お兄ちゃんとわたしの決闘(デュエル)にっき


○第六章○


 数日後、俺はいつものように病院に来ていた。

 ガチャ。

祐介「よっノア。元気だったか?」

 病室に入ると先約がいた。渚ちゃんだ。ベッドの横に置かれている丸イスに腰掛けてノアと話している。

渚「あっ祐介さん。こんにちは」

 イスから立ち上がりわざわざお辞儀する渚ちゃん。

ノア「何その親しげな呼び方。私が知らない間に何があったの?」

 なかなか鋭いな妹よ。

祐介「実はな先日言ったカードショップで渚ちゃんに逆ナンされたんだよ」

ノア「えーマジ?渚から?ホントはお兄ちゃんからじゃないの?」

渚「私、ぎゃくなんをしてたんですか!知りませんでした」

 と渚ちゃん。

 意味わかってないだろ。

 ノアは渚ちゃんに逆ナンについて説明すると渚ちゃんは納得したようだ。

 あれ?俺はこんな反応を見たかったわけじゃないぞ。

ノア「それでショップを出て渚を喫茶店に?」

渚「そうです。おごってもらっちゃいました」

ノア「お兄ちゃん?下心見え見えじゃない」

祐介「失敬だな君は。私は感謝の気持ちを表現しただけだ」

ノア「それ誰の真似?」

祐介「俺のオリジナルだ」

 俺たち兄妹の掛け合いを見ていた渚ちゃんは…。

渚「兄妹っていいですね。私は兄とかいないから羨ましいです」

ノア「そっかぁ。渚んとこは一人っ子だったもんね、でも渚が思うほどいいもんじゃないよ?」

祐介「そうそう。妹のわがままも聞いてやんないといけないし大変なんだよ」

ノア「私わがままとかいってないしー、ってかお兄ちゃんあれ持って来てくれた?」

 都合が悪くなったので話題を変えるノア。

 ちなみにあれというのはチラシの事だ。

祐介「ほらよ、よくわからんが新しそうなヤツを持ってきといたぞ」

ノア「あっこれよ」

 チラシの中から1枚の紙をだすノア。

 内容はどうやら大会の告知らしい。

 第二回ダイダロスカップ開催のお知らせと書いてある。

 開催日は二週間後だ。

ノア「この大会に参加するとサイン入りカードがゲットできるのよね」

 この後、熱弁を振るう妹。

 長いので要約すると、妹はどうやらこのサインを書いてる人のファンらしい。

 ここ数年の間にプロデュエリストになった女性プレイヤーなんだとか。

 ダイダロスはその人の切り札らしい。

ノア「…てわけで渚も一緒に出るわよね?」

 妹よ最初から否と言わせない聞き方だな。

渚「うん。いいよ」

 あっさり返事をする渚ちゃん。

渚「でもノアちゃん病院から出かけていいの?」

ノア「近頃、体調もいいし今度先生にお願いてみるつもり」

渚「わかったよ。それと祐介さんは出ますか?」

 突然話題を振ってきた渚ちゃん。

 何かあった時の為にノアに付き添う必要があるかもな。

祐介「そうだな、せっかくだから俺も出るよ」

ノア「よしっ!そうと決まれば大会に備えて練習だよ」


○第七章○


 特訓という名目で対戦してみた結果。

 俺VS妹は妹が勝ち。

 俺VS渚ちゃんは渚ちゃんが勝ち。

 といった結果になった。

 俺弱ぇーとか言わないでくれ。この結果は仕方がないと思うぜ。

 そんでもって妹VS渚ちゃんが今始まろうとしていた。

 先攻は妹のようだ

ノア&渚「デュエル!」

1ターン目

ノア「私のターン、ドロー、スタンバイ、メインフェイズ、豊穣のアルテミスを攻撃表示で召喚するね」」

ノア「さらにリバースカードを1枚セットしてターン終了だよ」」

2ターン目

渚「ターンもらいますね。ドロー!」

 渚ちゃんは少し考え始めた。ノアのデッキは妨害罠満載のデッキだから迷うはずだ。

渚「ノアちゃんの場にモンスターがいるので、サイバー・ドラゴンを特殊召喚します」

サイバー・ドラゴン機械族5
ATK 2100 / DEF 1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

 ノアは反応なし。

渚「さらに手札からタイムカプセルを発動します」

タイムカプセル通常魔法
自分のデッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊し、そのカードを手札に加える。

ノア「オッケーだよ」

 渚ちゃんはデッキからカード1枚を裏側にして除外した。

 先ほど対戦した時に渚ちゃんが語っていたが、アニメでカイザー亮もよくタイムカプセルを使っていたそうな。

 相手に見せずに非公開で除外する様がカッコいいらしい。

 今度、俺も使おうかな。

 魔法にも反応無し、もしかしたらあれはハッタリじゃないのか?

 俺がそんな事を考えていると――

渚「バトルフェイズに入っちゃいます。サイバー・ドラゴンでアルテミスに攻撃です!エヴォリューション・バーストッ!」

 すかさずノアは反応を見せた。

ノア「甘いわよ渚!リバースカード!攻撃の無力化を発動!攻撃をキャンセルしてバトルフェイズを終了するわ」

攻撃の無力化カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

ノア「カウンター罠の発動が成功したからアルテミスの効果で1枚ドローするね」

豊穣のアルテミス天使族4
ATK 1600 / DEF 1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

渚「ブラフではなくて無力化でしたか!」

 ちなみにブラフとは、相手ターンに発動できないカードを牽制の為だけにセットすることらしい。

 相手の場に得体が知れないカードが1枚あると相手はいろいろな可能性を考えて迷うわけだ。

渚「メインフェイズ2にリバースカードを1枚セットしてターン終了です」

3ターン目

ノア「私のターンドロー、スタンバイ、メインフェイズ!リバースカードを3枚セット!ターン終了だよ」

 ノアは3枚も伏せて来た。

 ついに本領発揮といったところだろうか。

 カウンター罠を発動するたびに、1枚ドローできる豊穣のアルテミスというカードも場に留まっており万全といった状態なんだろう。

4ターン目

渚「ターンもらいますね。ドロー!」

ノア「リバーストラップを使うわよ!強烈なはたき落とし!今引いたカードをそのまま捨ててね!」

強烈なはたき落としカウンター罠
相手がデッキからカードを手札に加えた時に発動する事ができる。相手は手札に加えたカード1枚をそのまま墓地に捨てる。

渚「わかりました」

 泣く泣く(あくまで俺主観だ)今引いたカードを捨てる渚ちゃん。

手札1枚(手札) → 墓地

ノア「アルテミスの効果で1枚ドローするね」

渚「手札からエヴォリューション・バーストを発動します、対象はアルテミスです」

エヴォリューション・バ−スト通常魔法
自分フィールド上に「サイバー・ドラゴン」が表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。相手フィールド上のカード1枚を破壊する。このカードを発動するターン「サイバー・ドラゴン」は攻撃する事ができない。

 渚ちゃんはアルテミスを破壊すれば状況は変わると読んだのだろう。しかしノアが伏せたカードが気になるところだ。

ノア「アルテミスを破壊されたら困るわ!リバーストラップ魔宮の賄賂を使うよ!」

魔宮の賄賂カウンター罠
相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。相手はデッキからカードを1枚ドローする。

ノア「そして、アルテミスの効果で1枚引いた後、手札から冥王竜ヴァンダルギオンを特殊召喚するね。魔法を無効にしたから1500のダメージを受けてね!」

冥王竜ヴァンダルギオンドラゴン族8
ATK 2800 / DEF 2500
相手がコントロールするカードの発動をカウンター罠で無効にした場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した時、無効にしたカードの種類により以下の効果を発動する。
●魔法:相手ライフに1500ポイントダメージを与える。
●罠:相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
●効果モンスター:自分の墓地からモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。

渚 LP 4000 → 2500

 ノアの奴、今引いたカードをそのまま出しやがったぞ。

渚「手札からサイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚します」

渚「サイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果を使った後、さらに融合を発動します!」

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ機械族4
ATK 1500 / DEF 1000
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を相手に見せる事で、このカードのカード名はエンドフェイズ時まで「サイバー・ドラゴン」として扱う。また、このカードが墓地に存在する場合、このカードのカード名は「サイバー・ドラゴン」として扱う。

融合通常魔法
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 渚ちゃんは手札の魔法カードである融合を見せつつそのまま発動し、サイバー・ツイン・ドラゴンを特殊召喚した。

サイバー・ツイン・ドラゴン機械族8
ATK 2800 / DEF 2100
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 ノアはどれにもチェーンせず様子を見ている。

渚「バトルフェイズに入っちゃいますね。サイバー・ツイン・ドラゴンでアルテミスを攻撃です。エヴォリューションツインバーストッ!」

 ノアはリバースカードを発動する事なくアルテミスは破壊された。

〈サイバー・ツイン・ドラゴン〉ATK 2800 VS 〈アルテミス〉ATK 1600
撃破!

ノア LP 4000 → 2800

渚「サイバー・ツイン・ドラゴンでさらに攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト二回めッ!」

 同じ攻撃力であるヴァンダルギオンにアタックか…妥当なところだろうか

渚「続けてダメージステップに手札から収縮を発動します。ヴァンダルギオンの攻撃力を半分にします」

収縮速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。

ノア「うそッ」

〈サイバー・ツイン・ドラゴン〉ATK 2800 VS 〈冥王竜ヴァンダルギオン〉ATK 1400
撃破!

ノア LP 2800 → 1400

 ノアの表情に焦りの色が見えた。ノアのデッキは行動に対しカウンターするデッキであり既に場に出てしまったモンスターカードを除去するのは難しい。

 ひょっとしたらこのまま勝敗が決まるかもしれないな。

渚「ターン終了です」

5ターン目

ノア「私のターン!ドロー」

 引いた瞬間。ノアの表情が変わった。

ノア「スタンバイ、メインフェイズ、今一番引きたいカードが引けたよ、墓地からアルテミスとヴァンダルギオンをゲームから除外−−−光と闇交わりし時、世界は混沌の渦に包まれる…カオス・ソーサラーを特殊召喚!」

カオス・ソーサラー魔法使い族6
ATK 2300 / DEF 2000
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

渚「カオス・ソーサラー!?ノアちゃんのデッキは天使メインだから予想外だったよ」

ノア「前は天使パーミッションだったけど、つい最近、闇属性モンスターも何枚か入れてカオスパーミッションにしたんだよ」

渚「それいいかもね」

 ノアの厨二病全開のセリフはあえてスルーして別のところをついてくる渚ちゃんのスルースキルはなかなかのものだ。

ノア「というわけで、サイバー・ツイン・ドラゴンを効果で除外よ」

渚「ノアちゃんひどーい」

ノア「除外効果を使ったターンカオス・ソーサラーは攻撃できないから、リバースカード1枚を伏せてターン終了よ」

6ターン目

渚「ターンもらいますね。ドロー!」

渚「スタンバイフェイズにタイムカプセルの効果を発動します。除外していたカードを手札に!」

 渚ちゃんは2ターン前に非公開で除外したカードを手札に加えた。

渚「行きますね。手札からパワー・ボンドを発動します」

パワー・ボンド通常魔法
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地に送り、機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。このカードによって特殊召喚したモンスターは、元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

渚「だけど、私の手札に融合素材はありません。なのでこのカードを発動します!速攻魔法!サイバネティック・フュージョン・サポート!」

渚 LP 2500 → 1250

サイバネティック・フュージョン・サポート速攻魔法
ライフ半分払う。機械族モンスターを融合召喚するとき、自分の墓地から決められた融合素材魔物を除外することで、融合が可能になる。

渚「墓地からサイバー・ドラゴン、サイバー・ドラゴン・ツヴァイ、サイバー・ドラゴン・ツヴァイの3枚をゲームから除外して――」

 はたき落としで落とされていたカードはサイバー・ドラゴン・ツヴァイだったのか!

 あと、渚ちゃんはこのターンで勝負を着ける気なんだろうな・・・。

渚「パワーボンドの効果で融合したサイバー・エンド・ドラゴンの攻撃力は2倍の8000になります!」

サイバー・エンド・ドラゴン機械族10
ATK 4000 / DEF 2800
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 攻撃力8000のモンスターを展開した渚ちゃんはバトルフェイズに入った。

渚「サイバー・エンド・ドラゴンでカオス・ソーサラーに攻撃です!エターナルエヴォリューションバーストッ!」

ノア「残念だったわね。リバースカード!攻撃の無力化!」

攻撃の無力化カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

 バトルフェイズは強制終了されてメインフェイズ2になってしまった。

渚「ターンエンド時にパワーボンドの効果で4000ポイントのダメージを受けます」

渚 LP 1250 → 0

デュエル終了!!
勝者――ノア!!

渚「私の負けです。ありがとうございました」

祐介「おいノアよ!空気読めよ」

ノア「私はいつでも全力全開だっていってるでしょ」



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