)
巨大なプレッシャーに押しつぶされそうになる葉沙。
腕が見えない力に曳かれて動かせない。
金縛りにあったように動かない葉沙の腕に、重ねるように自分の腕を添えるスィン。
スィン(葉沙)
葉沙「なに?」
スィン(大丈夫です。葉沙なら、きっとやれるはずです)
葉沙「そうね・・・私なら・・・」
自分に言い聞かせる葉沙。
最初から諦めていてはダメだ。
信じれば、きっとカードが想いに応えてくれるのだから。
大和「どうした? 臆したか?」
葉沙「この私が・・・冗談言わないでよね。それに次のドローで〈創の目の反逆龍〉を倒してみせるんだから。大和、覚悟してなさい」
大和「そうか・・・ならば行動で示して見せろ! お前の信念で切り開いて見せろ!!」
葉沙は目を閉じながらデッキからカードをドローした。
この時、もらったカードのことを改めて感謝した。
紅が葉沙を護るために用意した1枚のカード。
スィンが装備するに相応しい1枚のカード。
強い願いの篭ったカードは少女の元へ。
葉沙「紅姉、ありがと♪」
大和「どうやら切札を引いたようだな」
葉沙「あんたにとっては・・・そうね、死神かジョーカーって所ね」
イジワルそうな笑みを浮かべでそう言う葉沙。
大和もそれに対して自信を含んだ笑みを返す。
大和「言い放ったからには全力で仕掛けて来い!」
葉沙「それじゃ遠慮なく攻撃させて貰うわ。装備魔法〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉発動! 〈スィンセリティ・ガールLV7〉に装備するわよ」
スィンの目の前に一本の杖が現れた。
ルビーのような赤さをもつ魔法石、それを包み込むように白銀に輝く金属と柄。その容姿はとても未来的で古代の魔道士が使用していたものとは正反対の代物と言える。
大和はすぐに手札を墓地に送ると、
大和「俺にとってそのカードがジョーカーというのならば、反逆させてもらう!〈反逆龍〉よ、オールリフューザル!!」
〈創の目の反逆龍〉の爪がスィンを襲う。
振り下ろされた瞬間、
エターナル・ハート(Barrier Shield)
〈エターナル・ハート〉から淡い光の盾が現れ〈創の目の反逆龍〉の攻撃を防ぐ。
驚く大和に葉沙が得意げに説明する。
葉沙「残念でした♪〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉は自分の意志を持っているの。危険な状態になると、オートでシールドを張って防御しちゃうのよ」
大和「フッ! 面白いカードを使う」
葉沙「まあね。ついでに〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉の効果で〈スィンセリティ・ガールLV7〉の攻撃力が500ポイントアップするわよ」
スィンセリティ・ガールLV7
攻撃力 2600 → 3100大和「だが、その攻撃力でどうするつもりだ? まさか俺の〈反逆龍〉と戦おうというわけではないのだろう?」
大和の言う通りである。
〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉を装備したことによって〈スィンセリティ・ガールLV7〉の攻撃力は上昇したものの、〈創の目の反逆龍〉にはまだ届かない。いくら〈創の目の反逆龍〉の効果を凌ぐことができるカードを装備できても、これでは意味がないのだ。
葉沙もそんなことは承知のはず。
しかし、葉沙は自信満々に胸を張り、
葉沙「決まってるでしょ・・・バトルするのよ!!」
と言ってのけた。
ありえない一言だ。
敗北の結果は見えているにもかかわらず、そうするのだと宣言したのだから。
他の者達は困惑したり呆れたりしていたが、大和はバカにしなかった。
ただの考えなしならば違ったかもしれない。
しかし、目の前に立ちふさがるのは琴木葉沙。
自分が認めた好敵手なのだ。
大和「無謀な攻撃だな・・・だが、その信念の攻撃すらも粉砕しなければならない! 俺がお前に勝つためには!!」
葉沙「だったら私も無理を無茶で押し通してやるわよ! 〈スィンセリティ・ガールLV7〉で〈創の目の反逆龍〉を攻撃!!」
大和「反逆龍よ、迎え撃て! ゴット・ブレイク・ショット!!」
〈エターナル・ハート〉を構え、呪文を唱え始めるスィン。〈創の目の反逆龍〉も地面に両足を食い込ませながら、体の奥から紅い閃光を溜め込み始める。
攻撃が開始されたのは同時だった。
スィンの攻撃魔法と〈創の目の反逆龍〉のゴット・ブレイク・ショットがぶつかり巨大なエネルギーが轟音を上げる。
やはり力では〈創の目の反逆龍〉が上だった。少しずつスィンの魔法が押されていく。
ゴット・ブレイク・ショットがスィンの身体を届く所まできた瞬間、スィンが叫んだ。
スィン(葉沙、今です!!)
葉沙はスィンに向かって頷くと、〈エターナル・ハート〉の効果を発動させた。
葉沙「この瞬間、〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉の効果を発動させるわ! カートリッジロード!!」
エターナル・ハート(Cartridge Load)
杖が一瞬伸びた瞬間、魔法石の少し下のシリンダー部分から弾痕のようなものが吐き出された。
大和「カートリッジ・・・ロードだと!?」
初めて聞く言葉に驚きを隠せない大和。
葉沙「〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉は自分の手札を弾丸にして装填することで、瞬間的に魔力を増幅させることができるのよ!」
〈エターナル・ハート〉の効果が発動された瞬間、〈創の目の反逆龍〉の爪が襲い掛かってきた。
が、〈エターナル・ハート〉は再びバリアシールドを発生させて、それを受け止める。
葉沙「そしてその効果も無効化されない!!」
インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート 装備魔法 このカードは「ガール」と名の付いた魔法使い族モンスターしか装備できない。装備モンスターの攻撃力・守備力を500ポイントアップする。このカードの発動と効果は無効化できない。自分の手札を任意の枚数だけ墓地に送ることで、装備モンスターの攻撃力を墓地に送ったカードの枚数×300ポイントアップする。(この効果は相手ターンにも使用する事ができる) 大和「くっ!」
葉沙「これで〈スィンセリティ・ガールLV7〉の攻撃力が300ポイントアップするわ」
スィンセリティ・ガールLV7
攻撃力 3100 → 3400大和「どれだけ攻撃力を上げようとも〈創の目の反逆龍〉の攻撃力を超えなければ意味は無い!!」
葉沙「そうね・・・でも〈エターナル・ハート〉にだって専用の弾丸があるのよ」
大和「専用の弾丸だと?」
葉沙「そう。強力な魔法を封印した特別な弾丸がね」
大和「その弾丸がどうしたという。たとえあったとしても手札に無ければ意味は無い!」
葉沙「さっきまであったわよ。私の手札に・・・」
大和「〈エターナル・ハート〉の効果で墓地に送ったカードか!?」
葉沙「ご明察。弾丸に込めた魔法カード〈マジックカートリッジ―DC〉は〈インテリジェント・アーティファクト〉の効果で使用することによって、真の力を発揮するカードなの」
マジックカートリッジ―DC 通常魔法 自分フィールド上表側表示モンスター1体選択して発動する。選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで200ポイントアップする。このカードが「インテリジェント・アーティファクト」と名のついたカードの効果で墓地に送られる場合、「インテリジェント・アーティファクト」と名のついたカードを装備したモンスター1体の攻撃力を600ポイントアップする。(このカードが「インテリジェント・アーティファクト」と名のついたカードの効果で墓地に送られる場合、スペルスピードは2として扱い、チェーンブロックに乗せて解決する) 葉沙「私の全力を〈インテリジェント・アーティファクト―エターナル・ハート〉に込めて撃ち抜く!!」
スィンと〈反逆龍〉の均衡する力が巨大な爆発を起こした。デュエルディスクを壁にして閃光と土煙を凌ぐ葉沙と大和。
土煙が晴れた。そこに立っていたのは〈創の目の反逆龍〉。
バトルは決した。
と、皆が思い込んでいたそのとき。
上空にボロボロのローブを翻すスィンの姿が現れた。スィンは〈エターナル・ハート〉を構えなおすと、再び〈創の目の反逆龍〉に突撃していく。〈エターナル・ハート〉が淡い光で輝き始めた。光はスィンを包み込む。スィンは〈創の目の反逆龍〉との間合いを詰めると、大振りで杖を振り上げた。杖を振り下ろした瞬間、激しい爆発が起こり、その周囲を炎が支配する。
エターナル・ハート(Divine Crash)
葉沙「ディバインクラッシュ! シューット!!」
〈スィンセリティ・ガールLV7〉ATK 4000 VS 〈創の目の反逆龍〉ATK 3500
撃破!炎の中から影らしきものが見えた。影は葉沙のほうへ向かって近づいてくる。
決着はついた。
勝利したのはスィン。
ボロボロのローブを翻しながら、主のもとへと足を進める。
葉沙「よくやったわ、スィン」
スィン(はい、葉沙)
笑みをこぼす二人。
一方、敗れた大和は首を横に振りながら、何かを振り払おうとしている。
負けるはずが無い・・・少なくとも自分の中ではそうだったに違いないのだろう。
絶対の存在が敗北したことは、彼の中で衝撃的だったに違いない。
大和「反逆龍が・・・倒れた・・・だと・・・」
葉沙と大和のデュエルが白熱しているのと同時刻、レオナはゲートの前に立ちながら、到着便の電子掲示板を眺めていた。どうやら誰かを待っているようである。
ゲートから次々と人がなだれ込んできた。
レオナは微動だもせず、ただ真っ直ぐに立っているだけ。そして最後の乗客であろう少年を見た瞬間、レオナは動き始めた。
その少年も車椅子のタイヤを動かしながら、レオナに近づいてゆく。歳は14〜15歳ぐらいだろうか、癖のない金髪と中性的な顔立ちはまさしく美男子といえるだろう。
レオナはその少年の前まで歩み寄ると、姿勢を正した。
レオナ「長旅お疲れ様です、ヴァイス様」
ヴァイスと呼ばれた少年はやんわりした笑顔をレオナに向けた。
ヴァイス「うん。お迎えありがとうございます、レオナさん」
レオナ「車椅子での飛行機は大変だったでしょう。ホテルを用意してありますから、まずはそちらに」
腕を使ってヴァイスを促すレオナ。
しかし、ヴァイスは首を横に振って、
ヴァイス「ううん、その必要はないです。すぐにでも彼女の所へいきたいと考えていますから」
レオナ「ターゲットにですか?」
眉間にしわを寄せるレオナ。その表情には若干の不満が窺える。ヴァイスはそれを意に返さず話を続けた。
ヴァイス「そうです。クレナイさんの報告書に目を通して、できるだけ早急に会わなければならないと判断しました」
レオナ「でしたら、わざわざあなたが出向かなくても私が連れてきましたが?」
ヴァイス「それは彼女に対して迷惑です。これはワガママなのだから、こちらから出向くことが当たり前ですし・・・それに」
言葉を止めて意味ありげに俯くヴァイス。
レオナは心配そうにヴァイスを覗き込む。
レオナ「それになんでしょうか?」
ヴァイス「彼女のデュエルを見てみたいですから」
不意打ちで笑顔を見せるヴァイス。
その思わず見とれてしまいそうになる笑みに一瞬だが、動きを止めたレオナ。だが、彼女もそう易々と引く気はないようだ。
かるく咳払いしたあとに反論の言葉を返す。
レオナ「車に備え付けてあるテレビで観戦が可能です」
ヴァイス「直に見ることに意味があるんですよ。彼女がどれだけの潜在能力を有しているのか、僕達の障害となりえる存在なのかを判断しなければなりません」
レオナ「正しい意見ではあると思いますが・・・」
正論ばかりを口にされて押し黙るレオナ。
彼が間違ったことを言っているとは思っていないのだが、つねに命を狙われていることを楽観視しすぎである。わざわざ迎えに来たりしているのは、そういう状況に対処するためでもあるのだから、もう少し考えて欲しいものだ。
レオナ(ここは考えを改めてもらうためにも、強気で言ったほうがいいかもしれない)
レオナは覚悟を決めると、若干だが険しい表情を作り、少しだけ声を大きくした。
レオナ「もう少し自分の立場を考えて欲しい。あなたは我々のリーダーなのですから」
ヴァイス「ごめんなさい。いつも無理ばかり言って」
意外にも素直に謝るヴァイスに、若干の罪悪感を覚えるレオナ。
レオナ「いえ、自覚しているのならば問題はありません。あとは行動に移してもらえれば非常に助かります」
ヴァイス「あはは」
レオナの反撃の一打に反論できず苦笑いすることしかできないヴァイス。
今だ罪悪感は消えないが、この機を逃すのは惜しい。ここで自分かいかなる存在なのか再確認してほしい所だ。レオナは躊躇なく容赦もせず、さらなる追求を続けることにした。
レオナ「所で・・・」
ヴァイス「なんです?」
レオナ「護衛はどうしましたか? アルトとグラーフ、それにハンネが同行していると聞いていましたが」
ヴァイス「ああ! グラーフさんとハンネさんなら先に入国して、彼女を調査すると言っていました。彼等の動向をできるだけ明確にしたいとかなんとか」
レオナ「グラーフらしい行動ですね。ではアルトにも指令が?」
ヴァイス「アルトなら、さっきお土産を買いに行くと」
そう言って土産屋のほうを指差すヴァイス。
レオナ「あのバカは・・・」
額に手を当てて呆れるレオナ。
ヴァイスは
アルト「ヴァイス、やっぱり空港の土産にカタナはなかったぜ! かなりショックだ」
ヴァイス「それは残念でしたね、アルト。でも、今はそれ以上に大変ですよ・・・たぶん」
アルト「何が大変なんだ? 俺にかかれば天変地異からだってお前を護れ・・・」
アルトはここでようやくレオナの存在に気がついたようだ。必死に動揺を隠そうとしているみたいだが、目が完全に泳いでいる。明らかな挙動不審だ。
レオナ「久しぶりだな、アルト」
アルト「そッスね・・・アネさん・・・」
気まずそうに返事をするアルト。
レオナ「私がどうして怒っているのか理解できないとは、まさか言わないだろう・・・アルト?」
低い声色で訊ねるレオナ。
アルトはますます動揺して震えだした。
アルト「違うッスよ! ちゃんと許可取りましたって! それにヴァイスだってカタナ欲しいって言ってたッスもん」
必死に弁解するアルトだが、レオナはアルトの言い訳など聞く気はないようだ。鬼の形相でアルトを睨みつけると、これでもかというほどの大声を耳元に叩きつけた。
レオナ「ヴァイス様のせいにするな! 嘆かわしいにもほどがある。お前には護衛というものがどれほど重要なものか再認識させる必要がありそうだな!!」
レオナの形相にガタガタ震えるアルト。
アルトは助けを請うために、すぐ横にいるヴァイスを見る。が、ヴァイスにもどうしようもないようだ。アイコンタクトで伝えてきたメッセージは、
ヴァイス(謝り続けるしかないよ)
レオナがヴァイスに甘いとはいえ、こればかりはどうしようもないという、アルトには苦しい返事だった。
だが、やることは決まった。
そう、彼が取った行動は・・・・・・
アルト「ほんとごめんなさいッス! 申し訳ありませんでしたッス!!」
ひたすら頭を下げて、機嫌を直してもらうことである。
必死に謝り続けるアルト。
レオナもさすがにそこまでされると許さないわけにもいかない。彼女だって虐めるつもりでこんなことをしているわけではないのだ。
レオナ「まったく・・・ヴァイス様もアルトを甘やかしすぎです。もっと威厳を保ち、このような行動を二度と取らないように言い聞かせなければなりません」
ヴァイス「レオナさんの言うことも理解できます。ですけど、アルトは私の親友ですから。命令とかそういうのはしないですし、権限も持っていません」
レオナ「しかし、それでは組織が成り立っていかなくなります。他の者に不信感を与えかねない」
ヴァイス「それは違います。少なくとも私は皆さんのことを同士だと思っています。それに同士に上下関係なんて存在しないですよね?」
自信たっぷりにそう宣言するヴァイス。
ここから彼の温厚な性格が窺える。レオナやアルトも、そんな彼だからこそ、共に戦うことを選んだ。
しかし・・・・・・
耳にタコができるほど聞かされていることなのだが、このヴァイスの一言には、毎回頭を悩ませてしまうレオナ。
レオナ「またあなたは、そんなことばかりを・・・」
アルト「まっいいじゃないッスか。ヴァイスもこう言ってますし」
レオナ「お前に言われると無償に腹が立つが・・・まあいい」
そう言ってレオナはヴァイスのほうに向きなおし、
レオナ「外に車を用意しておきましたから、今後のことは移動中に」
移動を始めた。
アルトはヴァイスの後ろまでいくと、車椅子を押して、レオナに続く。
ヴァイス「はい。お願いします、レオナさん」
アルト「運転よろしくッス、アネさん」
レオナ「調子のいいヤツめ」
このときの三人は、まだ事態がどれだけ進んでいるのか判断できていなかった。