第24話 代価は心に剣を刺す!!


○車内○


 現在、ヴァイス達は車で葉沙宅に向かっている。

 本来の予定はデュエル会場でターゲットに接触を図るはずだったのだが、予想外の渋滞に巻き込まれ、結果として間に合わなかった。その後も先行していた紅とグラーフと合流したものの、彼のパートナーであるハンネと連絡が取れず、さらに時間を費やしてしまったのだ。

 ヴァイスはハンネの捜索を紅に託し、今はグラーフの用意した別のワゴン車に搭乗している。運転しているのは見事な髭を生やしたグラーフ、その助手席にレオナ。後部席にヴァイスとアルトが座っている。

 ヴァイスは悲しい表情を垣間見せながらも気丈に振舞っていた。

ヴァイス「運がよければハンネさんは僕達と連絡が不可能、なおかつ彼等から逃走している状態にあるはずです。ですが・・・」

 最悪の状況を想像して口ごもるヴァイス。そう、ハンネが彼等に拘束されている場合と闇のデュエルを挑まれて敗北した場合である。

 人質ならばまだマシなほうだ。

 人質とは相手側の動きを鈍らせつつ、自分側を有利にするための手段の一つである。人質を手に入れた側は相手にアプローチをかけて何らかのルールを相手に加えなければならない。そのルールによって始めて優位に立つことができるためだ。それは同時に人質は死んでいないことにも繋がる。

 だが、現時点でハンネからの連絡は一切無い上に敵側からのアプローチもない。

 ということは・・・・・・

グラーフ「申し訳ありません。私がハンネに会場内の偵察を別行動させたのが失態でした」

ヴァイス「いえ、それはグラーフさんの失態ではないですよ。僕がちゃんと警戒するように伝えていなかったのが悪いのですから」

レオナ「それはヴァイス様のせいではありません。ただ相手が想像以上に組織立って動いていたというだけです」

アルト「ようは俺らがヤツらを舐め切ってたってことだろ?」

ヴァイス「はい。正直、失策でした。ハンネさんには申し訳ありませんが、これで僕達にはあまり時間が残されていないことがわかりました。一刻も早く琴木葉沙を確保しなければなりません」

 アルトは下唇を噛みながら、自分の非力を嘆いた。おそらくここにいる皆にはわかっている。ヴァイスの本心・・・同志ハンネを救いたい思いが。

 しかし、掲げた理想のために切り捨てなければならないのだ。

 もし琴木葉沙を奪われれば、これ以上の深刻な事態を引き起こす要因となるのだから。

アルト「大丈夫だぜ、ヴァイス。俺達はこの任務をやり遂げるし、誰も死にゃしない。みんなでお土産のカタナを買ってホームに帰れるさ」

 ヴァイスの肩をたたいてガッツポーズを見せるアルト。そんな友の優しさを肌に感じながらヴァイスは笑みを返した。

グラーフ「なんだ・・・様子がおかしいぞ・・・」

 グラーフが反対車線に見える大型トラックの異変に気づいた。

レオナ「エンジン音が大きすぎる。一体何キロで走っている?」

 よほどアクセルを踏み込んでいるのだろうか、異常なまでのエンジン音が響いている。その音量は会話に支障をきたすほどだ。

アルト「まさか飲酒運転とかじゃねえだろうな」

ヴァイス「蛇行運転をしているわけでもないですから、それはないと考えるべきですよ」

 単純に急いでいるのだろうと判断したヴァイス達は特別な警戒をせずに横切ろうとした。

 が・・・・・・

グラーフ「反対車線に入り込んだだと!?」

 突然の出来事だった。

 大型トラックはヴァイス達の乗るワゴン車に突っ込んできたのだ。

 グラーフは必死にハンドルを切ってトラックを避けようとする。が、ギリギリ避けきれずにサイドミラーが弾き飛ばされた。ワゴン車は衝撃で歩道に吹き飛ばされ、車体を回転させながら改装中の飲食店に突っ込む。

アルト「ヴァイス! だいじょぶか?」

 最初に声を上げたのはアルトだった。

 隣に座っていたヴァイスの名を叫ぶ。

ヴァイス「はい・・・・・・ゲホッゲホッ」

アルト「まさか発作が!!」

ヴァイス「いえ、少し身体を打っただけですから。それよりもレオナさんとグラーフさんは」

グラーフ「こちらはなんとか意識はあります」

 グラーフの額からはおびただしい量の血が溢れ、顔の半分を赤く染めている。

 一方、レオナからの反応がない。

アルト「アネさん! アネさん!!」

 アルトは傷む身体に鞭打って腕を伸ばそうとする。が、すぐにそれをグラーフが制した。

グラーフ「大丈夫だ。息はしている。だが頭部を打っている可能性もある。下手に動かすな」

アルト「よかったぜ・・・・・・」

 死んでいないことを知って、ホッと胸を撫で下ろすアルト。

 しかし、ヴァイスの表情が険しい。

アルト「どうした、ヴァイス?」

ヴァイス「あの動きは明らかに僕達を狙っていました。だとすれば、急いで体勢を立て直さなければいけません」

 こんな状況であってもヴァイスは冷静だった。組織を率いる者としては当然なのかもしれないが、それを差し引いても彼が上に立つ人間に相応しいと言える。

 だが現状は最悪といっても過言ではない。

 レオナは意識不明、グラーフの出血も激しいし、黙っているもののヴァイス自身も発作を押さえ込むので精一杯。見た目は大丈夫そうに見えるアルトも車に乗っている全員と同じ衝撃を受けているのだ。無傷でいるとは考えにくい。

 逃げるにも移動手段である車はもう動かせない上、紅と連絡が取れたとしても、応援に来るまでに数十分はかかるだろう。

グラーフ「ここで襲われたら全滅してしまう。アルト、ヴァイス様を連れて脱出しろ。ここは私がなんとかしてみせる」

 自ら囮役を買って出るグラーフ。

 だが、アルトの返答は単純明快だった。

アルト「ケッ! 誰が言うこと聞くか! それにヴァイスだって逃げる気なんかないんだろ?」

 アルトはヴァイスに訊ねた。

 その問いにヴァイスは強気に答える。

ヴァイス「当然です。だから、アルトには頑張ってもらわないといけません」

アルト「任せとけ! とりあえずどう動きゃいい?」

 ヴァイスは笑みを浮かべながら口を開いた。


○街中○


 葉沙達はシルビアを追ってすぐに家の近くに待機させていた明日香と合流した。

 明日香の追ったクリアのことを移動しながら聞いた後、とある問題が発生する。

零蘭「一体、ドチに向かたアルカ?」

明日香「ボクだってそこまで見てないもん。わかるわけないよ」

 そう、足取りが途絶えてしまったのだ。

 どちらの方向に向かったのかまでは明日香の情報により特定できているのだが、どこに向かったのかまでは分かっていない。

 現状では手がかりが少なすぎて探しようが無いのだ。

零蘭「仕方ないアルナ。手分けして探すしかないアルヨ」

明日香「それって危ないよ。 だってその人、拳銃持ってるんでしょ?」

マリア「なら・・・近くの人に・・・聞きこみ・・・する?」

 相談の最中、葉沙は一人黙り込んだまま俯いていた。

 零蘭達は単純に辛いのだろうと考えていた。

 が、そうではなかった。

 葉沙はドス黒い気配のようなものを感じていた。

 それは前にも感じた不快な感覚。

 ラゴスとデュエルしていたときと同じ感覚。

葉沙(もしかしたら、この先にシルビアが・・・)

 葉沙は意識を集中させた。神経を研ぎ澄ませ、その不快を手繰り寄せようとする。気持ち悪いものが自分を侵食していくような感じを覚え、胃液を吐き出しそうになった。

 だが、それは我慢しなければならない。

 もしあの偽者のシルビアがラゴスの仲間だとしたら、今度はシルビアが闇に飲み込まれてしまうかもしれないのだ。

葉沙「多分こっち、私についてきて」

 葉沙は不思議な顔をする面々に背を向けて、不快の感じるほうへと足を進めた。


○空き地○


 葉沙達の到着は遅すぎた。

 目の前にはシルビアとクリア、そして知らない老婆がデュエルをしている。

 だがそのデュエルも、もう終わりを告げていた。

老婆「自分のモンスターに殺されるんだ。満足して死ぬんだねぇ」

 老婆のフィールドにはシルビアのフェイバリットである〈大天使ゼラート〉が主であるはずのシルビアの心臓を突き刺していたのだ。

葉沙「シルビア!!」

 友の名を叫ぶ葉沙だったが、その言葉に運命を覆す力はなかった。

 シルビアの足元の影がアリ地獄のように敗者を飲み込もうとする。

葉沙「シルビア! ダメ! 逃げて!!」

 必死に叫ぶ葉沙のほうを振り向くシルビア。頬で涙を濡らしながら、

シルビア「葉沙・・・ごめんな・・・」

 と弱々しいしい声で謝った。

 その間にもシルビアの身体が闇に飲み込まれていく。

クリア「シルビア・・・・・・姉さん!!」

 すでに身体の半分以上が飲み込まれている。

 このままではシルビアが・・・

 そうはさせまいと葉沙達は闇の穴ギリギリまで近づいてシルビアに手を伸ばす。

葉沙「シルビア! 早く手を掴んで!!」

 シルビアは手を伸ばそうとはしなかった。まるで運命を受け入れたかのように、ただ静かにジッとしているだけ。

シルビア「お願いや。クリアのこと・・・助けたって」

 闇はさらにシルビアを飲み込む。葉沙は力を振り絞って腕をさらに伸ばした。

 が、その手は空をかき、掴もうとした者の存在は消えさった。

老婆「おやおや、こりゃまた感動のシーンだねぇ」

 老婆は愉快そうにケタケタと笑う。

零蘭「シルビアが・・・」

マリア「消えた・・・?」

 力なく地面に膝をつく葉沙。

葉沙「そんな・・・うそ・・・」

 みなが信じられないといった様子でシルビアの消えた場所を見つめていた。

 だが、葉沙だけはそれがどういうことなのか知っている。

 もうシルビアは・・・・・・・帰ってこない。

 絶望に叩きつけられた葉沙。その瞳からは涙が溢れ出た。

 老婆はそれを嬉しそうに見つめながら、出来上がった傷口を抉るような言葉を吐き捨てる。

老婆「現実逃避はよくないねぇ。その子はお嬢ちゃんや弟君を守るために頑張ったっていうのに、そんなんじゃあ、その行為事態が無駄なことになっちまうよぉ」

葉沙「なっ・・・!!」

 言ってはならないことを口にされた。

 この老婆はシルビアの命がけの行為を軽口に否定したのだ。

 意味が無いと、無駄だったと。

老婆「お嬢ちゃんがその子にしてやれることは一つしかないんだよ。デュエルで仇を討つことしか・・・ねぇ」

 老婆の挑発に反応したのはクリアだった。

 その白い肌を真っ赤に染めて怒りを露わにする。

クリア「ふざけるな! シルビアを・・・何も知らないヤツに姉さんを否定することなど許しはしない! 今度は僕が相手をする!!」

老婆「威勢のいいことだねぇ。だけど・・・お嬢ちゃんはこの子に任せる気なんて、さらさらないんだろう?」

 黙り込む葉沙。

 今度は零蘭とマリアが葉沙の前に出る。

マリア「お婆さん・・・シルビアは・・・どこ・・・今は・・・それが・・・重要・・・」

零蘭「そうアル。だいたいシルビアは偽者を追っていたはずアルヨ」

明日香「ボク、こんな手品なんかに引っかからないだからね」

老婆「この状況を読めないなんて随分バカなんだねぇ」

零蘭「なんダト!!」

老婆「こんなババアでも変装すりゃ、若いもんにも負けないってことさ」

零蘭「ありえないアル!!」

老婆「そんな些細な種明かしなんてどうでもいいことさ。問題はお嬢ちゃんがデュエルをするかどうかってことなんだからねぇ」

クリア「年寄りは忘れやすくて困る! デュエルは僕が――」

葉沙「待って、クリア」

 怒りに我を忘れているクリアを制する葉沙。

 当然、クリアはこれに反発しないわけがない。

 今度は葉沙を睨みつける。

クリア「葉沙、邪魔をするな」

葉沙「このデュエル・・・私が受けるわ」

零蘭「無茶アルヨ!!」

マリア「その身体じゃ・・・デュエルなんて・・・できない・・・」

明日香「無理だよ、葉沙姉。立ってるのもやっとなのに」

葉沙「どうしてもやらなきゃいけないの! どうしても!!」

 ふらつきながらも立ち上がる葉沙。

クリア「君はわかっていない! このデュエルは」

葉沙「わかってるわよ。これで二回目だから」

クリア「二回目だと・・・!?」

 信じられないといった様子で驚くクリア。

葉沙「だから・・・大丈夫だから」

 葉沙はこの事態を一番理解している。闇のデュエルは人の命すら奪ってしまう危険な行為だということ。

 老婆は自分を狙う組織の一員であり、覚醒のためには手段を選ばないこと。

 そして、自分には守るべき者達がまだ存在していること。

 葉沙の心に炎が灯った。

 覚悟は自然と瞳に意志を宿す。

 今の葉沙がまさしくそうであるように。

 その覚悟と意志の強さを感じ取ったクリアは、無言のまま身を引いた。もちろん葉沙がデュエルで勝利すると信じているからの行為である。それは零蘭達にも伝わったようだ。まだ足元がふらついているにもかかわらず、葉沙を止めようとしないのが証拠である。

 シルビアの立っていた場所に落ちているデュエルディスクを拾い上げると、シルビアのデッキを大事そうに取り出し、零蘭に手渡す。そして自分のデッキをセットした。

老婆「どうやら話はまとまったらしいねぇ。それじゃあデュエルでも始めるとするかい・・・闇のデュエルを」

 無言の返事に不敵な笑みで返す老婆。

 これでまた葉沙は地獄とも呼べる闇のデュエルを開始された。

 黒の球体が葉沙達を取り囲んでいく。

 前と同じ状況になったことで、これが闇のデュエルだと再認識させられる。

葉沙(だけど・・・引くわけにいかない。私がみんなを守るんだ。そしてシルビアも助け出してみせる)

葉沙&老婆「デュエル!」

1ターン目

老婆「先攻は頂くよ。ドロー」

老婆「まずは〈レッドヘカテー〉を召喚するよ」

レッドヘカテー魔法使い族4
ATK 1500 / DEF 1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「イエローヘカテー」1体を手札に加える事ができる。

老婆「召喚に成功したことにより〈レッドヘカテー〉の特殊効果を発動するよ。デッキから〈イエローヘカテー〉を手札に加えさせてもらうよ」

零蘭「サーチモンスターアルカ」

クリア「そうだ。だがガジェットとよりも攻撃力も高く、それ以上に厄介な能力を持っている」

マリア「厄介な・・・能力・・・?」

明日香「どんな能力なの?」

 単純な興味本位で聞いたのだろう。

 だが、老婆はそれを制するかのように明日香に鬼の形相を向けて怒鳴った。

老婆「お嬢ちゃん! 勝手に人の戦術を聞くもんじゃないよ!!」

 突然怒鳴られたことでビクッと身体を振るわせる明日香。だが、クリアがすぐに明日香の前に立ちはだかり、老婆を睨み返す。

クリア「貴様は黙ってデュエルに集中していればいい。いくらデュエルは葉沙に任せたとはいえ、バックアップをしないとは一言も口にしていない。それに・・・」

零蘭「それに?」

クリア「目の前のそいつは葉沙を盾にしてシルビアとデュエルをしていた。その時点で対等などと口にするなんて・・・この僕が許しはしない!!」

老婆「減らず口を叩きおって」

クリア「せいぜい肝を冷やしながらデュエルをするんだな。葉沙! あのヘカテーを三種類揃えられると危険だ! 気をつけろ」

 老婆の迫力にも負けないクリア。

 そんなクリアの度胸に零蘭は感嘆の声を上げた。

零蘭「案外、口が悪いアルナ。初めて見た時はそんなイメージは無かたアルヨ」

クリア「敵に容赦などしない。それにあのババアは姉さんの仇だ!」

 口の悪さはともかくとして、クリアは必要以上の情報は語らなかった。それは葉沙のプライドを傷つけないためだ。クリアも葉沙がどんなデュエリストか理解している。敵の情報を教えられて喜ぶような人物でないことを知っているのだ。

 それがたとえ命を失う闇のデュエルだとしてもである。

葉沙「わかったわ!」

老婆「まあ知った所で止められるわけじゃないんだけどねぇ・・・ケッケッケ」

葉沙「確かにそうかもしれない」

マリア「・・・葉沙・・・」

葉沙「けどね、それを上回ることならできるわよ!」

老婆「いきがってくれるねぇ。この小娘が」

葉沙「だったら止めてみせればいいじゃない。私の覚悟をね」

老婆「手札を伏せて、ターンを終了するよ」

2ターン目

葉沙「私のターン、ドロー! 〈お助け天使レティエル〉を召喚」

お助け天使レティエル天使族4
ATK 1800 / DEF 1400
このカードが戦闘する時に自分のライフポイントが相手のライフポイントよりも少ない場合、その数値分だけこのカードの攻撃力がアップする。

葉沙「〈レッドヘカテー〉に攻撃!」

老婆「そうはさせないよ。罠カード〈炸裂装甲〉発動! これでそこの可愛らしい天使は破壊だねぇ」

炸裂装甲通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体を破壊する。

葉沙「こっちだって簡単に破壊させるもんですか! お願い〈リリボー〉!!」

 〈お助け天使レティエル〉と〈炸裂装甲〉の爆発の間にピンク色のクリボーが現れた。リリボーはものすごい勢いで増殖して壁となり、〈お助け天使レティエル〉を爆発から守る。

老婆「なんだい、こりゃ?」

葉沙「〈リリボー〉のモンスター効果よ。手札から墓地に送ることで罠カードの発動を無効化してくれるのよ」

リリボー悪魔族1
ATK 300 / DEF 300
手札からこのカードを捨てる。罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。この効果はバトルフェイズ中のみ使用する事ができる。

老婆「鬱陶しいねぇ。だけど、それだけじゃ生粋のデュエリストを止められやしないよ」

 伏せてあったもう一枚のカードが開かれた。そこのあったカードは・・・

ガードブロック通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

老婆「これでライフポイントにダメージはなし」

葉沙「でも〈ガードブロック〉の効果じゃ、モンスターの破壊までは無効化できない」

〈お助け天使レティエル〉ATK 1800 VS 〈レッドヘカテー〉ATK 1500
撃破!

老婆「まあそれもいいもんさ。それじゃデッキからカードを1枚引かせてもらうよ」

 老婆はドローしたカードを確認したあと、ニヤニヤと笑う。

老婆「こりゃまたいいカードを引いたもんだ」

葉沙「そりゃよかったわね。私はカードを1枚セットしてターン終了よ」

3ターン目

老婆「さて、もうそろそろ本気でいかせてもらうよ。まずはさっき持ってきた〈イエローヘカテー〉を召喚。今度は〈バイオレットヘカテー〉をデッキから手札に加えるよ」

イエローヘカテー魔法使い族4
ATK 1500 / DEF 1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「バイオレットヘカテー」1体を手札に加える事ができる。

零蘭「これで二体目アルか・・・」

老婆「魔法カード〈二重召喚〉を発動させるよ。これでもう一回召喚が可能になったわけだ」

二重召喚通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行なう事ができる。

クリア「まずい。このままじゃ!!」

 焦りの色を見せるクリア。

老婆「もう止められやしないさね。〈バイオレットヘカテー〉を召喚し、もう一度手札に〈レッドヘカテー〉を加える・・・」

バイオレットヘカテー魔法使い族4
ATK 1500 / DEF 1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「レッドヘカテー」1体を手札に加える事ができる。

クリア「葉沙! なんとしても三体のヘカテーを揃えさせるな」

老婆「もう遅いさ。今度は〈マジシャン同盟〉を発動するよ。このカードはフィールド上に魔法使い族モンスターが二体以上存在している時に発動できる魔法カードでね、手札にある魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できるんだよ」

マジシャン同盟通常魔法
フィールド上に魔法使い族モンスターが二体以上存在している時に発動できる。手札にある魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

マリア「手札には・・・すでに・・・」

零蘭「〈レッドヘカテー〉があるはずアル」

明日香「それじゃ葉沙姉まずいんじゃ」

 顔を曇らせるクリア。

老婆「これでフィールドに三体のヘカテーが揃った。これで私の切札を呼ぼうじゃないか」

葉沙「クッ!!」

老婆「フィールドに〈レッドヘカテー〉〈イエローヘカテー〉〈バイオレットヘカテー〉が揃ったとき、この三体を生贄に捧げることで特殊召喚できるモンスターがいるんだよ」

 三体のヘカテー魔法陣を描いたあと不吉な呪文を唱え始めた。すると、魔法陣に渦ができ、ヘカテー達を飲み込んでいく。

クリア「まずい! こんなに早く揃えられるとは!!」

老婆「さあおいで。魔道士の力を集束させた究極のモンスター〈ゴーゴン〉よ」

 渦から現れたのは紺色のローブを纏った魔道士だった。エメラルドの魔法石が埋め込まれたロッド、細長い帽子を被り、その隙間から出ているのはなんと無数の蛇。三メートルはあろうその巨体は、もはや魔道士というよりは化物のほうが正しい。

零蘭「なんて大きさアルか!?」

マリア「大きさも・・・そうだけど・・・」

明日香「攻撃力3500って・・・あんなの止められないよ」

老婆「それじゃあ戦闘でも始めようかねぇ。〈ゴーゴン〉の攻撃だよ、毒蛇の呪術!!」

 〈ゴーゴン〉の前に魔法陣が出来たかと思うと、今度はそこから無数の蛇の塊が

 這い出てきた。蛇達は天使という餌を見つけると、我先にと飛び掛る。

葉沙「攻撃はさせない! リバースカードオープン〈収縮〉! この効果で〈ゴーゴン〉攻撃力は半分になるわ」

収縮速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する。そのモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。

ゴーゴン
攻撃力 3500 → 1750

クリア「よし、これで」

零蘭「返り討ちアル」

老婆「そう簡単にはいかないよ。速攻魔法〈攻勢変動〉発動! この効果で〈ゴーゴン〉の攻撃力は2800になる」

攻勢変動速攻魔法
モンスターの攻撃力がダウンした時に発動できる。攻撃力がダウンしたモンスターの攻撃力をターン終了まで2800にする。

ゴーゴン
攻撃力 1750 → 2800

明日香「これじゃ葉沙姉が!!」

〈お助け天使レティエル〉ATK 1800 VS 〈ゴーゴン〉ATK 2800
敗北!

葉沙「うわああああああ!!」

葉沙 LP 4000 → 3000



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